「つながり」を求めた演奏
ほとんど偶然にという具合で夕べ、渋谷の富ヶ谷で素晴らしいジャズピアノの演奏を聴いた。イタリアのピアニスト、チェーザレ・ピッコのソロ演奏会だった。会場に着いたのが遅れて、最初はホールでマイク越しに聞こえてきて、何となくちょっと退屈しそうかも、などと思ったのだが、中に入って生の音を聴くうちにどんどん引きずり込まれてしまった。
澄んでいるのに微妙に揺れる高音。多分シャイで、「うたう」ことを抑えようとしているのに、思いの激しさがそれを裏切ってしまう、でもまあいいか……という感じ。かなりビートを利かせているのに、押し付けがましくはしたくない、との思いがにじむ低音部。そんな葛藤をはらんだ演奏が、新鮮で熱く心に響いた。もうずいぶん昔にキース・ジャレットやチック・コリアを初めて聴いた時いらいの驚きかな、と思った。
といっても、この演奏はキース・ジャレットのようにワイルドな激しさとも違うし、チック・コリアの端正な透明さとも違う。テクニックは相当高いが、人を驚かすような独創性とか演奏技術とかというわけではない。チェーザレは自分が徹底的に誠実であることによって、聴く側の人々とのつながりを求めている、という気がした。
彼の意図とはちょっと外れるかもしれないけれど、だから新鮮で驚いてしまったのだ。ファッションの世界でもそうだし、アートでも、メディアの世界でも、どんな優れたクリエーションだったとしても作り手が一方的に送りつける時代は終わろうとしているのではないか。チェーザレの演奏はそんなことを思わせた。
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登録日:2007年 12月 26日 19:23:04
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