●ミュージアムの指定管理者制度はケースバイケース

以下は日経新聞から抜粋引用。
私のコメントもある。要は都市部での指定管理者制度は、プールやホールには向いても、コレクションや企画に精通したスタッフを自前で維持すべき美術館・博物館・動物園などには向かないことが多い。こういう施設は民営化はありえないし、さりとて直営は非効率。独立行政法人という選択肢や財団による運営がおそらく正解(その際には、天下り理事会の整理、民間人によるガバナンス改革、労使関係の正常化が大前提だが)。
ーーーーーーーーーーーーー
「公立ミュージアム 指定管理見直し 最適な運営探る。地域の特性や規模に対応」

公立の美術館・博物館に指定管理者制度が導入されて三年。運用を見直す動きが全国の自治体に広がり始めた。廃止や変更に踏み切る事例が相次いでいるほか,独立行政法人化といった代替方式を模索するケースも現れた。ミュージアムに最適な運営方法が改めて問われている。
・・・北海道伊達市に立つ市立宮尾登美子文学記念館。市は地元のNPO法人,だて観光協会を指定管理者に選び,運営を任せてきたが,今年度から直営に切り替えた。
 理由は,館の設置目的を従来の観光客誘致から,市民のための文化施設へと大きく変換したためだ。「市全体で文化を柱にした街づくりを進めたい。その拠点となる施設は直営が望ましいと判断した」と山崎博司・商工観光水産課長は言う。・・・市は館の位置づけ自体が誤っていたとして,管轄を観光担当の経済環境部から教育委員会に移管。同委員会の組織で市の文化事業を担う噴火湾文化研究所に委ねた。大島直行所長は「本当の意味の文学館を目指し,十年,二十年先を見据えた企画に取り組む」と話す。
・・・昨年,文化庁の調査によれば,回答した公立館550のうち,全体の17%にあたる93館が(指定管理者制度を)導入していた。
 その一方,運営主体を数年ごとに選び直す仕組みは,継続的な研究や企画,人材育成を必要とする美術館・博物館にはなじまないという主張も以前からある。・・・栃木県足利市は・・・来年度の管理者更新を機に,直営に戻すことを決めた。・・・「継続して運営できる保証がなければ市民の信頼は得にくくなる。作品寄贈や寄託が減る恐れを感じていた」と足利市立美術館の吉田哲也館長は語る。長野県も06年度から長野県信濃美術館に(指定管理者制度を)導入してきたが,来年度の管理者更新期には業者を公募しないことにした。当面は,現在の県文化振興事業団を管理者に指定し続ける方針だ。
・・・慶応大学の上山信一教授は「運営形態は各自治体が地域や施設の特性,規模などに応じて,ケース・バイ・ケースで考えるべきだ」と話す。重用なのは「優秀な人材を確保できる形態を選ぶこと」。・・・「直営に戻すから改革後退というものでもない」
 これまで自治体は施設の特性や人材確保より越すと削減効果を狙って,指定管理者制度に飛びついた側面があった。直営への揺り戻しといった“反省”を経て,個々の美術館・博物館に見合う運営方式を選ぶ機運が生まれてきたともいえる。・・・・・(文化部 小川敦生,白木緑,舘野真治)

カテゴリー[ 行政改革 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 07月 23日 00:49:22

●地域再生戦略を問い直す(4/5)

つづき
4. 「地方」のビジネスモデルとその破綻
(1)従来モデル
・農林水産品と人材の見返りに自治体へ資金還流(交付税、補助金、公共事業)
 地方経済はかなり都市に依存する。 従来のモデルは、農林水産品と若い人材を地方で育てて都会に提供した。見返りとして都市は自治体に地方交付税や補助金や公共事業を出してきた。これは「形を変えた仕送り」である。公共事業が批判されながらも続いてきた本当理由はこれである。「米と人材をやったじゃないか、何かよこせ」と。これはこれで説得力のある主張だった
(2)近年の破綻
 しかし今やこのモデルが破綻した。政府は財政危機で金がない。企業はアジアに投資を向ける。そして農産物の価格は下がる。輸入に代わるというより、輸入ものがあまりにも安くて国内品価格まで下落する。出荷はしても単価が下がり売上が減少する。
 地場産業のサービス業にも全国プレーヤーが参入する。駅前の旅館がある日、大手全国チェーンに買収されてしまう。飲食業もファストフードに変わる。売上は全部本社のある東京にいってしまう。地方ではある種の植民地経済化が起きている。最近の地方は、一方的に食糧と人材を出すばかりで得るものがない。かつての「仕送り論」も政治家や官僚が田舎出身でなくなると通らなくなってきた。
 5. これからの地方のビジネスモデル
 これからの地域経営のビジネスモデルはブロックとエリアの2つの単位で考える。
 (1)「ブロック経営」 :国際競争を視野に
 例えば関西道戦略ブロック。道州くらいの大きさだがこれは国家の再生戦略づくりに近い。大きく稼ぐ話、地域競争はこういうサイズで考える。
 (2)「エリア経営」:地域の持続可能性を追求。
 一方、暮らしの基本の持続可能性や行政サービスなどはもっと小さな単位、エリアで考える。これは米の取れない地域が先進的。米がとれる地域は頑張らない。
 たとえば熊本の黒川温泉。小さな旅館が集積したところで温泉地のランキングでいつもトップクラス。大規模旅館がなくて家族サービスで、露天風呂をはしごして回る。全体の街並みが江戸時代の旅籠屋のような雰囲気で、家族でゆっくりくつろげる。ハイタッチな雰囲気で楽しめる。葛巻は岩手の山奥でやはり米がとれない。牛乳、乳製品など。大分の大山。ここも米がとれなくて、ハーブだとか果物。馬路村は有名な高知の山奥でゆずの加工品で頑張っている。徳島の上勝町は添えもの。料亭などで使うきれいな葉っぱを年寄りが作る。おじいさん、おばあさんも納税する。綾町は宮崎で有機農法でうまくいっている。
 要は全部米がとれない地区。米がとれると国からの補助金がもらえるし、米の農業は楽なので兼業農家になってしまう。米がとれない地域でがんばっている例を見るとこれからのあるべき姿が見える。
 さて、こうした地域がどこから売上を上げているのか。三大都市圏の富裕層の個人の財布からである。黒川温泉には全国のお金持ちが個人で旅行をする、団体旅行は少ない。ブランド野菜も料亭や有機野菜の好きな富裕層向け。単価が高くて、こだわり系の消費者にピンポイントして売上を上げていく。全国の地方の全てがこうしたものだけで食えるわけはないが先端的、本質的な現象がここに出てきている。
・国内資産:政府=▲1000兆円、企業=海外投資志向、家計=1400兆円
 都市圏の富裕層がなぜ重要か。政府は赤字で企業は儲かっている企業の多くが海外投資志向。一方、家計は1,400兆円のプラスで半分以上が都会の個人。特に中高年の富裕層。その人たちの関心事は安全な食べ物、学習機会、観光、医療・健康といった分野。そういった分野にうまくマッチする野菜、温泉、牛乳などをストーリー性をつくって出していく。
 人口5,000人とかその程度のまちなら都会の富裕層向けに売上20億円ぐらいのビジネスができれば、地域全体が持続可能になっていく。その程度のものを各地域で少しずつ作ればいい。
・食、観光、医療などで個人需要で付加価値、ストーリー性の高いもの
 どこの地域にも何らかの地域資源がある。たとえばブランド野菜。おじいさん、おばあさんが作ってたまに給食に出したりしているけれども、東京には出していないような伝統野菜がある。あとは美術館、博物館、お寺、神社、そして産業遺産だったり。ヨーロッパを見るとそういうものを掘り起こして地場産業にしている。食べ物と文化的なものというのが多いですが、突き詰めると観光と農業の2つ。そこにつなげてちょっとしたビジネスを作っていく。
 大企業の工場があったほうがGDPは増える。米も大事だ。だが問題は持続可能性。従来の米や公共事業などの落ち込みを補うプラスアルファと考えるべきだ。

・地域中核都市の消費需要は意外に大きい(例、地方牛乳)

 もう一つ忘れていけないのが、地域中核都市の消費者需要。たとえば岩手県にとって盛岡というのは非常に大きな存在で、盛岡でモノが売れれば、農家も安定してやっていける。 いきなり東京や全国向けではなく熊本県における熊本、岡山県における岡山、そういった中核都市に対してうまくモノが売れる環境をつくる。中核都市には東京との「貿易」を中心に考えて、周辺地域と一緒に栄える発想があまりない。周辺を含めてトータルで持ち上げていく発想が必要だ。中核地域都市の再生戦略の役割は非常に大きい。そこがしっかりすれば周辺地域はけっこうやっていける。
 
6. 「再生の秘訣」とは?
 (1)20-80の法則(例:産直と農協、個人と団体、爺婆と夫婦)

 「会社の大事な仕事は2割の社員がしていて8割は遊んでいる」というのは、よく言われる話である。あるいは、「大事な話は2割で、残りの8割は聞かなくてもいい程度の話だ」とか。地域再生にも20-80の法則がある。従来のビジネスモデル、米や公共事業が80。農協から出して売る仕事や米作は否定しない。大企業の工場の仕事も否定するわけではない。しかし、そちらのは8割ぐらいにとどめる。残りの2割の部分を産直野菜、富裕層個人向けのビジネスでやっていく。旅館も団体旅行で8割を維持して2割を個人にシフトしていけばいい。
 家計で言うと若い夫婦で8割稼ぐ。しかしおじいさん、おばあさんも年金だけじゃなくて、残りの2割部分を自分で野菜を作って道の駅に出して稼ぐ。これをやるだけで持続可能になってくる。世の中には過激な人がいて「農協を廃止して全部有機農業、産直にせよ」などという意見もあるがそれは現実的ではない。2割ぐらいはそういう世界、8割ぐらいは従来型でいい。(つづく)

カテゴリー[ 地域再生 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 07月 19日 05:57:11

●裏金調査の不備と責任(大阪市役所)

以下は読売。緩みっぱなしの大阪市役所。先月5日に確か柏木副市長を委員長とする「調査委員会」が「もうこれでおしまい。大丈夫」と幕引きをしたはずだが、まだ裏金があった。そもそも庁内幹部が集まる委員会の調査など機能しないと多くの職員が指摘していた。案の定の結末である。これはもう「市長就任以前の問題」ではない。今の市役所には課題解決能力がないということの象徴であり、明らかな失政である。
 そもそも、身内に甘い大阪市役所で庁内職員による調査委員会など機能するはずが無い。専門委員 として弁護士 佐藤 信昭氏、公認会計士 大西 寛文氏が加わっているがどういう役割を果たされたのか。この委員会、議事録も概要しか公開されていない。もともと市民をなめきった調査体制である。委員長が副市長という時代錯誤がなぜ起きるのか。なぜプレスもそれを問題視しなかったのか?
 柏木委員会はどこまで真剣に調査したのか。委員会と事務局の作業体制と作業時間を公開すべきだ。3年前の厚遇問題のときは、大平助役を筆頭に外部委員が自らヒアリングをし、毎日記者会見した。徹底調査にこだわり、外郭団体の現場まで抜き打ち訪問、数々の不正を摘発した。問題を絶対に根絶するという関市長の壮絶な決意の元、職員も一丸となって連日連夜、週末も返上して調査をした。最近の大阪市役所にはあのような気迫がまったく感じられない。プレスも含めて緩みっぱなし・・いったいどうしたことだろうか。
ーーーーーーーーーー
大阪市の裏金隠し、計251万円に 「上司が口止め」
 大阪市の浪速、東住吉両区役所で新たな裏金が判明した問題で、市公正職務審査委員会(委員長=辻公雄弁護士)は14日、裏金は両区役所で計約251万円に上るとして、市に調査するよう勧告した。市全体の裏金総額は約7億727万円に達し、全庁調査時に「上司から口止めされた」と組織ぐるみで隠ぺい工作を行っていたと証言する担当者もいた。平松邦夫市長は、〈裏金隠し〉の実態について全容解明を目指すとともに、他の区役所の歴代担当者らを対象に再調査を行う考えを示した。同委員会によると、東住吉区には、2002年4月以降の裏金を管理していた通帳が2冊あり、入金総額は106万円を超えた。地域団体の総会の祝い金などに計35万円が支出されたという記録が残されていた。浪速区の通帳には1998年10月以降、計145万円の入金記録があった。裏金口座の解約時には浪速区で75万円、東住吉区で71万円の現金が残っていたが、両区の担当者は「区の総務課に引き継いだ」と証言。ところが、両区の総務課は引き継ぎを受けたことを否定し、計146万円が所在不明になっている。同委員会は「私的に流用された疑いがある」として市に調査するよう求めた。一方、「上司からの口止め」を証言したのは、通帳などを保管していた東住吉区の担当者。上司は口止めを否定しているという。勧告後、平松市長は記者会見で「裏金を隠していた職員がいることに強い憤りを感じる」と述べた。
(2008年7月15日 読売新聞)

カテゴリー[ 大阪市改革 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 07月 15日 09:31:16

●進化する日本のポピュリズム政治

進化する日本のポピュリズム政治――「混迷」ではなく「成熟」と見るべき

 景気の先行きが不透明なこともあって日本の未来を悲観する論調が支配的だ。有識
者は軒並み、日銀総裁人事問題などを例にとり「政治が機能しない。日本は世界から
遅れて存在感も薄れつつある」と嘆く。だが、本当に日本は停滞しているのか。筆者
はそう思わない。むしろ社会も政治も熟成の域に達し始めたと思う。

■西日本から始まるオトナの政治意識

 日本人の政治意識は着実に進化している。象徴的な出来事が昨年の滋賀県の新幹線
新駅問題、東国原知事の活躍、そして今年の大阪府の橋下改革である。従来なら「ば
ら撒き」をしてくれる知事が支持された。ところが今は財政再建を掲げる知事に人気
が集まる。明治維新も西から始まった。大きな構造変化の予兆と見てよいのではない
か。
 一方、中央政界はまるでぱっとしない。政権交代も政界再編も、そして道州制も議
論ばかりで盛り上がらない。しかし政争の争点の質は向上した。特に最近の民主党が
繰り出す争点は筋がよい。小泉政権以後、最近の日銀総裁問題まではまだまだ揚げ足
取りのテーマが多かった。しかし、(1)インド洋給油問題、(2)年金記録問題、(3)ガ
ソリン税問題などはいずれもわかりやすいテーマであり、かつ国民に政治の役割を考
えさせる格好の題材だった。それぞれが、(1)日米安保体制と自主外交、(2)老後の保
障と国家の役割、(3)公共事業のあり方と税負担、を考える格好の教材となった。
■バッシングから政策ポピュリズムへ
 最近のわが国の政治は「ポピュリズム政治」だとしばしば批判される。確かに人気
取りの政策は多い。だが従来のポピュリズム政治では「官僚」「族議員」「守旧派」
「既得権益勢力」「悪徳事業者」などヒトのバッシングが多かった。マスコミと政治
家が一緒になって仮想敵を設定する。そして「彼らが悪い。だから改革だ」と主張し
た。国民も改革者を水戸黄門的存在と捉え、彼(彼女)が悪代官を征伐するのを期待
した。省庁再編、道路、郵政はいずれもこの構図だった。
 だが最近はヒトのバッシングよりも政策がポピュリズムの対象に変わりつつある。
ガソリン税問題が典型である。多くの人がスタンドのガソリン価格の変動に政治の息
吹を感じた。政治のあり方が個人の財布に直結するとみんな学習した。
 ガソリン税問題だけでない。後期高齢者医療保険や年金問題など個人の生活に直結
するお金を巡る政策論争が起きている。最近の政策ポピュリズムは国民の財布の中に
入ってきたといってよい。背景には財政危機が政治を進化させたという事情がある。
金がなければバラ撒き合戦はできない。むしろ政策の優先順位をめぐる論争になる。
ついにわが国でも政策の選択がポピュリズムの対象になりつつある。結構なことでは
ないか。
 進化といえば二院制の「ねじれ」もそうだ。あれは政権交代のある国ではいつでも
起こりうる現象であり、原理的にも不思議ではない。だが今までの日本にはなかっ
た。「ねじれ」は明らかに政権交代の予兆である。そして国民の政治意識が成熟した
証拠である。日本は外から見れば混迷度を高めているように見える。だが内面では成熟の度合いを高めている。動いていないようでいて実は日本は動いている。だが成熟の姿が捉えにくいだけなのだ。

カテゴリー[ 行政改革 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 07月 11日 07:08:11

●地域、行政、大学が連携・・京都のまんがミュージアム

以下は日経。
 明治初期に京都の市民は自らの力で小学校を作った。その伝統は学区住民に受け継がれ、学校統合跡の活用でも遺憾なく発揮された。モデルは「京都国際マンガミュージアム」だ。閉校の龍池小(上京第25番組小学校)を改修して一昨年秋開館した。市と京都精華大学の共同事業だが、住民の協力が不可欠だった。同館でこんなやり取りがあった。
 マンガ産業の振興などをテーマに内閣府主催の「大臣と語る」国民対話が開かれた先月29日。会議後担当の岸田文雄・大臣と門川大作・京都市長が懇談した。この時話題になったのが市民の作った小学校。「京都にはお上に依存しない気風が伝統的にある。館の芝生整備にと龍池学区から1000万円の寄付が寄せられた」と市長。同席した上田修三・同館事務局長(52)が「館の施設には幾つか学区専用の部屋もあり、この校長室は共有で使っています」と説明、これを聞いて大臣は目を丸くした。
●入館35万人突破
 図書館(蔵書30万冊)と博物館(調査・研究機能)を一緒にしたマンガの総合施設は全国に例がなく、入館者はこの日、開館1年7カ月で35万人を突破した。館内の廊下や芝生の運動場に世代を超え入館者がのんびりマンガを読む風景が広がる。上田さんは「歴史を刻む学校には心を癒やす不思議な磁力がある。重厚な学校空間でマンガを気楽に楽しめる雰囲気が外国人にも好評で、それが人気の秘密」と言い切る。
 「(1)建物の整備は地元と市、大学の3者協議とし(2)伝統を守り(3)完成後も学区で必要な施設は従来通り使用する――など条件を出し共に汗をかいた。効率や経済原則を優先していたら今の館はなかった」。谷岡英治・龍池学区自治連合会長(74)は明快に語る。民間企業の出身で精華大に籍を置く上田さんと学区代表の谷岡さんは開館前の地元折衝時代からの付き合い。具体化に向け協議は300回を超えたという。
 もとは中央図書館構想があって曲折後、今の館の設置構想が浮上する。谷岡さんらは教育に心血を注いだ先輩を常に念頭に学校再生策を考え行動した。出発点はマンガ図書館だが、「地域の熱意に当時の河合隼雄・文化庁長官らが応援団になってくれ、計画規模も膨らみ、内外に誇る施設ができた」と谷岡さん。
 学校施設は戦前の国民学校令(1941年)まで学区所有だったという。だから「自分たちの学校」意識が強く、閉校(95年)後も地域活動の中心で、どんな変化が起こっても「学校愛は不変」との自負がうかがえた。
・「教育都市の象徴」
 「マンガは世界に誇る日本文化。最先端を担う場にと、館は民・学・公の汗の結晶で誕生した。こうした地域力、文化力、人間力が体感できる環境こそ学校で学べない学びが可能」。教育長時代に館の設置を決めた門川市長は教育都市京都のシンボルにと胸を張る。館の運営はマンガ学部で知られる精華大が受け持つ。大学とネットワークし、開館以来マンガの歴史や外国の作品を紹介する企画展など多彩な事業が数多く具体化され、海外との交流も活発だ。
 こうしたなかで、館と市教委の連携作戦が目を引く。経営者の生きざまを伝記マンガにした「京都モノづくり列伝」は本格教材シリーズの第1弾だ。教育マンガへの道を開くもので、谷岡さんらが登場する「龍池小学校史」や近く発刊予定の「京都学校物語」も学校文化を学ぶモデル作品になっている。「問題はマンガの本質を社会的にどう理解してもらうか。マンガは総合芸術で、社会の事象を見極め、総合する基礎的な学力を磨く格好の教材になる。学校授業への展開は教科書づくりと併せ館の大きな課題」と、マンガ家の吉富康夫・精華大副学長は指摘する。(編集委員 佐藤徳夫)

カテゴリー[ 地域再生 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 07月 08日 09:00:44

●地域再生戦略を問い直す(3/5)

続きです
3. 「再生」で何をめざすのか?
(1)高卒職場、一人当たり所得
 再生で一番大事なのは、高校を卒業した人たちの職場があるかどうかです。職場がなく生活できなければ若者はいなくなります。若者がいなくなると、年寄りも面倒見てもらえなくなるので、引っ越してしまう。
 もう一つ重要なのは、一人当たりの所得が伸びていること。「ここにいると損、よそに行ったほうが得。」と思えばいなくなってしまう。この2つのことが地域再生の条件だと思います。
 これらの条件が揃っていれば、持続可能性はある程度確保できる。
地方は空気がいい。歴史と文化もある。なのになぜ東京にヒトは行くのか。やはり雇用とお金。資産家は例外ですが普通のヒトは暮らしの都合で場所を変える。農家で年収1,000万円というのは九州などに時々あります。親が年収1,000万円あると子供も農業を継ぎます。やはり、職場と所得という条件が非常に重要で、僻地だからだめというわけではない。どういうビジネスが成り立っているかによると思います。

(2)大型チェーン、大手工場の立地は植民地経済化のリスク
 でも職場とお金が揃えばいいというものではない。大手スーパーが来て、大手工場が来れば一応は生活は確立します。しかし、焼き畑農業みたいなもので地元に資本が蓄積されない。地元資本のスーパーとかも倒されたあげくに大型チェーンが数年後いなくなることもある。すると商店街もスーパーも何も残らない。アフリカに行くと米系高級ホテルに現地と隔絶した世界があります。それと同じです。うわべだけの繁栄でしかなく、彼らがいなくなると何もなくなる。そのような状況では、かえって地域力を落としてしまう。そういう意味では、大型スーパーや工場が来たらよいというものではない。

(3)マクロ定説(「少子高齢化」「衰退」)を覆す地域シナリオが欲しい
「少子高齢化と中心市街地の衰退が日本の大きな課題」というのが定説。確かに間違いではない。しかし政府が言ってまわるのは余計なお世話です。地方の若者をわざわざ不安な気持ちにさせる必要は無い。迷惑です。
 政府がたいへんだたいへんだというものだから地方はどこも「うちの地域は例外。未来にはばたくxx町」という嘘ばっかりのシナリオを作る。「うちの地域は東京からもアジアからも近くてすばらしい。真心なら日本一。山も川もきれいだし。万歳xx町」とか「大好きですxx町」といったわけのわからないスローガンを出さざるを得ない。戦略も何もあったものではない。
 おまけに最近は「再生計画」を書くと補助金がくる。それでいっそう無意味な絵を描く。このあほらしさ、そしてわかってそれをやらざるを得ない辛さや切実さは東京にいるとなかなか分からない。なかにはうまくやっている地域もあります。しかし地域再生は非常に難しい仕事です。再生計画以前に担い手問題があり、役場の財政破綻がある。そして再生計画を書いてもそうなるとは限らない。「補助金がもらえるからとにかく書く」という時代になってしまっている。(つづく)

カテゴリー[ 地域再生 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 07月 07日 21:44:13

●大甘、大阪市改革

以下は読売。驚いた、2年前に、改革本部ではこんな制度は設計しなかった。明らかに改革のメルトダウンが起きている。堕ちるところまで一度堕ちないと改革路線には戻れないのだろうか。唯一の朗報は、読売クラブの健在を確認できたこと。市政改革は読売がリードして引っ張ってもらった。先日の日経の論説にあきれ果てていたところだけに勇気付けられる記事でうれしかった。各紙とも厳しくチェックしてほしい。明らかに改革は骨抜きされつつある。記者諸君、玉虫色にだまされるな。
ーーーーーーーーーーーーー
「劣る」「やや劣る」十数人だけ
 勤務成績に応じてボーナスに差をつける新制度を導入した大阪市が30日支給する夏季ボーナスの査定で標準額を下回る「劣る」や「やや劣る」と評価された職員は十数人しかいないことがわかった。市は「適正に評価した」とするが、職員は市長部局だけで約2万7000人を数える大組織とあって、議会から「不祥事も多い中、度を越した甘口採点だ」と疑問の声が上がっている。


 新制度は、課長代理級以上の幹部職員に対して2006年冬の支給分、係長級以下の一般職員には07年冬の支給分から、適用された。士気を高めるのが狙いで、仕事の成果のほか協調性、責任感などの基準で評価し、支給額に最大約30万円の格差が出るという。

 今回のボーナスは平均支給額85万5729円(42・4歳)で昨年に比べ4753円増。評価の内訳をみると、交通局と水道局を除く市長部局の一般職員約2万5000人の場合、3段階で「A(優秀)」39・5%、「B(標準)」60・5%に対し「C(劣る)」はわずか0・03%。約2000人の幹部職員は、5段階で「S(非常に優秀)」9・2%、「A」35・4%、「B」55・2%に対し「C(やや劣る)」は0・3%。「D(劣る)」は該当がなかった。

 市は各ランクの職員数を明らかにしていないが、C評価は十数人にとどまるため、昨年度、カラ残業やマイカー通勤など不祥事で懲戒処分した計705人の職員も、おおむねB以上の評価とみられる。

 市総務局は「Cが極端に少ない印象はあるが、処分を受けても、仕事上の成果があれば評価は上がる。能力、業績を適正に判断している」と説明。一方、自民市議は「なれ合いで甘く評価したとしか思えない。横並びなら制度導入の意味もない」と指摘している。

(2008年6月30日 読売新聞)

カテゴリー[ 大阪市改革 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 07月 02日 23:04:31

●地域再生戦略を問い直す(2/5)

先日の1.の続きです。
2. 「地方」とはどこか?
(1)中心―周縁説
 「地方」は相対的な概念です。東京人は東京以外が地方だと思っています。しかし、大阪など大都市に住んでいる人はそう思っていない。欧米から見ると極東や日本は辺境。そして北京からみても東京は東の辺境都市です。関西人はわが国の中心は歴史上ずっと京都であり、東京など新興ニュータウンにしか過ぎないと本気で思っている。だいたいこのまえの戦争(もちろん応仁の乱のことですが(笑))・・のあと関東がだんだん騒がしくなってちょっと前に天皇陛下もお出かけになった。それでまだ関東におられる。関西人は「よくもまああんながさつな文化不毛の土地に長くおられるな」と心配しながら京都へのお帰りを待っているわけです(笑)。
 さてその東京に比べると大阪は田舎。大阪よりも福岡は田舎で熊本はもっと田舎。そして水俣はもっと田舎。要は地方というのは相対的な概念でしかない。したがって、地方地方と抽象的に言ってもしょうがなくて、現実には地域を特定して、地図の上でここをどうするという議論をする必要があります。
  (2)「地域経営」の現実的単位
地方の議論をする場合、地域経営の単位を考える必要がある。これは、皆さんが事業部の範囲とか、支店の範囲はどこなのかとか、ふだん議論される話しと同じです。経営目的を達成するために経営の単位はどういう範囲がいいのか。現在の制度は都道府県と市町村という二層構造になっています。しかしこれが必ずしも現実的でない。それで道州制、市町村合併が話題になる。
(1)ブロック:①周縁(沖縄 北海道)、②3大都市圏、③道州
 私は地域経営の単位はブロックとエリアの2層に分ける。ブロックというのは道州に近いものですが、道州のように同列ではなく、その性格から3種類ぐらいに分かれます。
 第1は3大都市圏。経済的には自立もできるし、国を支える力も持っている。空気や水は最悪ですが。
 第2は今話題の道州制の地区。しかし、東北、北陸、中国、四国という単位の経済自立はなかなか難しいと思います。NTTやJRのエリアはなかなか合理的にできていて、私は道州制は、本当は東日本、中日本、西日本、九州ぐらいの単位が現実的ではないかと思っています。もちろん政治的にはたぶん10ぐらいの単位になる。
 一旦きっと10になる。しかし財政的に成り立たず、20から30年後に4か5に集約されるにのではないか。
 3つめは沖縄、北海道。あくまで相対的な意味ですが経済自立していく力が強くない周縁地域。しかし日本という巨大国家はこれらがあって成り立つ。全体を支え、防衛上でも重要です。やや荒っぽいたとえですがアメリカにとってのアラスカ、グアム、ハワイと同じかもしれない。大国にはどこの国にもこういう周縁地区が必ずある。沖縄、北海道出身の方がおられたらたいへん失礼な言い方をして申し訳ありませんが経済に着目した地域経営論ではなく政治・軍事の意味も考えるべきです。その地域の固有の価値の論よりも日本全体の都合で議論してしまっているのでその点からも異論があるでしょうがご容赦いただきたい。これらの地域は国際的、全国的な意義を考えて、経済的には中央が支えていく。将来はともかく今まではそういうタイプのエリアだと思います。

(2)エリア:人口数万~50万くらいの生活圏域、通勤通学圏
 
二層目の単位はエリアです。これは専門家が既に研究し尽した分野ですが、人口100万以上の都市は大き過ぎて経営困難です。人口1,2万でも厳しい。地形にもよるが30万とか50万といったエリアが効率がよい。湘南、北摂といった単位です。こういうことを地方再生というときの基本的な単位として頭に入れておいていただいて、再生とは何かという議論に移りたいと思います。(つづく)

カテゴリー[ 地域再生 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 07月 01日 21:11:14

●記事までゆるい玉虫色(大阪市)

以下は日経のコラム記事。分析が浅過ぎないか。それから「見せ方」という職員の言葉はチョー感じ悪い。ほんとに改革の中身が充実しているのだろうか?市民あたりの職員数が福岡の2倍、ウルトラ過剰人員の市役所がさらに賃上げをするというノーテンキさである。市政改革はマイナス100点からの出発だったはずだ。改革の初心はどこにいったのか?
 この記事、いかにも身のまわりの市役所関係者の意見を聞いてそれこそ玉虫色にまとめた風に見える?いったい何を言いたいのか。あちこちに気を使ったらこうなった?プレスの責任として、誰でも抱く以下の疑問にちゃんと答えてほしい。

・新市長は、前市長の改革路線に異を唱えて当選した。だが就任後は、前市長の改革路線を踏襲されているようにみえる。その背景にはどういう事情があるのか。
・地下鉄民営化反対が大きな争点だった。それについて新市長は今はどうお考えなのか?
・前市長の改革を本当に全て踏襲しているのか。何か変えたたことがあるのではないか。
・新たに新市長が打ち出した政策、改革メニューは何か。
・就任後の財政状況などの変化への対応力はどうか。
・労使関係の正常化は進んでいるのか?

 スタイルだの、見せ方だの、橋下との対比だのふわふわした論評にどれだけの価値があるのだろうか。首長は権力者である。その本質を踏まえ、緊張感のある記事を書いていただきたい。市役所が緩んだらプレスも緩む・・・。勉強不足のきわみ!プレスがこうでは話にならない。

<先望鏡>「見せ方」問われる平松市政――改革姿勢、大阪府と比較される宿命
2008/06/23配信
 「玉虫色」。物事などがはっきりせず、どうとでも解釈できることの例えだ。今月19日、就任半年を迎えた大阪市の平松邦夫市長は、自らのカラーをあえてこの「玉虫色」と表現する。
「もちろん悪い意味ではありません。玉虫というのは、光線によって金にも赤にも緑にも見える。1つでなく、すべての『色』を持って、状況に合わせて使いたい」。相手や局面で柔軟に対応するカラーを持ち味にしたいという。この半年間、平松市政に対して市民から聞こえてくるのは「独自色が見えない」「改革が進んでいない」などの声だ。市政改革でいえば、5年間で2250億円を削減する「市政改革マニフェスト」が進んでいることに加え、今月中旬には、公債償還基金の取り崩しをやめ、約1200億円の追加削減をすることを表明。市営地下鉄の民営化問題は白紙に戻されたが、改革全体を見れば、むしろ前進しているといっていい。
 それでも「改革が停滞している」という印象を与えてしまうのは、大阪府の橋下徹知事が全国の注目を集めるほどの、大胆な改革案を短期間に打ち出したためだろう。市に先月寄せられたメールや電話でも「橋下知事は歳出削減の具体的な策を出しているのに、大阪市は何をしているのか」「スピードが遅すぎる。何とも歯がゆい」など、明らかに大阪府と比較した批判、意見が目立つ。
 ある市職員は「同じような改革を進めているのに、『見せ方』の違いで大きな差があるように思われてしまう」とぼやく。大阪市の前には今、様々な壁が立ちはだかる。2回目の破綻の懸念が持たれる大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)など第三セクター問題、裏金など職員不祥事の再発防止、新たな1200億円の財政削減で「聖域ではない」とした人件費削減……。いずれも処理につまずけば、現時点での評価を市長自ら「合格点の60点」とした採点を「落第点」に下げかねない“爆弾”だ。そうした中で、市長が「大事にしている」というのは市民や職員との触れ合い。その対話などから「最善の策」を導き出し、施策に反映させたい思いを持つ。「鳥の目、虫の目」という言葉があるが、府政を俯瞰(ふかん)して大方針を打ち出す橋下流を「鳥の目」だとすれば、地道な積み重ねから結論を探る平松流は「虫の目」といえるかもしれない。だが、府が矢継ぎ早に改革案や施策を打ち出す中で、明確な市の将来像を早急に打ち出せなければ、大阪市政は色のはっきりしない、文字通りの「玉虫色」に埋没する危険もはらむ。府と市という両輪がそれぞれ機能しなければ、大阪の活性化という車は動き出さない。平松市政に投げかけられる「いらだち」や「歯がゆさ」は期待の裏返しでもある。
 「目線を市民に置き、市民の中に入り、新しい明るい大阪を創造してください。負の遺産を早く清算して、未来志向の市政に向かってください」市には最近、こんな意見も寄せられている。

カテゴリー[ 大阪市改革 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 06月 27日 09:18:28

●関市長時代の改革の成果ーー駐車場民間委託

以下は朝日。
大阪市が、外郭団体や職員労組OB団体に任せていた駐車場14カ所の管理業務を民間業者に切り替えたところ、06、07年度の2年間で計約3億円の増収になった。市契約管財局が20日発表した。2倍以上の増収につながった駐車場もある。予想以上の成果に、担当者は「今後も民間委託を進めたい」と喜ぶ。 5兆円を超える借金に悩む市は06年度、増収を図るため、競争を伴わない随意契約などでOB団体などに駐車場管理を委託する方法から、一般競争入札で賃貸料を競わせる方式に切り替えた。 増収幅が最も大きかったのは旧梅田東小跡地の梅田東駐車場(北区、102台)。07年度の賃貸料は1億9150万円で、前年度の2.32倍になった。OB団体が管理していた市役所の地下駐車場(261台)も民間に管理を委ねたところ、同年度に6058万円の使用料が入り、市の収入は2.13倍に増えた。

カテゴリー[ 大阪市改革 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 06月 21日 01:22:32

1   |   2   |   3   |   4   |   5      »      [58]
プロフィール
上山信一
(男)
http://www.pm-forum.org/ueyama/
慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
検索