●地域力に注目(その1)

「地域力」という言葉を最近よく耳にする。NHKにも『ご近所の底力』という地域力を扱った番組がある。背景には、地縁血縁関係や伝統的な地域コミュニティーの崩壊や財政危機がある。従来、それを担っていた行政も、住民サービスをこれまでのように提供できなくなったという事情もある。
 日頃何気なく住んでいる「地域」―ここには何もないといわれる町でさえ、長く人が住んできた歴史があり、文化がある。あるいは職人やお百姓などさまざまな技能や才能を伝承している人たちが住んでいる。これらはみんな地域の資源であり、「お宝」である。うまく発掘してつないでいけば、街全体の活性化につながる。「地域力」ということばは地域が秘めるこのような潜在力のことをいう。
最近、とりわけ「地域力」が重要だといわれている。背景には3つの事情がある。
第一は、伝統的なコミュニティーの崩壊だ。昔は近所のおじさんが子供達を集めて、川に遊びに連れていってくれた。あるいは近所の一人暮らしのおばあちゃんの面倒をみんなでみた。つまり地域ぐるみでの相互扶助関係が地域にはあった。だが、最近はそういう関係が失われ、孤独死する老人が出てきたり、子供のいじめの問題に気がつかないということが起きている。このような問題を防ぐためには、昔のような人々のつながりを何とかして復活しなくてはいけない。
第二は、コミュニティーの崩壊を補完して福祉や介護などのサービスを提供してきた行政が、財政危機に陥り、もはや補完機能を果たし得なくなった。行政にはもはやお金も人手もない。そこで再び地域に対し「自分達のことはできるだけ自分たちでやってほしい」ということになる。
第三には、主に都市近郊の現象だが団塊の世代が地域に帰ってくる。かつてのモーレツ社員たちが定年を迎える。今まで「会社に住んでいた」といわれる世代が地域コミュニティに戻ってくる。地域で友達をつくり、生きがい、役割を見いだす必要に迫られる。ちなみに彼らは有能だ。大企業などで培ってきた能力は行政の力が弱り、崩壊しつつある伝統的コミュニティーを再生する上で、大きな力になる。(つづく)

カテゴリー[ 地域再生 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2007年 02月 28日 23:05:32

Trackback

この記事に対するトラックバックURL:

プロフィール
上山信一
(男)
http://www.pm-forum.org/ueyama/
慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
検索