上海の街にはびこる「怪しい店」(本文と写真は関係ありません)
【北京/中国 3日 AFP】「第56回ミス・ワールド(the 56th Miss World)」の中国代表を決める決勝大会が2日、北京で開催され、Liu Duoさんが優勝の座を射止めた。優勝したLiu Duoさんは中国代表として9月にポーランドで開かれるミス・ワールド世界大会に出場する。写真は優勝したLiu Duoさん。(c)AFP
最近、上海の(上海に限らないが)街を歩いていると、怪しげな(というより明らかに怪しい)美容室というかマッサージ店の増加ぶりに驚かざるを得ない。住宅街でも商店街でも、ところ構わずピンクの電灯がきらめいている。数年前、広東省珠海市での日本人団体客「集団買(売?)春」事件が摘発されたことがあったが、現実にはそういう事件になるのはごくごく一部で、この手の商売は中国社会のすみずみにまで根付いてしまっているようだ。
我が家は上海市の西郊の住宅地にある。先頃自転車を買ったので、時間があると自転車に乗って自宅の周辺を走り回るのが楽しみになっている。上海は街の様子がどんどん変わるので、目的を定めずに走っているだけで飽きることがない。
で、最近とても気になるのが、冒頭に書いた明らかに怪しげな美容室の増加ぶりである。外からみると、「足底按摩」とか「保健按摩」「美容」などと書いてあるのだが、それにしては中に座っている女の子たちの衣装がやたらと派手で、ミニスカートの娘たちも多い。だいたい店内の電灯もピンク色が主体で、まあまっとうでないことは誰にでもわかる。
別にそういう店があってもいいが、驚くのはその数の多さである。自宅から自転車で10分ぐらいのところにちょっとした繁華街のようなところがあるのだが、その街角には100メートルに一軒ぐらいの間隔でその手の店が営業している。もちろん昼間からである。周囲はごく普通の商店街で、住宅もたくさんある。なかにはごく普通のマンションの敷地内で営業している店や、学校の目の前でやっている店もある。
そのくらい上海でも買(売?)春行為は日常的なことになってしまっていて、ほとんと話題にもならないというのが実態だろう。感覚がマヒしてしまっていると言っていいかもしれない。昔読んだ樋口一葉の『たけくらべ』の世界を思い出した。売春街のど真ん中で幼い子供たちが平気に遊んでいるという図である。
これほどの出現率ではないにしろ、こういう状況は何も私の自宅の周辺だけではなくて、ちょっとした商店街みたいのところはどこでも大同小異である。もちろん上海だけではなくて、北京でもあるし、その他の街でもある。当然ながら主要なお客は外国人ではなくて(もちろん外国人もいるだろうけど)、地元の普通の人々である。
事件になるのはごく一部
もちろん時には事件になることもあって、数年前、上海市静安区の裁判所で日本人客にホステスを紹介し、売春をあっせんした中国人通訳が捕まって新聞沙汰になったことがある。その時の裁判記事を見てみると、判決は拘留2ヵ月と罰金1万元(日本円約14万円)とある。
現地紙などの報道によると、被告の通訳は日本人観光客3人と一緒に上海市内のカラオケクラブに訪れた。日本人客の1人がホステスの女性を気に入ったため、その女性との間を仲介し、売春するよう交渉。翌朝未明、その女性と通訳がホテルから出てきたところを警察官に逮捕された。
この件はたまたま何らかの経緯で事件化し、裁判になったので事実関係が明るみに出たが、「こんな話は日常茶飯事。どうして事件になるのかわからない」(ある日本人駐在員)というぐらい、現地社会では違和感のない話になってしまっている。
どこにでもある話ではあるけれど
割り切った言い方をすれば、この手の話は中国に限ったことではなく、世界のどこにでも存在する問題である。売る側にも買う側にも罪悪感は薄い場合も多いだろう。日本社会にも中国社会にも「多少はハメを外して遊ぶぐらいが男の甲斐性」といった観念も依然としてある。
しかしながら、やはり犯罪は犯罪である。私は実態はよくわからないが、大規模な売春組織の背後には中国語で「黒社会」と呼ばれる暴力集団の存在があるという話もある。
加えて日本人の場合、中国人社会からの「見え方」が他国とは違うというデリケートな面もある。そこにはやはり過去の侵略という歴史的な経緯が深く影を落としている。中国マスメディアの一方的な報道という面は否定できないにせよ、「日本人は好色」というイメージが、かなり親日的な人の間でも定着してしまっている事実があるのは事実である。それだけに何かあった時、日本人は他の国の人々に比べて叩かれやすい構造があることは認識しておかねばならない。
まあ自転車に乗りながら眺める近所の「怪しい店」の風情は、そんな堅苦しいことを言うにはあまりに風景に溶け込んでいて、目くじらを立てる気にもならなくなってしまうのではあるけれど。
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登録日:2006年 08月 09日 21:38:41
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- プロフィール
- 田中 信彦
- (男)
- http://chinahr.way-nifty.com/
- 1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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