中国人はいつ会社を辞めるか

中国人はすぐ辞める。この話は中国の日系企業では定番である。確かにそうなのだが、ではいつ辞めるのか。 危険なのは入社3日目、そして1カ月後だという。

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中国社会では会社を辞めるのは普通のことだから引き留めようがない部分もあるが、会社側の対応次第で定着率はかなり違う。

まず危ないのは3日目

これまで関わってきた日系企業や中国人の身内、友人が経営している企業などの経験を総合すると、幹部でない一般的な社員が辞める危険性が高いのは3日目。それまでの仕事や会社が嫌だったり、もっとステップアップした仕事がしたくて転職(転社)するが、事前の研究が足りないうえに、当然ながら周囲の職場に知っている人が誰もいない。

雇った方も普通は採用面接というのは社長や部長など偉い人がするから、直接面接した人は忙しくて面倒を見ている時間がない。一方、同僚は中国では自分の仕事範囲がきちっと決まっていることが多いから、やっても自分の給料が増えるわけではない新人の世話など誰もやろうとしない。

食堂の食券はどこで買うのか。交通費の精算はどうするのか。そんな細かいことが堆積してイライラする。1~2日は持つが、3日目で来なくなってしまう。しょうもない話のようだが実際にこんなケースは少なくない。

中国では日本のように人事部という組織がしっかり確立している例はまれであり、働き手にとっても長期雇用が有利という発想はない。辞めることに対する抵抗感は薄い。誰が新入社員をきっちり見るのかを決め、そしてそれが日常業務範囲外の仕事であるなら、明確な手当なり評価なりでサポートしないと対策にならない。

マネジャークラスは1カ月が危険水域

それに対してマネジャークラスの幹部社員は、自分で自分の業務を作ろうという意識があり、入ったからにはという責任感もあるから、さすがに3日で辞めるケースは少ない。危ないのは1カ月後ぐらいである。

1カ月もすると、優秀な人であればほぼ会社の内情や人間関係、ホンネとタテマエ、社長の器量、昇進の可能性などが読めてくる。通常、雇用契約で試用期間が3カ月程度設けられていることが多いが、優秀な人は買い手はいくらでもいるから3カ月も待つのはもったいない。この時点で辞めてしまう。

出来の悪い人間なら辞めてもらった方がいいが、戦力になる人が辞めるのは問題だ。そのリスクを下げるには、どれだけの待遇やどのようなミッションを与えるかという基本的な事柄に加え、その人ともっぱらコミュニケーションを取り、会社の風土になじませるメンター(後見人)的存在の社員を設定することは一定の効果的がある。

「人につく」中国人

当然、相手が優秀な人であれば、それに負けない社内の逸材をその任に充てなければならない。出来の悪いメンターに報告を強要されたのでは逆効果である。

  ビジネスパーソンの皆さんは心当たりがおありだと思うが、自分を面接して採用してくれた人のことは後々までも覚えているものである。中国社会では会社という「器」にではなく「人につく」という要素が強いから、特に自分を採用してくれた人に対する忠誠心が高くなる傾向がある。

  自分が面接した人に対しては自分も責任があることを自覚して、日頃何かにつけて連絡したり気を配ることが絶対に必要だ。またある程度以上の規模の企業であるなら、採用した社員に対して1週間後、1カ月後、3カ月後など期間を決めて人事部門の責任者や会社の経営者らが調査や面談をするといった制度を構築するのも効果がある。

また、その時点で「これは」という人材に対しては、思い切ってポジションを上げるとか、給与を上げるといった割り切った対応も必要と思う。自分の能力の向上や出した成果がタイムラグ少なく、すぐに待遇に反映されることが離職を防ぐ最大のポイントである。

さまざまな手だてを尽くしても、どうしても辞めるという人に対しては仕方がないので、腹を立てずに送り出すのがよいと思う。中国ではかつての部下や上司と、会社を辞めた後でも仲良く友人関係であるのはごく普通のことである。「ダメ会社だったけど、あのボスはいい日本人だ」という感覚を持ってもらえることは、会社にとっても個人にとっても貴重な財産になる。

 「人は天下の回りもの」。中国では天下を回っているのはカネだけではない。

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登録日:2007年 06月 22日 23:16:53

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プロフィール
田中 信彦
(男)
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1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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