●地下鉄民営化、大幅リストラすれば可能(大阪市試算)

以下は朝日新聞(06年12月15日)。
 市営地下鉄・バスの民営化を検討中の大阪市は15日、大幅なリストラや設備投資の削減を行えば、地下鉄事業の株式会社化は「可能」とする試算を公表した。地下鉄単独で来年度に民営化した場合、「事業価値」は約1兆3千億円と、負債の約8千億円を大幅に上回ると算定された。市議会は「あまりにも甘い数字」と反発しているが、財界などが求める完全民営化論議に弾みがつきそうだ。 大阪市営地下鉄は多額の負債に加え、単年度収支も市の補助金約100億円(05年度)がなければ黒字化が難しい状態。市交通局が民営化の可能性について、市内の監査法人に試算を依頼していた。 地下鉄事業では、新規採用を抑えて15年度までに人員650人を削減する現行計画に加え、ワンマン運転や駅業務の外部委託でさらに850人を削減▽車両のリース化などで設備投資額を1割カット――などとした新計画に基づく2通りを試算した。 その結果、現行計画の場合の事業価値も9642億円と負債額を上回り、「株式会社の設立の可能性はある」とされたが、新計画の場合の事業価値は1兆3137億円と負債額を大幅に上回り、当期利益も139億円と現行計画の場合の50億円の倍以上となった。 民営化の際には、それまでの借金を金融機関からの融資で繰り上げ償還する必要があるため、民営化後の事業価値が負債総額を上回るかどうかが注目されていた。 バス事業については、現行計画に加え、人件費の20%削減などを行ったうえで、赤字路線を抱えた場合と、切り離した場合の計3通りを試算した。赤字路線を抱えた2通りでは、いずれも「株式会社化は不可能」とされ、採算路線だけに絞ると当期損益は黒字化するが「経営状況は苦しい」とされた。 市は近く、他の経営形態の試算結果も公表し、今年度中に経営の方向性を決める。大阪市営地下鉄 民営化、議会は慎重論
・以下は2006年12月16日朝日
大阪市が市営地下鉄の完全民営化を条件付きで「可能」とする試算を公表した15日、市議会交通水道委員会では、試算に関する質問が集中した。関淳一市長は将来の事業形態について、改めて06年度中に方向性を決める考えを示したが、議員からは「課題は多く、時間をかけて議論すべきだ」と慎重論が相次いだ。
 「借金8千億円の返済資金を銀行が簡単に貸してくれるのか。見通しが甘過ぎるのではないか」――。市が試算で「何らかの方策により解消される」と仮定した問題が、この日の焦点となった。地下鉄事業が抱える約8千億円の負債は、すべて起債で調達しており、民営化した場合は金融機関から融資を受け、繰り上げ償還する必要がある。リストラに伴う約850人の余剰人員を、職員削減に取り組む市長部局で受け入れられるのかも不透明だ。この日の議会では「完全民営化の試算だけでは不十分」「市営交通は100年の歴史を持つ市民の財産。焦って結論を出す必要はない」などの慎重論が、与野党を問わず大勢を占めた。一方、財政難の市にとって、地下鉄民営化で毎年の補助金負担が無くなるのは、財政再建に大きなプラスだ。市は完全民営化により、新会社からの固定資産税などで年間約60億円の税収も得られる、と分析。駅業務の外部への委託化や車両のリース化などで、経営の効率化も進むとみている。関市長は「拙速な議論は最悪だが、一定のスピード感は必要」と述べるが、市内部も一枚岩ではない。完全民営化のほか、改革型の地方公営企業や地方独立行政法人、公設民営化の可能性も検討しており、岡本勉・交通局長は「試算はあくまで議会や市民に議論してもらう材料。完全民営化を決めたわけではない」と強調した。関市長は昨年12月の市政改革マニフェスト案に、新規路線建設を市が担当し、運行を民間にまかせる地下鉄の公設民営化を盛り込んだ。しかし、関西経済同友会が今年5月、「公設民営では新線建設が野放図に実施される恐れがある」と完全民営化を求める提言を発表。関市長も6月、市議会で「完全民営化も含めたあらゆる可能性を探りたい」と姿勢を転換していた。

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登録日:2006年 12月 16日 00:09:48

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プロフィール
上山信一
(男)
慶應大学総合政策学部教授。大阪市生まれ54歳。専門は企業・行政機関の経営戦略と組織改革。都市・地域再生も手がける。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。国交省政策評価会(座長)、大阪府と大阪市の特別顧問、新潟市都市政策研究所長、日本公共政策学会理事、各種企業・行政機関の顧問や委員等を兼務。府立豊中高、京大法、米プリンストン大学修士。著作等 ツイッター@ShinichiUeyama
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