中国で “コンビニもどき”を圧倒するセブンイレブン
【北京/中国 17日 AFP】16日、北京(Beijing)の在中米国商工会議所(American Chamber of Commerce)に属する900社の半数にあたる企業を対象にした調査結果によると、両国の貿易摩擦が続いているにもかかわらず、中国における米企業は増益で成長を続け、中国国内市場への進出も進み、外国資本企業の設立が以前より容易になっているという。写真は、北京のモトローラ(Motorola)の看板の前の歩道に座る男性。(c)AFP/Frederic J. BROWN
最近、仕事で北京に行くことが多い。街角にセブンイレブンの店舗を見ることが多くなったが、他の地元系“コンビニもどき”との客の入りの違いは歴然としている。商品の品揃え、店の清潔度、店員の接客態度など、どれをとっても圧倒的に差があるので無理もない。まだ店舗数が少ないが、今後、フランチャイズ方式でも同様のサービス水準を保てれば、セブンイレブンが中国でもコンビニの標準になるだろう。
中国「コンビニ文化」の元祖は上海ローソン
中国でコンビニの嚆矢となったのは上海のローソンである。上海進出は96年のことで、当時はコンビニという概念自体が中国にはなかったので、非常に新鮮だった。とにかく店がきれいで明るく、24時間営業していて、店員の態度もまあまあ、とにかく必要と思われるものが一通りは揃っている。
さらに斬新だったのは、おにぎりやパン、カップめん、おでん、サンドイッチなど、その場で食べられる軽食類が豊富に用意されていたことである。日本では当たり前の商品群だが、中国ではそれ以前、外に食べにいくか、店から出前のように持ってきてもらうという概念はあったが、自分で食べ物を店に買いに行って、持って帰って食べるという習慣は意外と少なかった。
最初に反応したのは中心部のオフィスビルに勤めるOLさんたちである。たとえば上海の茂名南路と復興路の交差点にある老舗オフィスビル「瑞金大厦」の下にあるローソンでは、昼時になるとOLさんたちが大挙して下りてきて、サンドイッチやおにぎり、デザート、コーヒーなどを買ってオフィスに戻っていく。また午後になると、学校帰りの中学生がおこづかいを手にローソンのおでんを買い、店先でほおばっている姿も目につく。夜には独身のサラリーマンふうの男性がビールとカップめん、雑誌を買って、ビニール袋を手に帰っていく。こうした光景はほとんど日本と変わらず、「コンビニ文化」を中国に根付かせたのはまさにローソンの功績だと思う。
店員の「やる気」が違う北京のセブンイレブン
しかし上海のローソンはその後の進化という面では、やや低迷している感じがある。そろそろ進出10年になるわけだが、その割には商品の品揃えも似たようなものだし、サービスの水準もさほど上がっているとは思えない。競争が激しいためか店舗数もあまり増えている感じもしない。清潔感のない店も少なくない。もちろん他の地元コンビニに比べればはるかにマシだが、かつてほどの輝きはない。
昨年夏頃から仕事の都合で頻繁に北京に出張に来るようになり、1~2週間程度滞在する機会も増えてきた。そこで感じるのがセブンイレブンのレベルの高さだ。
セブンイレブンはかねてから香港経由で中国の華南地域の一部に出店していたが、これはアメリカによるあるジュースやお菓子を売っている雑貨店に毛が生えた程度のもので、お世辞にもまともな代物とは言えなかった。おそらく本部も不満だったのだろう。それとはまったく別ルートで、コンビニ激戦区の上海を避け、空白地帯の北京に乗り込んだ。
北京のセブンイレブンに入ると、まず店員の「やる気」が違う。中には「中国的対応」のお兄さんもいたりするが、まあこれはご愛嬌で、大半は大声で「いらっしゃいませ」に相当する中国語を叫び、レジで勘定を済ませば「ありがとうございました。またおいでください」に相当する中国語を述べる。素晴らしいのは、レジに並ぶ客が増えてくると、店内の誰かが駆けつけて他のレジを開けるという、およそ中国では滅多に見ないサービスがかなりの頻度で体験できることである。これは素晴らしい。ぜひなんとか維持貫徹してもらいたい。
人気の「店内の弁当屋」
商品構成は基本的に日本と同じようだが、あくまで「同じよう」なのは構成であって、中身やその厚みはかなり差がある。しかし菓子パン類は「工場直送」みたいなのが揃っているし、デザートのシュークリームやクリームブリュレ(5元、日本円約75円)のおいしさは中国の一流ホテルを上回るのではないかと思う。私は中国人の友人たちに必ずこのセブンイレブンのクリームブリュレをお土産に買っていくが、10人中8人はそのおいしさに驚き、ファンになって自分で買いにいく。冗談でなく北京の洋菓子の歴史に一大エポックを画する商品だと思う。こんなハイレベルの商品がコンビニに並ぶというあたりが日本的大衆文化の底の厚さを示している。
おでんもおいしい。味付けは日本よりやや濃厚で、動物脂肪的な感じがするが、これはこれで悪くはない。特筆すべきは衛生面の配慮で、おでんは店員が取り分けて容器に入れてくれるが、店員はわざわざマスクと帽子、透明の手袋をつけて作業をする。これもなかなかできないことである。おでんは早くも北京のオフィスの日常的昼食における定番メニューになった感がある。
さらに日本と違うのは、セブンイレブンでは昼食時には店内に持ち帰りの惣菜屋というか、弁当屋がオープンすることである。店内の透明なショーケースの中に8種類ほどの惣菜が用意してある。内容は「トマトと卵の炒めもの」「キノコと牛肉炒め」などといったいわゆる大衆的中華料理メニューで、その中から2~3種類を選んでご飯と合わせて容器に入れてもらう。だいたいおかず2品+ご飯で7~8元ぐらい、3品+ご飯で10~12元ぐらいである。これらの料理はすべてセントラルキッチンで調理されたものを店内に運び込み、電子レンジで温めてお客に供する。宅配の弁当などに比べて安くはないが、味はまずまずで、昼時には行列ができている。こういうものを買うと、普通はデザートや飲み物も買ってしまうので、なかなかいい商売だと思う。
どこまでのサービス水準を貫くか
もともと北京にはコンビニと呼べるようなものが上海よりはるかに少なく、まともに競争相手がいなかったところに、上海のローソンをはるかに上回るレベルのセブンイレブンが登場したので、向かうところ敵なし状態になるのはある意味で当然かと思う。私が北京で使っている東城区内のオフィスは、最も近いセブンイレブンまで5分ぐらいかかるのだが、昼時に行ってみると人で一杯である。近くの“コンビニもどき”にはほとんど人影もいない。まあ、まともに昼御飯に食べられるものもないのだから無理もない。
北京市内ではずいぶんあちこちでセブンイレブンを見るようになったと思っていたが、聞けばまだ30数店舗だという。おそらく良い立地を押えているので目立つのだろう。早くも私たちの周囲では「セブンイレブンが近くにあるかどうか」がオフィスの選択条件のひとつになりつつある。
中国のフランチャイズのオーナーというのは手ごわい存在で、なかなか言うことを聞かないらしく、上海のローソンもその点では苦労していたようだ。セブンイレブンがそこをどう切り抜けてサービスを定着させるのか興味深い。粘り強い仕事ぶりでは定評のあるセブンイレブンのことだから、多少は苦労したとしても、最終的にはおそらくなんとかしてしまうのだろう。
上海のローソンは、当初の数年間はかなり高い仕切りをもって、その達成に努力していたようだが、どうしても黒字にならないので、ある程度現地化するべきところは現地化してコストを下げ、採算性を重視する方向に転換したようだ。それはそれで経営方針のひとつだから、別に異論はないが、ここ数年のローソンのある意味での「変わり映えのなさ」はそこに原因があるのかなとも思う。
セブンイレブンがどこまで高い仕切りを持って北京のマーケットに臨むのか、どこまでのサービス水準を求め、その要求を貫いていくのか。「過剰スペック」になってしまっては採算が合わないが、「それなりのもの」で満足する会社でもなさそうだ。今後の戦いぶりがとても楽しみである。
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登録日:2006年 02月 20日 23:54:34
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- プロフィール
- 田中 信彦
- (男)
- http://chinahr.way-nifty.com/
- 1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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