「犬権」か「人権」か~中国社会を悩ます「狗患」とは?
【合肥/中国 23日 AFP】2006年の中国における出稼ぎ労働者の人口は前年より670万人増加し、1億1490万人に上った。1998年から2005年まで、出稼ぎ労働者の人口は毎年平均403万人増加。地方の安価な労働力は90年代以降、急速に進む工業化を支えてきた。写真は安徽(Anhui)省合肥(Hefei)の駅で22日、旧正月明けのUターンラッシュで混雑する構内。(c)AFP
「狗患」は直訳すれば「犬害」。中国の都会では犬を飼うことがブームになっているが、それに付随して発生するさまざまな社会問題を「狗患」と称している。メディアによっては「犬患」と呼ぶ例もある。
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「狗患」には多種多様な問題がある。
鳴き声がうるさい、糞が衛生的でない、放し飼いの犬に噛みつかれた、といった昔ながらパターンに加え、最近では犬による細菌の感染、狂犬病の広まりといったより深刻な問題も出てきている。もちろん単純に「私は犬が嫌いだ。近くで飼われるのは迷惑だ」という「人権」の主張も増えている。
実際、中国政府の統計によれば、2006年1月から9月までの間に全国で狂犬病の発病例は2254件に達している。これは対前年比で30%以上多く、10年前の20倍以上という数字である。ネット上でも、「犬を飼うことは市民の権利か否か」いった論争が激しく展開されている。
背景には人権意識の高まりが
中国社会で「狗患」がこうした社会問題になっている背景には3つの原因があると指摘されている。
ひとつは単純に犬を飼う人が増えたことだ。
正確な統計はないが、確かに筆者が暮らしている上海の大型マンションでも、敷地内で犬を連れて散歩している人、アイ(家政婦)さんに大型犬を散歩させている人がたくさんいる。中国の大都市はどこでも人口密度が高く、庭付き一戸建ての住宅は少ない。マンションの大半は庭はないから、どうしても犬との距離が近くならざるを得ない。犬が嫌いな人は住みにくいのは確かだ。
2番目は市民の権利意識の高まりである。
社会の富裕化にしたがって犬を欲しがる人は増えており、愛犬家は「犬を飼う権利」を主張する。しかし犬が嫌いな人、もしくは犬の迷惑に悩んでいる人は「犬を飼わない権利」または「迷惑をかけられない権利」を主張する。都市化で近隣の共同体意識が薄れ、個人主義的意識が強まるにつれ、犬に関する摩擦が増えているのは確かだ。
3つめは、犬を飼うためのマナーが普及していないことである。
日本でも私が子供の頃は、近所の路上に犬の糞がしばしば転がっていたものだ。しかし最近では犬を散歩に連れている人はほとんど糞を処理するための道具を携帯している。この種のマナーが中国ではまだまだ一般的でないので、問題が容易に拡大しやすい。まあとは言っても、中国の都会で犬を飼うことが一般化したのはここ10年ぐらいのことだから、仕方がない面もある。
犬の飼い主に負担金の案も
ということで、どうにか対策を講じなければならないのだが、政府としてもこれといった妙案はないようだ。最も有効そうなのは、犬を飼うことに対して一種の税金というか負担金を課す方法だ。これによって飼い犬自体の数を減らす一方で、生活レベルの比較的高い層に限定することで、マナーの低い飼い主の出現を抑制しようという狙いである。
確かにこれはひとつの方法だが、結局はカネで解決する手法には違いなく、「庶民が老後に犬と暮らす権利すら奪うのか」といった批判が絶えない。カネ以外の方法としてはマナー向上を待つしかないが、これはいつになったら実現するのか見通しは立たない。
急速な生活水準の向上に社会的なルールやマナーの育成が追いつかない現象は中国社会のあちこちに見られるが、「狗患」の問題もその典型的なひとつと言えそうだ。
カテゴリー[ 中国社会 ], コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2007年 02月 26日 10:47:50
コメント
そうですね。
今この時間、私が住んでいる上海のマンションの下を走る市内幹線道路で車に轢かれた犬(既に死んでいるでしょう)がいます。
過去になかった上海での日常風景ですね。
小田です。 @ 2007年 02月 27日 00:06:07
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- プロフィール
- 田中 信彦
- (男)
- http://chinahr.way-nifty.com/
- 1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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