「和諧社会」で変わる税制

鉱山で約6000人が死亡、労働組合は約2万人と主張 - 中国

【雲南省/中国 26日 AFP】中国の炭鉱産業界では2005年、約6000人の労働者が事故により死亡した。1日当たり約16人が死亡していることになる同数字だが、労働組合は実際の死者数を約2万人と主張しており、発表された数字は、地方政府当局や鉱山の所有者たちが事故の事実を隠ぺいするため、死亡者の数が少なく見積もられていると述べた。写真は南西部の雲南(Yunnan)省で26日、32人が死亡し、28人が負傷した鉱山事故で負傷し、入院先の病院で家族の看病を受ける男性。(c)AFP

AFPBB News


 胡錦濤政権が掲げる「和諧社会」の目指すところは、要するに格差の少ない、安定した社会の実現である。そこで最大級の重要度を持っているのが、所得格差の是正、つまりは国家的な富の配分機能の再構築だ。陳良宇・上海市委書記の解任など、胡錦濤政権の権力基盤が確立されてくるにしたがって、税制にも微妙な変化が表れて始めている。


 富の再配分には、市場原理によるものと、国家権力によって意図的に行うものとがある。本来は市場原理で適正な再配分がなされれば一番いいが、やはりそれだけではどこの国でも実現は難しい。国家の政策的な誘導は不可欠である。

 その中心的な機能は、ひとつは言うまでもなく税制である。誰からどれだけ取って、誰にばらまくのかという話だ。税制の話は言うまでもなく非常に複雑だが、一口で言うと江沢民政権の時代には、税金を取ることよりも産業を育成し、振興することに力点が置かれていたと言っていい。

 もちろん税の徴収はするのだが、税務の運用を細かくして所得の捕捉率を上げ、公平な税制を実現するには非常に長い時間とコストがかかる。それよりは税はまず取りやすいところ、たとえば大手国有企業や外資系企業とか、増値税のような付加価値税とか、そういったところからまず取る。

 それ以外のところ、たとえば小規模な民営企業、自営業などについては意図的に税制の適用を緩くし、非常に簡単な課税方式にしていた。たとえば上海市では売上高が年間300万元(日本円約4500万円)以下程度の小規模納税人であれば、年間売上高に数%の係数をかけた金額を納付するだけで、その他はほとんど納税の必要がないといった非常に大胆な制度になっている。

 これは零細企業の経営者にしてみれば非常に簡便かつ安心な制度である。そうしている意図は明確で、創業の促進にある。国有企業が急速に解体していく中で、いかにして民間の新規創業を促進し、人の受け皿にしていくか、これは死活的に重要な政策であって、そのためには税の捕捉率が低いことも、明らかな経営者優遇の不公平な制度であることも承知のうえで簡便な制度を導入してきたのである。

急速に変わろうとしている税制
 
 これは一定の成功を収めてきたと思う。なにしろ会社の設立登記も非常に簡単で創業のハードルが非常に低く、税率も低いから、誰でも気軽に創業できる。もちろん会社を設立することと事業で利益を上げることはまったく別のことだが、創業する法人の母数が増えなければ成功する会社も出て来ないのは真理である。
 
 ところが、こうした制度が近年、急速に変わろうとしている。地方ごとに違いがあるようだが、たとえば上海ではこうした小規模法人に対する優遇を廃止する方向が急速に具体化している。まだ新たな方策は打ち出されていないが、特に「政変」以降、上海ではこうした零細事業者に対する特別待遇を廃止し、所得の捕捉を強化する方向で内部の議論が進んでいるようだ。

 その背景には、上海が江沢民政権時代からの流れで、一種の独立王国化し、上述のような極端な経営者優遇策などが存在し、全国的な統一性を妨げているとの北京サイドの見方がある。

 上海にしてみれば、要は地元の産業が振興して、税収が上がってくれればいいわけで、そのためには企業優遇の税制を積極的に導入することは正当性があると考えるわけだが、ある種の「金持ち優遇」であることは事実には違いない。そこに「和諧社会」を目指す現政権との思惑のズレがあることは否定できない。

 言い方を変えれば、今回の「上海政変」の隠れた意味とは、上海という巨大な利権の塊に対する北京派と上海派による争奪戦という面がある。要は上海の権益を誰が牛耳るのかということである。
 
 政治の話はともかく、庶民にしてみれば税金が安いほうがいい。仮に「陳さんがいた頃は税金が安かったが、胡さんになったら高くなった」ということであれば、陳さんのほうがよかったという話になるのが普通の市民である。

 「和諧社会」を目指す動きは、ある面で庶民に従来以上の負担を強いる部分も出てくる可能性がある。上海に限っていえば「白河の清きに魚も住みかねて、もとの濁りの田沼恋しき」という話になる恐れもなきにしもあらずである。

カテゴリー[ 中国社会 ], コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2006年 11月 30日 06:44:56

コメント

うん・・税金の話もあるが、社会安定を目指していると思う。

2年前までは日本で1円で独立できたが、今はできない。
今年5月から有限会社の設立が出来なくなり、株式会社も資本金1000万円以上まで上げている中、庶民は当然苦しくなるでしょう。。

違う相手にとってはメリット、デメリットはあるが、あくまで国全体的な安定性を考えてからの行動でしょう・・
ここまで大きい政策は私たち個人で評価できるものではありませんが・・

どうかな~ @ 2006年 12月 04日 19:38:52

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プロフィール
田中 信彦
(男)
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1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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