中国での人事制度の基本は「自分の土俵で相撲を取る」こと~その1

民間企業の8割 従業員と雇用契約結ばず - 中国

【西安/中国 26日 AFP】中国の民間企業の多くは、労働者の基本的な権利を侵害している。80%以上の会社が、従業員と正式な契約を結んでいない。契約していたとしても、雇用者側の権利を保護するだけで、被雇用者側については単に義務を箇条書きにし、労災については何の補償も与えていない。写真は25日、陝西省西安(Xian)で、抗議のためタワーから飛び降りようとする労働者を地上に降ろそうとするレスキュー隊。(c)Getty Images/AFP

AFPBB News


なぜ中国の日系企業では自分たちが思い通りに戦えるような人事制度の構築が進んでこなかったのだろうか。なぜ日系企業がその持てる力を充分に発揮できるようなやり方が実現してこなかったのだろうか?

ちょっとここでその問題を考えてみたい。そしてその問題を解決するための方策、さらに実際に地道な努力によって人事施策において一定の成果を出している事例を参考にしながら、今後の中国における日系企業の人事制度の方向性を探ってみたいと思う。

「反日デモ」後、急増している日系企業の対中投資

日中関係の重要性についてはここでは改めて詳細には触れない。香港も含めた中国と日本の貿易量はすでに米国を上回っており、そのことを指摘するだけで充分だろう。中国政府の数字によれば2004年現在で中国進出の日系企業は約1万6000社に達する。

05年4月のいわゆる反日デモの影響もあって、日本国内の報道では対中投資の見直し、インドやベトナム等へのシフトなどの動きが報じられている。しかし現実には日経ビジネス」の田原真司・北京支局長が指摘しているように、

http://china.nikkeibp.co.jp/china/news/tren/tren200602200125.html
(日本語版は同誌の定期購読者限定のサイトなので、同じ文章の中国語版のURLを掲載しておく)

2005年1~11月の日本からの対中累積投資額は59億5800万米ドル(約7000億円)で、対前年比の伸び率は25%以上に達する。特に反日デモ鎮静化後の秋口からの伸びが著しく、10~11月の伸び率は対前年比60%にも達している(中国商務省の統計による)。

こうしたことから両国間に存在する複雑な問題はあるにせよ、日中関係はもはや抜き差しならぬレベルに達しており、多くの日本企業はいわゆる中国リスクを充分に承知しながらも、中国投資を継続していく強固な意志があると見ていいだろう。

「人事のプロ」を投入する企業が増えてきた

こうした流れの中で、中国でのHR戦略への取り組みを強化、社内外の「人事のプロ」を投入して本格的な人事・教育制度の構築に乗り出す企業が増えている。またその結果として、一部で注目すべき成果が出始めているのも昨今の大きな流れと言っていい。

日本国内での中国ビジネスに対するイメージは一般に「成功よりも失敗が多い」「中国では日本の経験は通用しない」「中国ビジネスは難しい」といったネガティブなものが目立つ。

これらは総論としては確かに外れてはいないが、そのことばかりを強調してもあまり意味はない。考えてみれば、充分な情報や経験、人材が蓄積された日本の本社や事業所から遠く離れた異国で、必ずしも充分でない人員や資金、厳しい時間的制約の中、言葉すら満足に通じない外国人たちと新たな事業を立ち上げていくのは決して簡単なことではない。投資の初期段階で失敗が多いからといって、それのみをあげつらっていても生産的な態度とは言えないだろう。

実はたくさんある日系企業の成功体験

実は中国の日系企業には成功体験(と言って華々しすぎるなら「有用な経験の蓄積」) がたくさんある。大事なのは「失敗が多い」と訳知り顔をすることではなく、「どんなやり方はうまく機能したのか」を知ることだ。中国進出日系企業がこれだけ増え、進出以来これだけの年数が経過した現在、地道に取り組んできた企業には、日系企業であればある程度普遍化が可能と思われる経験則が蓄積されてきている。

そうした観点から今後重要になるのは、中国での事業においてどのような人事施策が有効であるのか、その基本的なモデルを早急に整理し、共有できる状態にすることだ。そしてそのベースに基づいて、各社の経営理念や事業戦略、経営資源の質と量、ターゲットとする市場の違いなどによってその中身をみずから改善し、自社の経営環境により適合する形に高めていくことである。

(この続きはまた次回に書きます)

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登録日:2006年 03月 27日 15:46:49

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プロフィール
田中 信彦
(男)
http://chinahr.way-nifty.com/
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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