ややこしさ溢るる実物のややこしさ

 ぼくはとても格闘技を見るのが好きで、そういう系の雑誌を読んだり、テレビで見たり、実際に見に行ったりする。このあいだも行ってきた。1時間半も電車に

乗って。普段は15分乗るのもきらいなくせに。

 で、実際に見に行ったりしたとき、何度それを経験してても「うわー雑誌で読んだりテレビで見たりするのと違うなあ」と、いつも思う。

 そこには「やっぱり間近で見る選手の体はすごい」とか「音が違う」とかいうこと以上に、そこにいる人びとから放射される空気の動きというか、空気を体感してれば見てるだけで伝わる膨大で細かな「情報」というか、とにかく、いるだけで疲れるくらい、実物にはややこしいものが充満している。

 それにひきかえ、雑誌で読んだりネットで見たりする情報は、何ていうか、ややこしくない。そこでは多くの人が一様に理解できるよう「出来合いの言葉」に置き換えられているし、テレビも同じように(一様に理解できるように)ある部分が映されてなかったり(映ってなかったり)する。そうやって多くの部分がはしょられて、無駄がはぶかれてて、だからややこしくない。

 でも、実物は違う。ややこしい。とてもややこしい。で、ほとんどの場合、その「ややこしさ」は伝えられることがない。けども、ときどき、その「ややこしさ」がそのまま盛り込まれているようなものに出会うことがある。

 ぼくは劇を作ったりするから、で、いまは次の公演に向けて「そろ」っと動きだしたりしているからなおのこと、そのことの秘密が知りたくていつもそのことを考える。どうして、ほとんどのものはあの実物の「ややこしさ」を伝えられないのに、たまにその場の空気のすべてが盛り込まれたようなものが出てくるのか。それは劇だったり映画だったり小説だったり絵だったり写真だったり子供の作文だったりするのだけど、で、そういうものを目にしたり耳にするとそのことが盛り込まれてなきゃ、ほんとうは「伝えた」もしくは「表現した」ことにならないのではないかとすら思える。「表現」とかいうものは、そのことだけが大事で、あとのことは、むしろ適当でもいいんじゃないか。形なんか「いびつ」でもいいから、その「ややこしさ」で溢れていさえすればいいのではないか。

 何だかしばらくここをほったらかしてました。なのにもかかわらず前のにさかのぼってコメントをいただいたり。気にはしていたのです。していたのですが、ときどきこういう風にほったらかしてしまうのです。次はなるべく間を空けずに、と思っています。

 思ってはいます。

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登録日:2008年 05月 16日 20:30:10

コメント

先日、ウチのほん近くで救急車が3台ほど止まりました。
裏の窓を開けて、じーっと様子をうかがいました。
女性の悲鳴。男性の悲壮な声。
しゃがみこんでドキドキしながら様子を音と空気の感じだけで
うかがっていました。

いやだ。
あんなややこしい感情は。
でも経験しとかなければいけないような気もした。

yuko @ 2008年 05月 17日 03:35:20

澄人さんがこれから作られる劇で表現されるであろう何らかの実物のややこしさや、
その場の空気にどっぷりと呑まれたくて。
そしてそれらは絶対にその場にいなければ体感できないものだから、何としても観に
行きたくて。
どうせなら大好きな北海道に観に行こうか(観劇のついでに観光)と画策を練って
いましたが、とある事情で断念せざるを得ず・・・残念極まりないのでございます。

なぜ関西では上演されないのでしょう。
どこでもいい、関西圏内だったら絶対観に行きますのに。
それこそ電車に1時間半でも2時間でも乗って観に行きますのに。
あぁ、でももし行ける条件が整えば北海道に行ってしまうかも知れません。
肝心のチケットは取れるのかしら・・・まだ希望は捨てませんわ♪

ゆるり @ 2008年 05月 17日 14:33:58

こんばんは
2年ほど前にEクラプトンのコンサートに行って来ました。
ずいぶん久しぶりだったし そりゃあもう楽しみにして。
相変わらず殺風景なステージの上でギターの神様は メタボチックなおじ様に変身していましたが、ギターの音も 神様の声も 変わらず感動させてくれました。CD聴くより やっぱり生で聴くと最高だ!と 言いたいとこですが それがそうでもなかったりしました。そこにいたから、だから見えなくて良かったはずのものを見てしまったという 後悔というより 淋しさでしょうか。帰り道 悲しくなってちょっとだけ泣いてやりました。
確かに クラプトンの音に 感動だけしておけば良かった。集中しておけば良かった。
スタッフの態度が最高に悪くても コーラスのお姉さんたちがやる気なくても 神様が長いこと観客にお尻を向けたまま演奏していても...
クラプトンのあの音さえ良ければ それで良かったはずなのに。
生だったから 近さの中で生まれた距離を感じずにはいられませんでした。

「ホンモノ」に触れることの 怖さ。
期待という 不確かな ものがそこにあるからなのでしょうか。
それなのに...
ややこしさに触れたい。人間は ややこしい(笑)

FICTIONの お芝居にも触れたいです
や�

つくね @ 2008年 05月 17日 21:27:44

クラプトン好きといえば…サザンの桑田さん♪
10年以上前のサザンのコンサート。新曲の優しいクリスマスナンバーで、ペンライトを持っていた人は半数程でしたが、ライターを持っていた人が一緒に手を伸ばして左右にゆっくりと揺らし、それに導かれるように段々と薄暗いホール全体がオレンジの暖かい光でいっぱいになった。歌い終わった桑田さんは、まさかのことに感動してくれて、観客も一緒にうるうるしてた。冷静に考えれば、火気は厳禁です(笑) 桑田さんの歌声と、みんなが応えたいと放った暖かい光で満ちた会場の空気。コンサートでは、後にも先にもあの日だけのこと。…あ~伝えるとはなんと難しい…。
ここ何ヶ月かのフォログのひっかかり。もしかして脚本と性質の違う小説に、山下さん体力消耗しているのかな~?な~んて^_^;
ややこしい空気感を伝えられるかは、きれいで豊富なボキャブラリー以上に、伝える側自身の経験や言葉、雰囲気や間。取り繕わない素直さなのかな…と、これまでの山下さんの文章やスタッフのワークショップブログを読んで思いました。より簡潔にしたいという思いが、かえって邪魔をする時もある。そしてそんな観点に〈めんどくさいひっかかり〉を持てるかどうか、なのだろうと思うし、そこを丁寧に見極め、紡いでいくのが、劇のようで劇とは思えないFICTIONの劇だと感じている。…なんかつらつら書いていると、自分の書いていることに酔ってきて本質を見失いそう(笑)
空気感を受け取る側にも様々なテンションがあって、閉じている時もある。受信状況は日々違う。それでも、劇場に足を運ぶ人は、堪能しようとアンテナを立てて待っている。FICTIONは、どうくるか想像がつかないので、実の所、幕開けはちょっと身構えてます(笑)そんな観客をどうか今年も道連れにしていって欲しいです。
以前から密かに目論んでいたのはフォログ全コメント参加(笑)たまに重複もするけれど…目標までの道のりは意外と未だ遠かった(笑) 好きな時に参加できる楽しい特別な場に感謝しています(*^_^*)

kiki @ 2008年 05月 18日 00:43:21

最近の、山下さんのフォログも皆さんのコメントも
読んでいて、楽しいです。
でも『タノシイ』って言葉って、薄いですよね。
「ふーん。そうなの、良かったね」
で、次に進みそうな・・・。
言葉の意味。言葉の裏側の意味。
しぐさの意味。しぐさの裏側の意味。
それを感じ取る各個人・・・・。
人に伝えるって、凄く想いが重いですね。。

できれば、汲み取れる感性が
わたしにも、欲しいです。。

kumi @ 2008年 05月 19日 10:53:19

 実際「人」や「物事」は、ややこしく不可解なもので、一様に理解したり、表現できたりすることなどないのだと思う。この世はわからないもので満ち満ちており、塵のような「人」が生きている間にわかるものはほとんどなく、だからこそ尽きせぬ魅力に溢れていて、意識的にも無意識にも、ややこしいものに巻き込まれて生きているような気がする。

 ややこしいものすべてをいとも簡単に「ほれ」と見せられたもののつまらなさと言ったらない。そんな人にも作品にも向き合いたいとは思わない。そこが山下さんが以前のブログで書かれていた「作品に対する誠意」なのかもしれない。
かと言ってややこしすぎるのも面倒だからややこしい。

 見る側から言えば、日常の些細な切り取られ方が見事だと「おおっ」と思うし、そこには「想像力」も欠かせないのだが、バカ丁寧さは人の想像力を退化させるとも思う。
作り手の「創造力」と見る側の「想像力」が溶け合って感動が生まれるのだろうし、そうそう感動するものにめったに出会えないと思っている。

 そういう意味でもFICTIONとの出会いは奇跡のようだった。

nana @ 2008年 05月 19日 13:15:19

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「FICTION 」主宰。映像、ラジオドラマのシナリオも手がけ、2005年には初監督作品「ON THE ROCK」を発表。
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