不死論(仮)
【11月9日 AFP】コロンビア・カリ(Cali)の動物園で、2週間前に生まれたライオンの赤ちゃん。(c)AFP
にゃんこじゃないよ、百獣の王だよ。ちょーかわいー。
さて。
うちの家には、前にいて、もう何年も前に死んだ猫がひっかいて作った傷がそこかしこにある。うちのアパートは、実はペット禁止で、そこを内緒に飼っていて、だからほんとうは絶対に「猫がつけた傷」なんかつけてはいけないから、その死ん
だ猫が傷をつけたときも「こらっ」と思っていて、で、死んでずいぶん経つのに、今でもその傷を見るたびに「こらっ」と思っていて、その「こらっ」は奴が死んだからといってゆるむものではなくて、今でも「こらっ」と怒っているぼくがいて、そこでの怒りは、何ていうか、死なんか飛び越えていて、だから、あいつは死んだけど、まだ死んでない。
もうひとつ。
うちの仏壇の置かれている台の中には、死んだ両親が使っていたメガネや何やらがそのまま放置されていて、そこには老眼鏡もあって、で、最近、小さな字が読み難くなってきたから、試しに老眼鏡をかけて読んでみてやろうと思って(かけたらとてもよく見えたから少し凹んだのだけど、そのことはあれとして)、そこから老眼鏡を取り出した際、持ち主はとっくに死んでいないのに、とても「人のものを借りている感」があって、で、その感の強度は、死んでいるとか生きているとか関係がなくて、だからそのときのぼくの気分も、死なんか飛び越えていて、そういう意味では、ぼくの親は死んだけど、まだ死んでない。
そういうことをいうと、「死んだ人が生きている人の中で生きているのねー」とかいわれてしまうのだろうけど、そのとき感じる「こらっ」や「借りている感」は、中にある思い出に対してと、いうよりも、もっと生々しくちゃんと外にいるものに対する感じで、だからやっぱり、死んでるけど、生きてる、というのがいちばんしっくりするから、そうすることにしている。あ、もちろんそれは「ゆーれいになって、どーとかこーとか」とかいうものではない。
だから誰かが死んで、哀しみの追悼番組とか、生きてる人が死んだ人についてしみじみ語ったりしているのを見たり読んだりしていると、多くの場合が、もう済んだこととしての思い出話とかでしかないのが、何だか、とても、結局は「人は死んだら終わり」といっているように思えて、その不細工な「負けっぷり」にいらいらする。
ていうか、人も動物も、別に死んでも終わらない、と思う。思うし、あんな、いずれにせよ遅かれ早かれ誰にでもくる、珍しくも何ともない「死」なんていうもので、全部が終わってたまるか、と思う。だから死にかけがわかったようなことをいっているのを聞いていると「死ぬぐらいでいばるな」と思う。
読んでいる本について少し。
いま、ホルヘ・ルイス・ボルヘスという人の書いた『プロディーの報告書』(白水uブックス)という、荒くれ者が次から次にたくさん出てくる短編の小説を読んでいて、それがとても面白いので、面白いと思っている間に、面白い、と書いておく。ぼくはこの小説に出てくる荒くれ者たちをかつてたくさん知っていた。ちなみにこの小説は保坂和志さんにもらった。ちなみにそれは野茂にグローブをもらったようなもの。
だからといって書くわけじゃないけど、何度もくどいように勝手に宣伝している、で、何度書いたっていいと思える、保坂和志著『小説、世界の奏でる音楽』は、とにかくすごい。とくに最終章は、ことあるごとに何度も読み返している。
まったく寒いですな。あんなに暑かったのに、うそみたいですな。
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登録日:2008年 11月 12日 18:39:56
コメント
それは保坂の「残響」じゃないけど、でも残響だね(笑)。
音源が発音を停止した後も音が響いて聞こえる状態。
停止が「死」でも音は実際に生きている。
がぶん@@ @ 2008年 11月 12日 22:25:43
はい。聞こえてます。それは「心の中で」とかじゃなく。ていうか、がぶんさん、保坂さんの小説、ちゃんと読んでんじゃーん。
山下 @ 2008年 11月 12日 23:32:45
ごめん、読んでない(笑)。。タイトルだけ知ってる。でもそんな内容でしょ、どーせ(笑)
がぶん@@ @ 2008年 11月 12日 23:59:30
わはははは
山下 @ 2008年 11月 13日 00:03:41
山下さんの記事を拝読しながら こないだテレビで桃井かおり姐さんが 『優作が死んだとき、あいつ伝説になりやがるなと思ったのねぇぇ、だからあたしぃ ぜぇーったい伝説になんかなんないもんねぇと思ったわけょ〜』(一応ものまねで) と言っていたのを思いだしました。山下さんの話しと繋がりがなかったらすみません。
でも なんか どっか繋げて下さい...あれ?
保坂和志さんの『小説の誕生』を読みはじめました。 えぇとまだ 目次と前書きだけですが^^; 私にわかるかしら...と。目次だけでびびっています(苦笑)
つくね @ 2008年 11月 14日 20:19:40
ぼくは続けて三回読みましたが、それでもわからないとこはきちんとあるから、大丈夫です。て、おかしな励まし方ですが。
山下 @ 2008年 11月 15日 03:27:22
お励ましありがとうございます。
この本を三回続けて読まれたとは...
しかも そのうえ 山下さんさえもが きちんとわからなかった ところがあると...
ふぅ〜 (深い溜め息)読み進めては ある一小節で止まり、フームと考え、進まず。また読み進め また フームと考えますので ページが進まないですがどうしましょう。
友人は 信用ある筋(意味がわかりませんが) から保坂さんの本を薦められ いま 読み始めているらしいです 既に挫折しそうだと言っています(笑)
『人間は幸せになるために努力する...』の クダリでは 常に幸せ探しばかりして結局全くそう感じられない私には 『ええ加減にせい』と後頭部に突っ込みを入れられた感じで久しぶりに 腑に落ちる と 言う感覚です。
さて 今日もフーム フーム と唸りながら 読み進めますね
つくね @ 2008年 11月 16日 10:28:41
例えば…
こうして公演のない日々が続いて、直接会っていなくても、山下さんは生きていると何の根拠もなしに思う。フォログの存在は置いておいて。訃報が無ければ、年齢的にも生きているものと勝手に思う。でも、実はそうじゃなかった…とわかった途端、きっとすぐには実感できなくても、後々DVDやチラシや活字の諸々に触れた時、泣くんだろうな~。それは、もう劇という生の感性に出会えない悲しみか、心のより所の喪失感か。普段会うことも無いのに、たった一つの連絡で気持ちが変わるのだと経験から想像する。
ただ、その気持ちは、身近に接していた距離が近いほど深く、まだまだ何かしら刺激を受けたいと思っていたほど、喪失感は大きい。それは、それまでのことを無に変えることとは違う次元で。
故人を振り返ることは、より一層、その先が無いことの喪失感を深めるような気もする。そして様々な思いがその人生に意味をつけ、更に死に方にさえも意味をつけ、句点をつけようとする。その人が生きていた時の思考や痕跡は、何も変わりはしないのに。
しばらくコメントしないで、久しぶりに書いてやっぱり思うのは、書くという行為も、ある種句点をつけるようなもので、思い巡らせるほど本文に対して書くことの難しさを感じます。
(仮)のその後の展開を楽しみにしています。
私は本当に嬉しいです。同じ時代に生まれて。そしてこの広い世の中で、幾重にもなる偶然から出会えたことに。劇場で、山下さんの生(ナマ)の劇に触れられる楽しさは、お互いに生きていてこそ、です。
50年…いえ、もしかしたら何かたった一つの選択の違いで出会えなかったとしたら、それはそれでまた別の何かに出会えたのかもしれないけれど、この出会いがいま宝物であることに変わりはありません。
それは、山下さんが保坂和志さんに出会えたこと、のようなものです。ふふっ。お風邪お大事に。
kiki @ 2008年 11月 17日 02:26:59
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