●福岡市発、全国に広がる自治体職員のTQC運動
「行政改革」は暗い。「不祥事をきっかけに労組と戦い、予算・人員の削減、あるいは公務員制度の改変を断行する」といった悲壮感も漂う。確かに「行革」は大変だ。企業のように「赤字即改革」という共通認識ができない。行政機関では改革の必要性を感じる人たちが少ないのだ。だから首長のリーダーシップに期待するしかないとも言われる。
だが改革とは決して暗くつらいものだけではない。典型が福岡市役所が始めた「DNA運動」である。自治体の体質を遺伝子レベルから変えようという意図に基づく。Dは「できる、からはじめよう」、Nは「納得できる仕事を」、Aは「遊び心を忘れずに」という語呂合わせでもある。 DNA運動では第一線の現場の職員が仲間と一緒に身の回りの仕事のやり方を見直す。いろいろな案を出し、実際にやってみる。試行錯誤を重ね、いつの間にか職場に「日々是改善」の気風が根付き、チームワークで問題解決する文化が根付く。
同種の運動「カイゼン甲子園」に取り組む大阪市役所の例を紹介する。建設局の職員が作業現場に行く途中に放置自転車のある駅前通りがあった。放置自転車の解消は建設局の業務の一つだ。通勤通学の早朝を中心に撤去作業はしていた。だが、これに加え職員有志がこまめに立ち寄り、片づけを始めた。徹底して整理すると決めて2005年10月から始め、やがて対象は当初の4駅から17駅へ拡大。06年12月までに延べ27万台を整理した。そのうち区役所職員や市民も手伝い始める。放置自転車がだんだん減りはじめついにいくつかの駅でゼロになる日が出てきた。
この手法は2000年、に福岡市の経営管理委員会(現在は作業終了し解散)で筆者が発案した。企業はどこでも現場改善活動に取り組んでいる。戦略は脆弱でもTQC(トータル・クオリティ・コントロール)運動をやっていた。
ところが役所にはTQCがなかった。改革は行革本部など「上部機関」に言われしぶしぶやるものとされていた。上から何円、何人が削減すべきか通告される。言われた数字は実態に合わない。何とかつじつま合わせをするが現場のやる気は失せる。かくして自治体行革は形骸化する。
だが現場の公務員はまじめで優秀で改善意欲も旺盛だ。アイディアもある。単にそれを発露する場所がないだけだ。そこで市役所でもTQC運動をと考えた。当時の福岡市役所は大胆だった。「わからない・それならとにかくやってみよう」と実施を決断した。
DNA運動では現場の第一線の職員が発案し自ら工夫する。現場を信じて任せれば「この仕事は無駄だがこっちは強化」といった案が出てくる。行政は企業と異なり競争にさらされない。改革にはトップダウンや外圧は不可欠だ。しかし同時にボトムアップや内発的運動も必要なのだ。
DNA運動のすばらしさはもう一つ。年に一度の発表大会だ。これは「DNAどんたく」と呼ばれる一種のお祭り。各職場が競い合い日頃の運動を市民や市長に披露する。民間審査員も呼ぶ。優秀なチームは表彰する。当初は「行政改革は、やって当然」「お祭り騒ぎは不謹慎」といった批判もあった。だが楽しいし次への意欲も湧く。公務員だって誉められればがんばるし、隣の部署に負けたくない。そしてDNA運動は今や全国に広がりつつある。
例えば、「カイゼン甲子園」(大阪市役所)、「ハマリバ収穫祭」(横浜市役所)、「なごやカップ」(名古屋市役所)、「元気の種コレクション」(札幌市役所)など多くの政令指定市が真似やっている。ほかにも、「はながさ☆ぐらんぷり」(山形市役所)、「ChaChaChaグランプリ」(富士市役所)、「きたかみPing!Pong!Pang!運動」(北上市役所)、「YAAるぞカップ」(尼崎市役所)など多数がある。さらに福井県庁など一部の県庁でもやっている。およそ役所らしくないべたな語呂合わせの運動の名前を並べただけで、福岡市のDNA運動の「DNA(遺伝子)」が継承されていることがわかる。
※全国の自治体の「改善運動」の優秀事例を集めた全国大会が以下のとおり開催される。元祖の福岡市役所をはじめ、最近、大改革に取り組む大阪市役所などの代表が参加。「☆ALL JAPAN☆ ―やまがた☆10(スタート)―」
日時:2007年2月7日(水)会場13:30 開始14:00 終了17:15山形県生涯学習センター『遊学館』ホール 事務局:山形市企画調整課
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登録日:2007年 01月 24日 23:09:39
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- プロフィール
- 上山信一
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- 慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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