9割が将来を楽観する中国人
【北京/中国 29日 AFP】北京(Beijing)は29日、旧正月を爆竹の大音響の中で祝った。1994年、中国全土の約200の都市で、花火や爆竹の禁止令が出されて以来、旧正月の祝賀は比較的静かに行われていた。10年以上たって、中国人の最も好む伝統行事の一つが復活したことに、人々は大いに喜んでいる。陰暦による旧正月は春節ともいわれ、中国の最も大事な祝日であり、さらに29日は戌年の始まりでもある。写真は29日早朝、北京の鐘楼前で無数の爆竹をつけた棒に点火、大音響の中で新年を祝う男性。(c)AFP/Frederic J. BROWN
■「自信の強さ」は吉と出るか凶と出るか
中国人の92.4%がみずからの収入の先行きを楽観視している。そう聞いたら日本人の多くは驚くのではないか。中国経済は貧富の差の拡大やエネルギー不足、環境汚染、役人の腐敗などで危機的状況にあり、いつ崩壊してもおかしくない。そんな感じで中国経済を理解している人が日本には少なくない。
ところが中国人自身の理解はまったく異なる。調査によると「収入」以外にも「生活の質」の楽観度は93.8%、「経済」が92.6%などと軒並み驚くべき高さを示している。どちらの認識が正しいかはさておき、とにかく中国の人々はみずからのパフォーマンスに対して非常に高い自信を持った人たちなのである。この調査はクレジットカード大手の米マスターカード・インターナショナルがアジア・太平洋地域の主要13都市、5404人を対象に行ったものだ。中国の国営通信社・新華社などが伝えている。
(http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-01/18/content_4069089.htm)
中国の中でも成長が顕著な都市住民が対象なので、農村では状況が違うとは思うが、それにしても9割超の人が収入や生活の質の行く末を楽観している社会というのはすごい。
■「悲観」から入る日本人
中国で暮らしていて印象的なのがこの「自信の強さ」「自己評価の高さ」である。日本人はまず「これではダメなのではないか」と考える。ではいったい何がダメなのか。どこを改善すればダメでなくなるのか。そうやってひとつひとつ穴を塞ぎ、壁を厚くしていって、時間をかけて頑丈な建物を作っていく。踏まれるほど強くなる雑草のようなものである。円高になれば「大変だ」と叫んで対策に走り、円安になればなったでまた「大変だ」と叫んで策を練る。こういう悲観症の日本人を見ていて中国人の友人たちは「杞人憂天(杞憂)の人々」と半ばあきれたような感心したような言い方をする。
中国人のアプローチは逆だ。まず自信を持つ。「私は実力がある。必ず勝てる」という前提からスタートする。そして周囲に対して「自分はいかに力があるか」「なぜ自分は戦いに勝てるのか」を滔々と演説をぶつ。そうするとその論理に着目して一口乗ろうという人が集まってくる。人が人を呼んで好循環になり、勢いで一気に勝ってしまう。自信とは恐ろしいもので、到底できるはずのないことが巡り合わせで実現してしまったりする。
ただそういう構造の当然の帰結として、その自信が客観的な裏付けを欠いたものであることもしばしばあって、そうなると極めて実務的な傾向の強い日本人の目から見ると、ほとんど虚勢ではないかと思われる時も出てくる。
先日、ある会社で入社3ヵ月の新入社員が辞めてしまった(というか試用期間でお引き取りいただいた)のだが、その背景にあったのもこれだ。新卒にもかかわらず「自分はマーケティングが専門であって、この商品を展開するにはこうすべきです。私にやらせてください」という自説を面接官を前に滔々と語り、その見事さに「リスクはあるけどなあ……」と思いながらも採用となった。
しかし実際に仕事を始めてみると、やはり実務経験が足りないので企画倒れになることが多く、それはある程度織り込み済みではあるものの、その一方でやたらと自信は強いから先輩社員にも平然と「指示」を出したりするので周辺の反感を買って孤立してしまい、身動きができなくなった。本人に悪気はまったくなくて、極めて勉強熱心ないい子だったので残念だが、もう少し謙虚だったら結果は違っていたと思う。
■「天は決して落ちてこない」
「自信」とか「楽観」が有効に作用して、時として予期せぬ大きな成果を生むことはある。しかし 「自信」と「傲慢」、「楽観」と「いいかげん」は紙一重であって、その判断は難しい。中国の人々の生活水準が急速に上昇していることは間違いない。普通に暮らしている中国人の実感で言えば、幸福感を持つ人が年々増えているのは事実だろう。それはそれでよいことに決まっていて、この調査結果自体は前向きにとらえるべきと思う。
ただその一方で、普通の人々にはどうにも手の出しようがないところで、この国の根幹がメルトダウンしつつあるのではないかと心配になる事態が続出している。それは政治風土の問題だったり、環境汚染のひどさだったり、役人の腐敗が常軌を逸していることだったり、あまりに外資依存が強い経済の体質だったりする。9割以上の人が楽観している場合なのだろうか……。
それでも中国の友人たちは「また日本人の心配性が始まった。天は決して落ちてこない。なんとかなるよ。任せておけ」と言うのだが、うーん、本当に大丈夫かなあ。
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登録日:2006年 02月 01日 17:33:15
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- プロフィール
- 田中 信彦
- (男)
- http://chinahr.way-nifty.com/
- 1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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