教えずに文句を言う理不尽
【上海/中国 6日 AFP】政府の厳しい規制にもかかわらず、ウェブ上での映画や歌のパロディは大きな規模になっていて、最近ではこれらの呼び名として「Egao」という新語が生まれるなど、新しいカルチャーとして広がっている。写真は5日、スタジオでポーズをとるチェン・カイコー(Chen Kaige)監督の映画「Promise/無極(原題:Wu Ji)」のインターネット・パロディで知られる元音楽教師のHu Geさん。(c)AFP/Mark RALSTON
上海の浦東新区にある日系メーカーに1人の日本人総経理が赴任した。中国勤務は初めての人である。第一に感じたのは、とにかく会社の中が汚いことだった。
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清潔さの確保はメーカーの基本中の基本である。しかしながら総経理室の窓ガラスは汚れで曇りガラスかと思うほどだし、工場やオフィスの床にはゴミが落ちており、従業員食堂の食器は使う前から油でギトギトしている。
しかしそれにも増して違和感があるのは、社内がこのような状態にもかかわらず、すでに駐在している日本人を含め、誰も現状がおかしいとは思っていない様子である。内心、「前任者の総経理は何をしていたのだ」と思ったが、とにかくまともな製品ができる環境ではない。社内の美化がすべてのスタートだと心に決めた。
「掃除をしろ」。総経理の号令に従業員はしぶしぶ掃除を始めたものの、いくらやってもちっともきれいにならない。
「なぜなのか」と改めて考えた。
結論は「従業員たちは現状が汚いとは感じていないからだ」。
日本人総経理が怒っている「汚い」とはどのような状態なのか。総経理が言う「清潔」とはどのような状態なのか。従業員たちは見たことがない。つまりここで求められている「掃除」とは、どのような状態を、どのような方法によって実現することなのかが理解できていない。
だからいくらやっても「きれいに」はならない。
「それなら」とこの総経理は部下に大量のぞうきんとバケツを買いに走らせ、腕まくりをして会社の床に這いつくばり、自らぞうきんがけを始めた。女子工員たちは最初「カエルみたい」と笑っていたが、総経理が床の一画をピカピカに磨き上げ、真剣な表情で「こうやってくれ」と言ったら、やり始めた。
実際に従業員が床を「掃除」して、総経理がやった床と比べる。今度は基準となる実物があるから、比較してどちらが「きれい」かは一目瞭然である。同じレベルになるまでやったら、社内の床はどこもピカピカになった。
食器洗いも同じだ。まずは総経理が自ら洗い場に立ち、油落とし、洗剤洗い、すすぎの水槽を明確に分け、手順を組む。そして実際に自分で洗ってみて、スポンジで何回こすったら油汚れが落ちるのか、ふきんでどのように拭いたら水気がなくなるのか、水槽の水はどのくらいの頻度で交換するかなど、作業の標準を決めた。
そして「食器をこういう状態にすることを『洗う』というのだ。これでやってくれ」と言ったら、翌日から食器はピカピカになった。
教えればできる。できないなら採用が悪い
「とにかく教えること。教えないで文句を言っても始まらない。教えて、やって見せて、できたら褒める。そうすれば必ずできるようになる。できないのは管理者が教えていないだけ。最初にきっちり教えておけば何も問題はない」と、この総経理は話す。
さらに大事なことは継続的な努力である。せっかくできるようになったことも、放置しておけば次第にレベルが落ちてくる。そのため定期的にプロセスや結果をチェックし、できていたら褒める。できていなければ改善策を指示して、再度チェックする。こうしたこまめな評価が絶対に必要だ。
言ってみれば当たり前のことで、何も秘訣があるわけではない。肝心なのは「知らない」のと「能力がない」のとは違うという点を明確に認識することだ。知らないことはできないのが当然で、やってほしいのなら教えればいい。教えないで「できない」と文句を言ってもしょうがないし、教えてもできないなら、教え方が悪いか、そんな人材を採用したほうが悪い。
「明確な要求基準」と「それを達成する具体的な方法」を示すことが、経営者、管理者たる日本人駐在員に求められていることである。
カテゴリー[ 日系企業 ], コメント[5], トラックバック[0]
登録日:2007年 02月 10日 13:01:32
コメント
このような問題解決アプローチは古いパターンと思われます。恐らく8年程度前にこちら中国で流行した管理手法と思われます。
このような総経理が社命により帰国したあと、この現地法人様はどうなるのでしょうかね?
当然以前の状態に戻るでしょうね。
現在ではこのよう社内管理は有効でないと判断します。
小田 @ 2007年 02月 10日 23:33:32
中国ビジネスに携わる一人としていつも興味深く読ませて頂いております。
小田様のおっしゃる現在の中国での社内管理手法とはどういう事なのでしょうか。
初めて赴任してきた総経理が見た現状とそれらを解決するアプローチについては
理解できるのですがまだ何か足りない事があるのでしょうか。
是非御教示願いたいと思います。
田中 @ 2007年 02月 13日 12:28:07
製造部門の基本は5Sである(「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」)。これにはどなたも異論はないと思う。安全や品質向上を願いトップダウンで実施すべきもので、中小製造業を受け持ったコンサルタントは5Sから出発する。
以前大手メーカー子会社の工場(名古屋)を見学させてもらった時は、さすがゴミ一つ無く治具の置き場は決まっていた。日本の製造業の強みはここにもあるような気がします。
富士 @ 2007年 06月 27日 21:40:46
日本人には当たり前だと考えていることが当たり前に出来てないのが現在中国が抱えている問題ではないでしょか。
イン ランギョク」 @ 2007年 08月 06日 11:30:04
はじめてコメントさせていただきます。いつも勉強させてい
ただいています。
私の知人で中国で自ら開業した総経理がいますが、
彼は田中様のブログの手法で成果を上げています。
それは小田様のコメントのとおり彼は帰国しないし、
交代人事もありえないからだと思います。
中国の人が本当に5s~7s概念などの導入の必要性に気付
けば勝手に導入は進んでいくのでしょうが、そこを変える
のが一番難しいと思います。そのためには日本法人が
現地法人へ向き合うときの姿勢、出張滞在者のケツの
置き方なんかも影響あるのだと思います。
甘いかもしれませんが、「中国の人たちあって日本の
経済も成り立つ。お互い様。」と思えれば最低「搾取」では
なくなるでしょうし。
中国の人への教育を論じるのはそれからだと感じています。
さすらい @ 2007年 08月 13日 15:56:23
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- プロフィール
- 田中 信彦
- (男)
- http://chinahr.way-nifty.com/
- 1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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