「賃上げできない合弁企業」 検証 日中合弁とは何だったのか(2)
【西安/中国 25日 AFP】中国北部陝西(Shaanxi)省西安(Xian)で、インターネット上のチャットルームで女性を使って被害者をおびき寄せた上、強盗や脅迫を働いていた犯罪組織を逮捕した。中国政府からの削除命令を受け、香港のインターネット会社Tom.comは最近、「有害」なコンテンツを削除した。削除されたコンテンツは同社の中国本土におけるウェブサイト掲載内容の4割に当たる。写真は24日、警察が公開した、犯罪組織からの押収品。(c)Getty Images/AFP
「クビを切れない日系合弁」とは逆のパターンもある。
ある日系機械メーカーの合弁企業は、従業員の大半が理工系の学卒以上の高学歴人材だ。近年の外国企業の進出ラッシュで人材獲得競争は激しく、賃金相場は急上昇している。ところが合弁相手の大型国有企業は賃上げに応じない。
それはなぜか。
というのは、この国有企業では、自社からの出向者を日中合弁に数多く送り込んでいるため、本体との給与の格差が大きくなりすぎるとバランスが取れないからだ。そのためこの合弁企業では思うように賃金が調整できず、相場との乖離が徐々に大きくなっている。
昨年あたりからは、高い賃金や福利厚生を武器にした欧米系企業による引き抜きが急増、防ぐに防ぎきれない状況だ。空いた穴を補充しようにも採用が思うに任せない状態が続いている。
おまけに中国の人事や労務の世界は独自の法律や雇用慣行も多く、中国語ができて中国社会に対する深い理解がないと、なかなか仕事をこなせない。この合弁企業では人事の事務はほぼ中国側に丸投げの状態である。日本側の経営者は大胆な人事制度改革の必要は感じているものの、改革の主導権を握るには、まず百戦錬磨の中国側と渡り合って人事制度を取り仕切れる人材が必要だ。そんな人がおいそれと社内にいるわけはない。
では思い切って合弁を解消し、独資として再出発するか。それには相手先との激しい摩擦が予想されるうえ、中国事情に疎く、出先の言うことを信用していない日本の本社との交渉を考えただけで頭が痛くなる。そんなことで明確な態度を決めきれないまま人材の流出に手が続いている状況だ。
社内の指揮系統がズタズタに
またあるOA機器の日系合弁メーカーは、社内の指揮系統がズタズタで分断状態に陥っている。合弁先の国有企業出身の幹部と、合弁発足時以降に日本側が主導権を持って採用した幹部が互いに反目し、どこの部署にも部長が2人、課長が2人という異常事態。こうした状態が日常化し、まともな意思決定ができない状況が続いている。
合弁解消の動きも出てきた。
ある上海近郊の日系家電メーカーの合弁企業は、董事会(役員会と株主総会の機能を兼ね備えた最高意志決定機関)での議論の煩雑さ、絶えない労務問題、利益処分に対する考え方の違いなどから合弁解消を決意。恐る恐る中国側に提案した。
合弁相手の激しい抵抗は不可避で、厳しい交渉を予想していた。
しかし、交渉は意に反してスムーズに進んだ。ある中国側の担当者が言う。
「日本製品のイメージも昔ほど高くないし、もうこの製品には魅力的な市場じゃない。親会社に技術や経営ノウハウは蓄積できたし、儲からない会社に資金を置いておくのはもったいない。もっと儲かる事業はいくらでもある」。
要するに日本企業との合弁はもはや「用済み」で、日本側の申し出にこれ幸いと同意したというわけだった。
結局、中国側国有企業の持ち株をすべて日本の本社が買い取り、日本の「独資化」することで話し合いは決着した。譲渡価格は公表されていないが、「出資額のほぼ3倍ぐらい」(日本側担当者)という。国有企業側にしてみれば、もともとタダ同然の土地や社員を現物出資して、日本ブランドの製品を生産して合弁期間のうちに一定の配当も得たうえに、出資した現物は10年後に3倍の値段で売れたのだから、かなりうまい取引だったと言っていいだろう。
日系企業はうまく手玉に取られたという感じである。なぜこんなことになってしまうのか?
(この続きはまた次回に書きます)
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登録日:2006年 05月 01日 02:22:02
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- プロフィール
- 田中 信彦
- (男)
- http://chinahr.way-nifty.com/
- 1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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