●経営戦略に哲学と古典が必要なわけ

 NHKの「白熱教室」(ハーバード、マイケル・サンデル教授)が話題です。先が見えない時代には、強力な哲学や思想が求められています。SFCでもそういう授業が増えています。ところが先日、某大企業の会長が「ITや実学志向のSFCではああいう議論はしないのでしょう」とおっしゃったのは残念です。SFCでも思想や哲学の比重が増えています。ゼミでは古典をよく読むし、ゲストも交えて泊まり込みで思想や哲学について語る授業もあります。先進的であるためには古典や思想は必須なのです。
 
 僕は経営戦略が専門で実学主義者です。しかし2年くらい前(つまりリーマンショックの少し前)から、論理や分析では見えない世界の構造変化が気になり始めました。そこで学生と一緒に古典が展開する思想と哲学から世の中の構造を読み解く授業とゼミをはじめました。「パースぺクティブ(Perspective)」研究会」(成果はhttp://group2050.blogspot.com/)、そして「パブリックガバナンス論」といいます。いずれも少人数で白熱した議論をします

 僕は70年代後半、大学紛争の余熱が残る京大で学びました。マルクスやレーニンからフーコー、インド哲学などおよそ実学から程遠いものを授業やゼミ、研究会で読んだのです。あとはひたすらフィールドワーク。それが京都学派の教育法です。その頃の蓄積は20代ではあまり役にたちませんでした。しかし40代以後の改革の仕事ではずいぶん役立った気がします。
 
 僕のゼミでは重たい古典をガツンとよみます。そのうえで議論を通じて未来をよむのです。時代をリードする経営者や政治家を生み出すには若いうちに歴史、思想、哲学に裏打ちされた世界観を構築してもらうしかないと思います。

 世界はますます先読みしにくく、それでいて9・11事件や金融危機のように薄々の懸念が急に現実化する時代です。社会主義は崩壊したものの、民主主義、官僚制度、資本主義が限界を露呈しています。18世紀末以降の世界秩序を作ってきた国民国家の枠組みも揺らいでいます。そして国家レベルで解決できない課題(地球環境問題、資本主義の暴走など)が噴出しています。 そんな中で未来を考えるには歴史や偉大な思想がたくさんのヒントを出してくれます。

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登録日:2010年 07月 24日 23:55:47

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プロフィール
上山信一
(男)
慶應大学総合政策学部教授。大阪市生まれ54歳。専門は企業・行政機関の経営戦略と組織改革。都市・地域再生も手がける。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。国交省政策評価会(座長)、大阪府と大阪市の特別顧問、新潟市都市政策研究所長、日本公共政策学会理事、各種企業・行政機関の顧問や委員等を兼務。府立豊中高、京大法、米プリンストン大学修士。著作等 ツイッター@ShinichiUeyama
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