中国での人事制度の基本は「自分の土俵で相撲を取る」こと~その2
【西安/中国 26日 AFP】中国の民間企業の多くは、労働者の基本的な権利を侵害している。80%以上の会社が、従業員と正式な契約を結んでいない。契約していたとしても、雇用者側の権利を保護するだけで、被雇用者側については単に義務を箇条書きにし、労災については何の補償も与えていない。写真は25日、陝西省西安(Xian)で、抗議のためタワーから飛び降りようとする労働者を地上に降ろそうとするレスキュー隊。(c)Getty Images/AFP
中国の日系企業で、こうした有効な人事施策の確立や共有が思うように進んでこなかったのはなぜだろうか。
その原因は一口で言って「プロの不在」にあると私は考えている。
原因は「プロの不在」にあり
ビジネスパーソンならご実感のことと思うが、仕事とは「何をやるか」より「誰がやるか」のほうが結果を大きく左右する。その意味で中国での日系企業の経営にはこれまで人事や採用、教育・研修など、そのプロの関与があまりにも少なかった。要するに「やるべき人」がこの仕事を担当してこなかったということだ。
たとえば、中国の日系現地法人に日本人が赴任して、まず現地の状況を把握する。そして自社の経営資源と事業戦略に鑑みて、どんな採用手法を取るか、どんな評価制度にすべきか、どんな福利厚生のパッケージを導入すべきかといった問題について考える。
そうして出てくる結果は、もし人事のプロがちょっと本気で取り組めば、まず10人中9人の判断はほぼ一致するだろう。採用戦略や人事戦略には当然ながら定石というものがあり、基本的な理論がある。もちろん中国と日本で事業環境は異なるが、その環境下で打つべき手はそんなにいくつもパターンがあるわけではないのである。
にもかかわらず、そうした人事領域の専門知識と経験に欠けた人々が、生半可な知識に頼り、「ああでもない、こうでもない」と生兵法を繰り返して右往左往してきたのが今までの日系企業ではないかという気がする。
「現場」が中国にせりだしてきた日系企業
これはある程度仕方のないことではある。
多くの製造業の中国進出は、もともと「現場」である事業部内の工場が個別に中国にせりだしてきたような面が強い。そのため人事などスタッフ的な機能が弱い。現地法人に派遣できる人員にもおのずと制約があり、人事関連のプロを送ってきた企業は多くはない。
一方で本社には人事のプロが存在するが、こうした人々は中国の事情に疎いか、もしくは関心が薄い。社内で栄達の道を歩むのは「まるドメ」の人か、欧米畑の人々である。中国の人と社会に対する深い理解が不可欠な人事の仕事にこのことは致命的なネックになる。
こうしたさまざまな背景のもと、日本で手慣れた年功的色彩の強い仕組みをそのまま導入して有能な人材の流出を招いたり、逆に日本国内ではほとんど経験したことのない米国風の職務中心の手法を導入し、結局は運用しきれずに有名無実化してしまったりということがあちこちで起きている。
「郷に入れば郷に従え」は鵜呑みにしていいか
何か本末が転倒してはいないだろうか。
「郷に入れば郷に従え」は確かに真理ではあるが、企業の海外進出とは自分たちが最も得意とする戦い方、つまり自社がこれまで内外で戦果を上げてきた「勝ちパターン」を現地で再現するのが基本でなければならない。経営資源に圧倒的に恵まれた日本国内ですら満足に成果を挙げたことがない手法が、客観的条件のより厳しい中国でうまくやれると考えるのは無理がある。
つまり中国進出にあたっては、自社が最も強みとしてきたところは何なのか、何によって国内外のマーケットで自分たちは勝ってきたのか。それをじっくり考えて、そのことを中国で実現するにはどうすればいいかと考えるのが順当なアプローチである。
大企業とは過去の競争に勝ってきたからこそ「大」企業になったのであって、そこには必ず得意技がある。得意の戦い方というものがある。それをみずから捨て去って、苦手な戦法を取るのは得策ではない。
実際、数は多くはないが、中国の日系現法に赴任して一定の成果を挙げている人事のプロたちの多くは、こうした手堅いアプローチを取っている。
こうした例を次回にはご紹介していきたいと思う。
(この続きはまた次回に書きます)
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登録日:2006年 03月 28日 15:42:59
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date:2006年 03月 31日 18:43:08
- プロフィール
- 田中 信彦
- (男)
- http://chinahr.way-nifty.com/
- 1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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