●大阪府議:意味の深い「記名でノー」

以下は毎日
 徹夜の調整実らず、「ガチンコ勝負」で予算案のみ可決--。大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)への大阪府庁舎移転関連2議案を審議する府議会は、投票による決着となり、WTCへの移転条例案は2月議会に続いて否決。ビル購入予算案は可決される矛盾した結果となった。府庁舎移転条例案の採決を先送りしてWTCを先行取得する自民・民主の方針は「筋が通らない」と批判を招き、26日夜には決着がつかず、27日午後に記名投票にもつれ込んだ末の異例の展開。橋下徹知事は移転案の否決に議場で悔しそうな表情を見せた。【稲垣淳、田辺一城、堀文彦、田中博子】

 投票で決着のついたWTCへの移転条例案。議場で橋下知事は厳しい表情で議員らの発言に聴き入った。否決が決まると、唇をかんだ。

 賛成、反対双方の議員が妥協できるはずだった先行取得案。27日未明にも可決の見通しだったが、会派間の調整が重ねられるたびに混迷の様相を深めた。着地点が見えないまま深夜、未明の調整作業が繰り返された。

 3月の府議会で移転に反対した公明。今議会では「うちの会派だけが突出したくない」(府議の一人)と他会派の動向に気をもんだ。それでも「予算案を通したら知事は何回でも移転案を出してくる」と警戒する声が強く、先行取得案ではまとまらなかったという。

 この展開に、移転案の採決先送りの方針を固めていた自民・民主内にも動揺が出てきた。民主の側に「先送りは不自然だ」との声が強まり、一転して移転案・ビル購入案を同時に採決する選択肢が浮上した。先行取得案にこだわる自民が孤立する事態に「(自民の府議は)かなりあせった様子だった」(他会派の府議)という。

 朝倉秀実議長が動いたのが27日午前4時半ごろ。関係者によると、自民、民主、公明の3幹事長を議長室に呼び出し「あと10分で決めてください」と強い口調で促した。「(先行取得案でまとめるのが)無理なら記名式による投票はどうか」と提案。午前6時ごろには投票の方向が定まり、議長が橋下知事に電話で移転案否決の可能性が高くなることを告げ「分離採決になるが、大丈夫か?」と打診。橋下知事は提案を受け入れ、補正予算案の修正作業を指示した。

 26日午後に開くはずだった総務委は27日午前9時半開会。先送りするはずだった移転条例案は否決になった。想定外の事態の続いた議会だったが、ベテラン府議の一人は「(購入予算案が分離され)本来の姿になった。徹夜で話し合った意味はあった」と疲れた表情で話した。

 ◇冷却期間おき協議を--加茂・立命大教授に聞く
 加茂利男・立命館大大学院教授(政治学)に、WTC移転関連2議案に対する、大阪府議会の対応について聞いた。

 府庁舎の移転は、大阪の都市構造を変えてしまう問題だ。財政難の大阪府にとってリスクの高い計画で、府議会としては慎重にならざるを得ない。今回購入予算案を認めてしまえば、移転への布石ができてしまう。最後の段階で議員の警戒心が働いたのだろう。橋下知事のスタイルは、個性的でインパクトが強い。薬にもなるが毒にもなる。知事は自分のアイデアに基づいて押し切ろうとして、議会との間の亀裂を深めてしまった。

 橋下知事は自らが府民に選ばれている点を強調するが、その点は府議会も同様だ。二元的代表制では、首長と議会は衝突するが、両者は理性を働かせて均衡を保ち、互いに抑制し合うものだ。しかし今回は府庁舎移転という自らのアイデアに夢中になった知事に対し、議会は抑制機能を働かせることができなかった。いったん冷却期間をおいて話し合いを尽くすべきだろう。

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 ■解説

 ◇意義大きい「記名でノー」
 大阪府庁舎のWTC移転計画で、橋下徹知事は関連2議案を否決されながら異例の「再挑戦」を宣言。「反対するなら議会も対案を」と訴えるなど、「劇場型議会」を作り出してきた。今度こそ2議案セットでの可決を目指したが、27日の府議会本会議はビル購入予算案を可決、移転条例案を否決。議会側の反発の根強さを見せつけられた形だ。自民、民主を中心に進んだ「予算案可決、条例案採決先送り」のシナリオは、各方面から批判を浴びた。土壇場で軌道修正し、最終的に記名投票となったのは、府民の「わかりにくい」という当たり前の疑問(民意)に応えた判断として、一定の評価に値する。

 圧倒的な「民意」に支えられた知事は、1年半後に選挙を抱える府議らには脅威だ。そんな中、会派間の調整ではなく、議員一人一人による記名投票という方法で、知事にノーを突き付けた意義は大きい。知事と議会は「妥協の産物」とのそしりを受けぬよう真のまちづくりにつなげる責任がある。【福田隆】

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登録日:2009年 10月 28日 06:39:32

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プロフィール
上山信一
(男)
慶應大学総合政策学部教授。大阪市生まれ54歳。専門は企業・行政機関の経営戦略と組織改革。都市・地域再生も手がける。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。国交省政策評価会(座長)、大阪府と大阪市の特別顧問、新潟市都市政策研究所長、日本公共政策学会理事、各種企業・行政機関の顧問や委員等を兼務。府立豊中高、京大法、米プリンストン大学修士。著作等 ツイッター@ShinichiUeyama
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