「月光族」 中国で増殖する現代版刹那的人生

世界一危険な道路、ドライバーの強引な運転が原因 - 中国

【北京/中国 28日 AFP】自動車市場の急成長で、中国の道路は世界一危険な場所となった。経験不足と強引な運転が多いためと見られる。写真は北京(Beijing)で27日、3台の追突事故を起こしたドライバーから話を聞く交通警察官。(c)AFP/Frederic J. BROWN

AFPBB News


「月光族」といっても闇夜に行動する夜行性の人々を指すわけではない。ここでいう「光」は「吃光」(食べ尽くす)とか「売光」(売り切れ)などと同様、「すべて~し尽くす」という意味。つまり「(かなりの高所得があるのに)毎月の収入をすべてその月に使い切ってしまう人々」のことを指す。近年、若い世代の金銭感覚が大きく変化してきていることを表した言葉だ。

中国語の「光」というこの用例については、日本人の一定年齢以上の人にとっては「三光政策」という言葉がなじみ深いかもしれない。「三光政策」というのは、「日中戦争中、日本軍の残虐な戦術に対する中国側の呼称。三光とは、殺光(殺しつくすこと)槍光(略奪しつくすこと)焼光(焼きはらうこと)のこと」(大辞林 第二版 三省堂)で、つまりこの場合の「光」は「~し尽くす」という意味を表している。 入れ物の中に何もなくなって、光り輝くぐらいすっからかんになる、という視覚的イメージから来ている(のだと思う)。

近年、中国の経済成長にともなって、都市部では有名企業のホワイトカラーを中心に安定的に高い収入を得る人々が急増している。それなりの企業のマネジャークラスになれば、20代後半から30代そこそこで月収5000元、場合によっては1万元を超える人も珍しくない。夫婦で会社勤めをしていれば、月収で2万元、日本円にして30万円ぐらいの収入のある人が上海あたりでは相当数にのぼると考えていい。

しかしこうした人々のうち、収入も高い一方で消費も多く、中には借金をしてまでし高品質の生活スタイルを追い求める一群の人々がいる。「入りも多いが出も多い。翌月の給料日前には一銭もお金が残っていない」。つまり収入のほとんどすべてをその月に使い尽くしてしまう。そういうライフスタイルが「月光族」の特徴である。

マンションに車のローン、海外旅行にノートパソコン

上海市内の男性Aさんは31歳。外資系企業勤務で月収は8000元。市内の高級マンションに住み、マイカーを持っている。収入は同世代の中でも高い方だが、いつも給料日前になるとほとんどお金がない。

まずマンションのローンが月3000元。車のローンが1000元、そのほかに駐車場代やガソリン代など車の維持費も数百元かかる。着ているスーツはブランド物だし、携帯電話は常に最新型、ノートパソコンも買い換えたばかり。両親にも折りを見てはそれなりの金額を渡すのは中国人の間ではごく当然のこととされている。友人たちとお洒落なクラブにも出入りしていて、春節休みにタイのバンコクに旅行に行ってきたところだ。今の暮らしを楽しみたいので当分結婚する気はない。

 同じく上海市内のBさんは29歳の女性。市内の民営企業勤務で月収は5000元。両親と同居しているので家賃や食費はかからない。収入はすべて自分のために使う。毎月、海外ブランドの化粧品と洋服で収入の半分は消え、そのほか友人たちとの食事やお茶、年に数回の旅行などで収入は全て使い切ってしまう。それどころか給料では足りず両親に援助してもらうこともある。

 「月光族」が増える背景には当然ながら持続する経済成長がある。

 子供の頃から社会はずっと豊かになり続けてきた。今後の成長を疑わないから、節約して貯蓄しようという発想がない。どうせ貯金をしたところで、長期的には物価の上昇で貨幣価値は目減りすることが目に見えている。
 加えて、市場には魅力的な商品やサービスの情報で溢れている。お金さえあれば何でも手に入るのだ。将来のことより、今を楽しく生きたい。両親はまだ元気だから、いざとなったら転がり込めば何とか生活はできる。もちろんカッコいい生活をして人に自慢したいという虚栄心もある。こうした条件が「月光族」を増殖させる。

 もちろん自分で稼いだお金だから、どんな使い方をしようとそれは自由だ。しかしあまりに楽観的で計画性のない生活を送るクセがついてしまうと、後の暮らしが心配ではある。会社で責任あるポジションに着いたり、家庭を持って子供を育てたりとなれば「その日暮らし」というわけにもいかないだろう。ある程度の蓄えを持つなど、資産計画はどうしても必要になる。

とはいえ、人はある程度はぜいたくもしないと、新しい発想や創造力も生まれないことも間違いない。人生には投資と回収のバランスが大事で、自己投資を削って蓄財ばかりをしていれば安心というものでもない。そういう観点で見れば、収入を使い切ってしまうことイコール「浪費」とも決めつけられない。

 社会が豊かになれば人の生き方も多様化する。浪費癖に見えやすい「月光族」に上の世代からの風当たりは強いが、もしかするとさほど心配するほどのことはないのかもしれない。

カテゴリー[ 中国社会 ], コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2006年 06月 30日 00:36:55

コメント

化粧品のいいものを探してこちらまできました!
なんだか化粧品って色々あってなやんじゃうんですよねぇ・・・
参考にさせてもらいます!

ビーグレン @ 2009年 08月 17日 17:16:49

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プロフィール
田中 信彦
(男)
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1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。
毎日新聞社記者を経て、日本と上海の両方に活動拠点を持ち、企業の中国事業に対するコンサルティングに従事するほか、雑誌等への執筆、講演など多数。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科で「日中人事・労務比較論」を講義している。
■主な著書
「中国で成功する人事 失敗する人事」(日本経済新聞社)・「人事・採用の基礎知識--中国編」(メディアファクトリー)・「ぼくの上海行商紀行」(文藝春秋)・「日本人の知らない中国人の私的事情」(講談社)
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