Sさん
つい先日、ある「人」について考えていて、急に、「とか何とか、その人についていろいろと考えているけど、結局あの人はいったいどういう人?」と考えはじめ
たらまとまらなくなって、止まらなくなった。
その「人」は、少し太っていて、背はどちらかというと低くて(けどもこれは180あるぼくからの目線で)、頭は少し不思議な禿げ方をしていて(掛布風の)、その頭を短く刈っていて、小さな目にメガネをかけていて、そのメガネが盛り上がった頬肉と低い鼻柱のせいで浮き上がっているように見えて、なのにメガネがすぐずり落ちるらしくていつも手でメガネの位置を修正してて、いつも薄着で、着ているTシャツはだいたい劇団Tシャツで、いつも大きな荷物を持っていて、基本的には敬語で話すのだけど、そうじゃないときもあって、その差をどこでつけているのかがいまいちつかめなくて、面倒くさい病気を抱えていて、そのうえ面倒くさい用事をすぐ人に頼まれて、だけどそれを「いや」とはいえなくて、だからいつも忙しそうにしてて、だからなかなか本業が見えなくて、で、何回聞いても見えない本業で、ぼくがどこに行くのにもいつもついて来て、そのわりにはほとんどしゃべらなくて、きれいな女の子が大好きで、だけど「女好き」というのでは決してなくて、ときどき、ていうか頻繁に腹の立つことを口にして、でもそれで相手が腹を立てていることには気づいてなくて、回りの人間のほとんどは「悪い人ではない」と思っているのは確かなのだけど、その「人」の何を指してみんなそう思っているのかは誰もわかってなくて、等々……。とにかく果てしがない。(「これ。わたしのことじゃないですか」と思ったSさん。ふふふ。そう。)
でこの、果てしのなさをどうまとめたら「どんな人」といえるのだろうか。
それなのにもかかわらず、劇や映画やドラマや小説に出てくるほとんどの「人」は端的に説明出来るように作られている。どれほど「どういう人?」と、その作品の中で語られる「人」であっても、それはあくまでも「どういう人?といわれる人」として、こちらにはきちんとつかめるように作られている。
で、気がつくと知らない間に、「人」をそういう風に見るくせというか、そういう見方以外出来なくなっていて、だから複雑なのは「自分」か、もしくは「自分」がよく知っている「人」だけで、それ以外の「人ら」をとても簡略化してしまう。
とか書いていて、前にここに書いた「絵」の話を思い出した。
それは窓から見える「木」を見ていて思いついたことで、目の前にある「木」を見れば見るほど、それを「絵」にすることの困難さというか、果てしなさというのがあって、だからたぶん「絵」にされているほとんどの「木」は「端的に描かれた木の絵の絵」で、でいま、ぼくが考えている「人について」のことも、それと同じことなのだと思う。
とか考え出すと、それまで何となくしっかりしていると思い込んでいた、ぼくのイメージするいろんなものが崩れ出すというか、ぐにゃぐにゃしていくというか、になって、そのうえぼくは劇を作ったりする者でもあるので、そんなことになって、この先どうやって劇を作ればいいのか、と思う。
ていうか、どうすんの。
いま、住んでいるマンションの外装工事が行われていて、ときどき出入りしている職人に会うのだけど、その職人らは会うとかならず「こんにちはー」といってくるので、こちらも「こんにちはー」と返す。だけどたぶん、職人らは親方に「挨拶しとけよ」といわれて、「めんどくさいなあ」と思いつつしているのに違いない。それでもだけど、されて気分の悪いものでもないから、こちらも返すし、返してしばらくは、その職人らが山田洋次の映画に出てくるような「気のいい肉体労働者たち」に思えてしまったりしてあれするけど、それでもやっぱり「気のいい肉体労働者たち」なんていう括りで他人に語り終えられてしまうような人生を送っている「人」なんて、この世界のどこにもいない。
秋ですねえ。北海道は冬ですか?沖縄はまだ夏ですか?
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登録日:2008年 10月 04日 16:37:53
コメント
山下さん
いつもブログを読んでます。すごく楽しいです。
最近演劇から離れているせいか、少しイライラ気味です。
早くまた山下さんのワークショップを受けたいです。
先日のお芝居、すごく面白かったです。またみたいです。
さっき母にトイレのドアを閉め忘れただけでめっちゃ怒られました。
それで、初めてコメントをさせていただきました☆
またきます
じぇのーる @ 2008年 10月 05日 02:37:00
ていうか、どうすんの。
と書いてる山下さんの今後が楽しみなのは私だけではないはず。。。
ていうか、ここのコラムは素晴らしい!!!
まえだ @ 2008年 10月 05日 03:32:27
2つ前の強気はどこへいったのか…(笑)
このように人の気持ちは、何かに触れるたびに、移ろっていくのですね。
今のお仕事が劇とは違う表現だったりするからなのでしょうか?人が演じれば、おのずとそのシルエットはその役者が醸し出すもので多少色づけされる。それが活字であるならば、無から手作りしなくては人は浮かび上がってこない。
人というのは、大人も子供も、その場その場で自然と自分を演出するものだと思う。どういうスタンスでいたいのか、どうその中の人達と接していきたいのか、どう見られたいのか。家や学校、会社、趣味の集まり、好きな人の前などで、全て自分が同じテンションで、言葉使いで、気遣いが同じなんてことはない…と思う。だから自分も、知っている人の全てを知っているようで、ある側面しか見ていないし、見せていない。そしてそれは、まわりからどう受け取られるかで、更に変化することとなるのでしょうけれど。
となると、作品を創る上で、生い立ち設定などは人格を安定させ、思考を引き出すために必要なのだろうけれど、それらを全て語ることは皆無で、更に物語の中での出会いに移ろっていくわけだから…だからホントに果てしない。…というか、人を全て語れたら、いき違いもなく、こんなにややこしい世の中にはならない。
さっきTVから「習慣が人を作る」と流れてきた。それは疾病のことではあるのだけれど、人格もそうなのではないかとふと聞き入ってしまった。『しんせかい』のコタニが位牌に必ず手を合わせていたように?
で、Sさん、「山下さんのことが大好きぃな人」でしょ(笑)。それが、本来の人物(そこが知りたいのでしょうけれど)を空回り?させている(笑)それは、まわりのみんなも山下さんのことが好きだから、山下さんのことに一所懸命なSさんを理解できなくはないということなのかな~。こういう時、一番見えていないのは、意外と気持ちを向けられている本人だけかも…わーい、人気者(笑) 外野はなんとでも言える(笑)
ちなみに、私の大好きな自称おっちょこちょいの山…いえ、Yさんは、とても自分のすべきコトに真剣に向き合える人で、そういう人にはなかなか出会えなくて、その職人的対峙の姿勢にワクワクさせられる。でも、それは一面であって、全てではない。でも、どんなに悪人だろうと、その一面さえ揺るがなければ、私はそれだけで見続けられる(*^_^*)ふふっ。
温かいものを食べて体調を整えて、お仕事がんばって下さい☆
kiki @ 2008年 10月 06日 00:15:49
ふふっ、「あの人」のことねっていう共通項はどこにあるのでしょう。山下さんの観察力、表現力がすぐれているせいもありますが、実際わたしは「あの人」のことを何にも知らないのです。
人の外見。顔立ち、髪型、体型、服装などは否が応でも目にとびこんでくる。さらに話し方や物事の対処の仕方などで、あるイメージが刷り込まれていって自分の中でいつしか「いい人」「よさそうな人」「そうでもない人」などと選り分けてしまうのは、とても失礼なこととは思う。 しかしこれは動物的本能みたいなもので、自分に危害が及ぶかどうか一瞬のうちに脳が情報処理してしまうせいかもしれない。
「木の話」と、そのときの自分のコメントを思い出した。簡略化というのは、その細部を見ていない、見えていないことで、人を見る時に刷り込まれたイメージだけで簡単にスルーしてしまってはまるで「子供の絵」ではないかと、あらためて考えさせられた。今も考えていて・・・・・・・どこまで考えればいいのっ?ていうか山下さん同様、で、どうすんの?って(笑)
その問いは「芸術」にかかわる多くの人が、時には死に至るまでもち続けてきたのだと思う。そのくらい表現とは多様で困難なものだと思うし、そういう意味でもあらゆる芸術に敬意をもって接したいと思う。
山下さんおお薦めの保坂和志著「小説、世界の奏でる音楽」や「小説の自由」では、小説に限らず芸術の表現の可能性が丁寧に述べられていてとても面白く、読み始めると止まらない。
思考が止まらない。
皆様も是非。
nana @ 2008年 10月 06日 16:29:27
結構北海道冬気味す。
富良野はまだだけど帯広は初霜初氷だゆうてました。
でもまあ今夜は幾分あたたかで9度です9度。
す @ 2008年 10月 14日 01:37:43
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- 「FICTION 」主宰。映像、ラジオドラマのシナリオも手がけ、2005年には初監督作品「ON THE ROCK」を発表。
E-mail:yamashita@fiction.gr.jp
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