「首を切れない現地ワーカー」 検証 日中合弁とは何だったのか(1)
【ホニアラ/ソロモン諸島 21日 AFP】スナイダー・リニ(Snyder Rini)氏が18日に新首相に選出されたことを受け、首都ホニアラ(Honiara)では21日、対立候補の支持者たちが、この選任は極めて不当であると主張した。新首相は50人の国会議員によって選出されたが、対立候補の支持者による暴動が2日間にわたって続いている。写真はホニアラの通りで警備にあたるオーストラリア軍兵士。(c)AFP/William WEST
ある日本人総経理が言う。
「国有企業との合弁で総経理も含めて通算10年、経営者としてやってきた。その間ずっと『合弁の強みとは何か』を考え続けてきたが、結局いくら考えても思いつかなかった」。
合弁企業とは一体なんだったのか?
この企業は90年代前半、中国の大手国有企業との合弁で家電製品の生産拠点を設立した。当時、日本はバブルの余韻があった頃で、どこかに投資したくて仕方がない企業が山ほど中国に出てきた。中国はまだ今ほどモノはなく、日本製品のイメージは高かった。この企業の製品も作れば売れる状態だった。
そんな具合で97~98年頃まで、この合弁企業も中国国内販売でかなりの利益を上げた。一定の配当も出した。中国側も日本サイドも満足で、すべてがうまくいくかに見えた。
変調が起きたのは99年。
中国国内の景気が下降気味になったのに加え、中国国内の地場メーカーが急速に力を付けてきた。競合が乱立、合弁企業の半分以下の価格で類似の製品を販売し始めたのだ。この合弁企業が生産していた製品が当時の日本の最先端商品ではなく、中国の国内市場に見合うと判断した普及品だったことも容易に地場メーカーの追い上げを許す一因となった。
高賃金は内部に原因が
だが原因はそれだけではなかった。内部にも大きな問題を抱えていた。
この合弁企業は発足に際してパートナーの国有企業から大量の従業員を引き継いでいた。そうした古参従業員の高年齢化がしだいに進み、国有企業時代の年功的な賃金体系をひきずっていたために水準が上昇していた。このことが合弁の競争力をみるみる削いでいった。
同社の現場ワーカーの賃金は月額1300~1500元程度(注:当時)。おまけに国有企業時代からの意識が残り、労働者としての権利意識が強い。市場経済の世界では当然のことと考えられている生産性向上の取り組みにも積極的でなかった。
現実に、このクラスのワーカーなら、自社で直接雇用せず、公的機関傘下の派遣会社による労務派遣などの手法を使えば、華東地域でも月に600~800元程度(同)で雇用が可能だ。それを2倍近い雇用コストを負担していたのでは競争にならないのも当然だった。
では解雇すればいいではないか、というかもしれない。だがそれも不可能である。
それはなぜかというと、この合弁企業の引き受けた従業員たちは、国有企業時代の無期限労働契約、要するに終身雇用の契約を既得権として持っているからだ。
現在では中国でも新たに雇用契約を結ぶ場合、期限付きの雇用契約が当然になっているが、国有企業の従業員を引き継ぐ形で雇用した場合、往々にしてこうした過去の契約をひきずっている場合がある。これは明らかに合弁契約時の勉強不足によるものだが、契約してしまった以上はいまさら解雇もできない。
とにかくこれではどうにも手の打ちようがないから、「1人ずつ粘り強く説得して辞めてもらうしかない」(日本人総経理)と悲壮な覚悟を決めているが、何年かかるかわからない。
1000人単位で抱える日系企業も
こうした終身雇用の権利付き労働者の数はこの合弁企業では200人ほどで、全体に占める比率は高くはないが、別の上海近郊のある日系部品メーカーでは1000人単位で同種の「クビにできない高賃金ワーカー」を抱えており、人事担当者は「もはやお手上げ」とサジを投げている。
あまり対外的に大きな声では言わないが、実は今でもこうした悩みを抱える日系合弁企業は少なくないのが現実だ。
(この続きはまた次回に書きます)
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登録日:2006年 04月 25日 23:26:15
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- プロフィール
- 田中 信彦
- (男)
- http://chinahr.way-nifty.com/
- 1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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