●ソーシャル・アントレプレナーとは何か(その2)

私は欧米の社会企業を5つのタイプに分類している。(1)「職業訓練&自立支援型」、(2) 「フェアトレード型」、(3)「環境配慮商品提供型」、(4) 「社会投資促進型」(5) 「オルタナティブバンク型」である。いずれのタイプも多くは一般消費者向けの事業で通常のサービス・商品に「社会的意義」という付加価値を付けて消費者にアピールする。そのことで一般の営利企業との差別化を図り営利企業として成立させる。
 第1は「職業訓練&自立支援型」である。ホームレスや障がい者、無職の青少年などのマイノリティに働く機会を与え自立を促す。例えば、ニューヨーク市でホームレス支援を行う「コモン・グラウンド・コミュニティ(Common Ground Community)」。ここは住居・医療を提供することにとどまらず、自立支援の職業訓練もやる。例えば大手アイスクリームチェーンのベン・アンド・ジェリー(Ben&Jerry)の協力を得てフランチャイズ店を立ち上げ、元ホームレスがアイスクリームを販売する。あるいは「ディーシー・セントラル・キッチン(DC Central Kitchen)」。ここはワシントンDCで余って捨てられる食料を用いて食事をホームレスに提供する。またホームレスに調理技術を教えて就職を促す。この企業では職業訓練を終えて技術や経験を得た元ホームレスの料理人によるケータリングサービスを行い、その売上げが職業訓練事業に回される。
 第2は「フェアトレード型」だ。目的は発展途上国の貧困問題や先進国との格差解消である。例えばマックス・ハベラー(Max Havelaar)はオランダで始まったフェアトレードの認証機関である。ここは一定の条件を満たして生産されたコーヒーやチョコレートなどの農産物に「フェアトレード商品である」というお墨付きを与える。与えられた商品には認証ラベルが付けられそのことを一般消費者に訴える。消費者もそれを確認して商品を買う。認証基準は厳しい。「人間らしい生活を営める賃金か」「強制労働や児童労働がないか」「水を汚していないか」「化学肥料の使用は最低限にか」といった具合だ。我が国にも「第三世界ショップ」がある。
 第3のタイプは「環境配慮商品提供型」である。これは文字通り環境にやさしい商品やサービスを提供する。例えばカリフォルニアで1973年に創業した「バタゴニア(Patagonia)」。登山、釣り、スキー用品の有名企業だ。環境に配慮したアパレルやアウトドア用品をつくり主に米国・欧州・日本で販売する。中にはペットボトルをリサイクルして作ったフリースや無農薬栽培の綿を100%使用した衣類などもある。同社は売り上げの1%を環境保護活動を行う団体に寄付する。これまでに20億円以上の助成金を米国内外の環境保護団体に寄付してきた。
 あるいはベルギーの「エコベール」。石油系成分を一切使わず、環境悪化に影響がある残留物を減らした洗剤を作る。現在では20カ国以上で販売される。
 ちなみに「フェアトレード型」と「環境配慮商品提供型」には共通点がある。いずれも消費者に社会問題の解決に貢献する企業だと訴求する。それによって消費者の共感とブランド・ロイヤリティを獲得し競合との差別化を図る。多くの人が「自分も何か社会貢献したい」と思っている。しかしアクションをとるほどの余裕がない。だがこうした商品を購入すれば少しは貢献できる。だから気持ちが動くのだ。特にコーヒーや洗剤などは消耗品だ。どうせどこかで補充で買う。1度くらい試しにフェアトレード商品を買おうと考える人は多い。後で「割高だ」「おいしくない」と後悔しても寄付したものと考えればすむ。消耗必需品の場合、気軽に試し買いが起きる。
 第4のタイプは「社会投資促進型」。社会責任を果たすのに熱心な企業に投資するよう一般投資家に促す。その観点からの格付けなどを行う。
 第5のタイプは「オルタナティブバンク型」だ。これらはNPOなどを金融面から支援する。通常の金融マーケットから安い資金を調達できないマイノリティや非営利団体向けに融資する。オルタナティブバンクはその理念やビジョンに共感する人々から低コストで無理なく資金調達できる。この点で、実はオルタナティブバンクはフェアトレードと同じ仕組みで成り立っている。

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登録日:2007年 03月 24日 20:58:58

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プロフィール
上山信一
(男)
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慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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