呪いに負けぬ心

 見た目は決して忙しそうではないのに、いくつかの催しをひかえて気持ちがばたばたしていて、それにかまけているから、へたをすると今月はここを書くのがこのまま2回で終わりそうで、それなのにもかかわらず毎日かなりの数の人びとがのぞ

いてくれていて、恐縮で身が縮む思いではございますが、みなさまお元気でしたか。何だか川崎あたりはとても暑いです。

 さて。

 先日、本屋に入ったら、目のつくところに大々的に『夢を叶える』的なタイトルのついた手帳が山ほど並べられていた。静かに流行っているらしい。

 しかし。のんびりしたくて本屋をのぞいたのに、そこでああいう言葉が目に飛び込んでくると、何だか心の何かがとてもざわざわする。その日の調子によっては、ざわざわを誘発する波動をもっと敏感に感じて、ぐったりしたりする。

 で、悔しいから、何がそうさせるのか考えてみた。ばたばたしてても、そういう時間はある。

 あれらの類いには「夢は叶えるべきもの」という考え方が、まず大前提としてある。「夢は叶えるべきもの」。なるほど。ぼんやり聞いていると危うく聞き入れてしまいそうな「正論」である。しかし、その「正論」がくせものなのである。

 なぜか。

 あれらは、もっともらしい顔で「正論」を吐きながら「そのままでは不幸になるぞ」と脅しているのと同じだからなのである。「夢を叶えよう」は「夢を叶えなきゃあんた不幸になりますよ」という意味である。それは「ていうか、あんたは今もうすでに、立派な不幸予備軍なのよ」という意味であり「そんなぼんやりしてていいの?!そのまま不幸になりたいの?!貧乏農場で働きたいの?!」という意味である。ああこわい。

 そう。これは「呪い」なのである。やつらは荒れ地の魔女なのである。そりゃあ、ざわざわするし、調子が悪けりゃぐったりして当たり前なのである。

 そう思いながらテレビや雑誌を見てると、やつらも同じである。ひっきりなしに「これ食えー」「これ飲めー」「ここ行けー」「あそこ行けー」「これ買えー」「痩せろー」「太れー」「ゆっくりしろー」と連呼している。そして「じゃなきゃあなたは不幸になりますよー」とぼくらに「呪い」をかけている。

 どうして現状を「さくっ」と大らかに肯定することに引っかかりを感じてしまうのか。「今のままでいいんでーす」とかいっている人はバカか、何かをあきらめた人か、胡散臭い世捨て人にしか見えないのは何故なのか。どうしてこんなにも「しあわせ」になりたいと思うのか。どうしてこんなにも「不幸」がこわいのか。

 すべては「呪い」なのである。まったくおそろしい仕組みである。

 今年度のぼくのテーマは「呪いに負けぬ強いこころを獲得する」に決めた。他に何がある。新作を成功させる?そんなことはどうでもいい。だいたい「成功させなきゃならない」というのも、もしかしたら「呪い」なのかもしれないのだから。ふふ。

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登録日:2008年 05月 28日 13:40:20

コメント

こんにちは
お忙しい中 更新ありがとうございます。
フォログ拝見し 大きく頷いております。
先日 とても世話好きな方に一冊の本をプレゼントしていただきました。タイトルは
「自分のまわりにいいことがいっぱい起こる本」.........。
ええ... パラッともめくらず、本棚に放置プレイしています。
送り主から「いい本だから読んでね、感想待ってます」とメールをいただき、「ご丁寧に、あのような本を『いちいち』ありがとうございました」と 返信してしまいました。 いちいち ではなく この場合 わざわざ なのでしょうね。 まあ 送っちゃいましたから仕方ないです。
あ と思ったけどしっかり 送信ボタン押してましたし(笑)
無意識って こわい。
だけど いちいち なんです。なぜあのような本をくれたのか 山下さんの記事を読み、合点がいきました。
なるほどね 彼女には 私が「自分のまわりに悪いことがいっぱいおきてる」 ふうに見えたのでしょうね。だからあんな本...いえ あのような本を下さったのでしょう。
サブタイトルに
「幸運は偶然ではありません!」と書いてありました。 この本読んだら 幸運になって 読まなきゃ 不幸になるのかい!と 突っ込みました。
最近は このての本が 多いですね

つくね @ 2008年 05月 29日 11:46:27

わーいわーいおひさー♪
 
 でも全然大丈夫。本家、裏千家制作子さんのワークショップレポートを隅から隅までじっくり読ませていただきましたし、また更新される日記から、山下さんがどっぷり「劇」な生活を送られているご様子、はたまた様々な試みの思索かたがたパチンコなどをおやりになってる多少余裕な日々、これらが次のFICTIONにつながると思えば(つながらなくてもいいんですけど)、「私待~つわ~♪」(古いですねー)でござます。

 黙ってても泣いていても季節は巡るわけでありまして、花粉も低気圧でぶっ飛ばされ、ふふ、復活っ!!
少し上向き加減にになった私をさらに元気づけてくれる今回のテーマ、とても面白く全くもって同感です。

 そう、あれは親切そうに言い寄る「悪魔のささやき」ですね。
これでもか、これでもかと煽られ、踊らされ、すり減らされていく神経、時間、お金・・・常に「こうあらねばならぬ」という呪縛にからめとられてしまうのです。

 愛煙家の夫は「タバコを止めたらストレスで死んでしまう」という。分煙どころか、路上も市内も全域禁煙になりつつある。
排気ガスをぶんぶん撒き散らす車も、ところかまわず大声で喋り捲る「オバハン」も充分大気汚染なのに放し飼いで、ですよ。
「メタボ」も最近やたら厳しく、太ることは許されなくなりつつある。ストレスや病気や遺伝で太っている人もいるだろうに、このままじゃ、ストレスや遺伝で「ハゲ」ても許されなくなる日がくるかもしれません・・・

 みんな健康、健康、幸せ、幸せと言いながら、胸に「夢を叶える手帳」をしのばせてニコニコ歩いているのである。あー気持ち悪い。これらをもっていない人はみーんな不幸ですよといい振りこいて、その影で「なーんか儲かっちゃって幸せ」なんて奴の手にのってたまるもんですか!
ですよね。

nana @ 2008年 05月 29日 12:32:42

みんな、パワフルだな~^_^; すごい。

…何かに順位をつける…
勝つ人は、負ける人がいてこそ勝てる。自分が負けたくなくても、結局誰かが負けなきゃ勝負はつかない。だったら、自分が負けても全然いいか、と思えてくる。競うんじゃなくて、みんなが個々に頑張って、もしかしたらその先に何か嬉しい楽しいことがあるかも…っていうのは難しいことなのか。他からの刺激は勿論受けたいけれど、競うのは苦手。
…人に付き合うノリの良さ…
足並みを揃えることに、無理してしまう自分がイヤで、イヤと思ってしまうこと自体も更にイヤで…とにかく何か気持ちが振り回されて、どこか無理をしている居心地の悪さがツライ。
タテもヨコも居心地が悪い。きっと私の心が弱いから。
自分を見失わないでいようとすることは、とても疲れるものですね。
負けぬ心…あ~うっとり。

『「はえ」と云ふ名の店』のチラシの表の文を読んだ時、私は山下さん自身にとても親近感を覚え、許された気がした。(ご覧になりたい方は、FICTION WEBの活動の歴史で見られます)
それ以前以上に、あれから、とても、とても、貴方のもののとらえ方が、気になって、気になって。だから発信されるもの全てに興味がわいて。その心地良さといったら、他では例えようもなく気持ちがいい。
私が受ける様々な呪いは、山下さんやFICTIONが解いてくれる(*^_^*)
そんな私が発する、大!大!大好き!直球ど真ん中の呪い。強い心で心地良い励みに変えて、どうか、どうか、振り切って。
それでも私は不幸にはならない。だって、きっとそれすらも心地がいい予感がするから。ファンの呪いは強力よぉ~(笑)
山下さんの中に積み重なる様々なひっかかり、忘れられる事無く、自分に置き換えて、みんなのひっかかりをさりげなく解いてくれる。優しいな~と勝手に読み取る私。

kiki @ 2008年 05月 29日 22:43:35

澄人さまのフォログを拝読し、はたと気付きました。
私、すっかりこの呪いにはまってしまっておりましたわ。

この手のおせっかいな本を読むまでもなく『今のままでは駄目だ』 『このままぐうたら
年ばかり重ねて、10年後20年後はどうする気だ』 『一生一人で寂しく生きていくのか』と
かなり焦り、時には落ちこんでおりました。
まるで今の私が不幸のどん底にいるみたいに。(いや、そうかも知れんけど)

あぁ、これって「人間は夢を持ち、その夢を叶えてこそ幸せなのであり、特に大きな夢も
持たず、夢を叶えるべく邁進している訳でもない、ただ毎日を生きるのに精一杯なだけの私は
不幸道まっしぐらだ~~」という呪いだった訳ですね!
何だかすぅーっと肩の荷が下りていくような気が致します。
「今の私が不幸?あぁそうだよ、それの何が悪いねん?」的な強い心を持って、ある種の
開き直りと共に生きていかなくては ♪♪

・・・でも大阪から、澄人さまの舞台をいつか観にいくぞーーーっていう夢を叶える努力
(仕事に励む。金貯める。東京は苦手だから北海道に行く)は続けていきたい。
これは呪いなんかじゃないですよね!だってこの楽しみがないと生きていけませんもの。
うふっ(*u_u)

ゆるり @ 2008年 05月 30日 01:31:41

「呪いにかかるな」というのは山下氏の呪い!?

ロンロン @ 2008年 05月 30日 08:16:23

もー。やめてください、「呪い」とかいう言葉。
こわいから。
それからいちいちそのような類の本に心ざわざわしないで下さい。
「山下澄人」であって下さい。

yuko @ 2008年 05月 30日 10:15:09

「呪い」は背筋がぞっとするので、

あたしゃ、
山下さんの、魔法にかかってFICTIONの劇を
楽しみにしている。。乙女ということで・・・。

kumi @ 2008年 05月 30日 10:59:03

>「夢を叶えよう」は「夢を叶えなきゃあんた不幸になりますよ」という意味である。

「やればればできる」と、ほんの一寸似てますね。。


「やればできるのかもしれない」「やらなければできないのかもしれない」の方が、素直に受け入れられる

ような気がします♪

超短文 @ 2008年 05月 31日 02:48:39

数年前、幸せになるための、みたいな手帳を買った私は確かに不幸を感じておりました。
いつ掛けられたのか分からぬ呪いから抜け出ようと必死でした。
高い買い物をしたり(投資?)宝くじも初めて買ったかな、習い事を始めてみたり...でもどれも私を幸せにはしてくれませんでした。
幸せ探しを止めた今の方が心が穏やかな分不幸ではなくなりました。

呪いは怖いです。
感情が長続きしない私ですら長いこと囚われてました。
強くなりたいと思います。

ヨコ @ 2008年 06月 22日 00:44:08

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プロフィール
山下澄人
FICTION WEB
FICTION構成員の日々
「FICTION 」主宰。映像、ラジオドラマのシナリオも手がけ、2005年には初監督作品「ON THE ROCK」を発表。

E-mail:yamashita@fiction.gr.jp
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