タクシーは何台やってくるのか~中国のサービスについての基本的問題

中国でインフレが加速、消費者物価指数が前年比6.5%上昇

【9月11日 AFP】中国国家統計局(National Bureau of StatisticsNBS)が11日に発表した8月の消費者物価指数(CPI)は、豚肉などの食品価格の高騰を背景に前年同月比6.5%上昇、年初比3.9%上昇し、インフレが過去11年近くみられなかった速度で進行していることが明らかになった。
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(c)AFP/Dan Martin

AFPBB News


 ハードウエアを買うのは簡単だが、問題はソフトであるとよく言われる。現在の中国ほどその意味を実感するところはない。もちろん中国社会は全力を挙げてそのソフトの養成と定着に努めているのだが、先進国が長い年月をかけて積み上げてきた「社会的資産」を定着させるのは簡単ではない。

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●ちょっと待て、そのエビ、まだ食べるから

  先日友人たちとある広東料理のレストランに行った。特に超高級店というわけではないが、店員の訓練も熱心に行われている。何品かの料理を頼んでひとしきり食べた後、友人たちと談笑しているとウェイトレスがやってきた。

  「下げてもいいですか?」
  皿にはエビがまだ数匹残っている。
  「ちょっと待って。まだ食べるから」
  「わかりました」
  しばらく談笑していると、別のウェイトレスがやってきた。
  「下げてもいいですか?」
  「ちょっと待って。まだ食べるから」
  「わかりました」

  せっかく弾んでいる会話を妨げられたのでやや面白くない。が、気を取り直して談笑していると、別のウェイトレスがやってきて、微笑みながら皿を持ち去ろうとする。

  「ちょっと待って。まだ食べる」
  「そうですか」

  それでもしばらく談笑していると、今度は黒服の女性服務員が近寄ってきた。皿を下げようという目論見に違いない。案の定、

  「お下げし…」

  「聞きに来たのはあんたが4人目だよ」と言ったら苦笑していた。

●タクシーは何台やってくるのか?

  先日、北京に出張してホテルに泊まった。3つ星クラスの普通のビジネスホテルである。チェックアウト時に部屋に荷物を取りに来たベルボーイが

  「タクシーはいりますか?」

  周到なサービスである。
  「ではお願いします」
  「どちらまで」
  「○○ビル」

  フロントで清算していると、キャッシャーの女性が
  「タクシーはいりますか」
  「お願いします」
  「どちらまで」
  「○○ビル」

  会計を終えてロビーに出ると、立っていた案内係の女性が近寄ってきた。タクシーの件を聞くに違いない。
  「タクシーはいりますか」
  「お願いします」
  「どちらまで」
  「○○ビル」

  ホテルの回転ドアを出ると、ドアマンが立っている。
  「タクシーはいりますか」
  「お願いします」
  「どちらまで」
  「○○ビル」

  ドアマンは近くに待機していたタクシーを手招きし、トランクに荷物を入れてくれた。運転手が言った。
  「旦那、どちらまで?」

  結局、私に行き先を聞いた4人の従業員は、誰も運転手に行き先を告げたわけではないのである。

  みんな努力をしているのは分かる。経営者が教育しようとしている姿勢も分かる。みんなにこやかだし、態度が悪いわけでは決してない。でも核心部分で何かが欠けている。

●頑張ってはいるが、想像力が欠如している

何が不足しているのか。

それは自分の頭で考える、このサービスは誰のために、何のためにやるのか、仕事の目的を考えるという姿勢である。

  前述のレストランの例で言えば「客の様子をよく観察し、食べ終わったら迅速に皿を下げよ」と訓練されているのだろう。それは間違っていない。しかし「お客の会話が弾んでいる時に邪魔をしてはいけないのではないか」という想像力がない。同僚たちが客から得た「まだ食べるよ」という情報が共有されていない。

要するにマネジメントの教育不足ということではあるのだが、与えられた自分の任務の遂行だけに気が行ってしまい、他人の都合を慮る姿勢に欠けている。ホテルの例も基本的に同じである。

  もちろん「マニュアル通り」「通り一遍」であったとしても、何もないよりはいい。中国と30年近くつき合っている身としては、大して高級でもない店やホテルでここまで来たという事実には正直言って感慨もある。

  ただその一方で、本当に大変なのはここからなのだ、ここから先が一番学ぶのが難しいのだという思いを拭うことができない。

カテゴリー[ 中国社会 ], コメント[4], トラックバック[0]
登録日:2007年 09月 11日 23:01:34

コメント

恐らくあと3世代の時間は必要でしょうね

xx @ 2007年 09月 15日 00:32:14

面積は日本の26倍、人口は日本の10倍で、教育どころかご飯食べられない人もいっぱいいる。全員努めているがやっぱり時間が必要で、後3世代も必要かもしれませんが、安易にああだこうだとは言わないでください。
追伸:「社会的資産」は何千年も積み上げてきていますが。

上海人 @ 2008年 01月 31日 12:20:56

中国の現実に忠実して論述していると思います。

良い勉強になりました。

どうもありがとうございます。

中国人 @ 2008年 03月 28日 14:40:23

筆者と同じ様な感じがあって、サービスのよさはまだ日本とは桁違うと思うが、中国のみんなの努力が必要で、次も筆者の正直な話をどんどんゆってほしい。

日本にいる中国人 @ 2008年 05月 05日 18:35:48

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プロフィール
田中 信彦
(男)
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1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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