●コムスンの扱い方・・中央青山、日興、東横インに続き

 コムスンが不正請求をしていたという事件の展開、東横インのときと似ている。東横インの場合は、「スピード違反」みたいなものと会見でつぶやき、反省の色が薄い社長の態度が批判された。最後は、涙の会見で幕。世間も許した。
 コムスンの場合、処分逃れのために次々に事務所の廃止や子会社への事業譲渡をスピーディーにこなす同社の姿勢が批判を浴びつつある。スピーディーな経営判断は悪いことではない。だが、顧客や国民一般は納得しない。厚生労働省もそういう行動様式にますます危機感を感じるだろう。ベンチャー企業が米国でゲームのような訴訟合戦を勝ち抜くのとはわけが違う。まず何よりも社内で徹底調査し、再発防止策を説明し、社会責任に関する姿勢を社長が示すことが先だろう。その意味であまりに手回しの良い同社の対応は奇異に写る。
 しかし、一方で厚生労働省も「事実上の廃業勧告かも」と一般人が思うほどの処分を早急にやることの意味をどこまで考えたのか。早急すぎる行政処分は企業にとっては死活問題であり、ユーザーや従業員に混乱を引き起こす。中央青山監査法人の場合、わずかな営業停止処分が解散につながった。金融庁は「まさか解散に追い込まれるとは思っていなかった」といううわさをよくきく。もしそうだとすれば「処分する側」にも責任が問われてしかるべきだ。
 法は社会のためにある。また一罰百戒はいいにしても、廃業に追い込む必要があるのかどうか。アングロサクソンは法に厳しいが、一方で例外も認める。
 規制官庁、官僚が単にまじめに法を執行すると想定外の混乱を起こす場合がある。現場の最前線の情報を入手せずに処分を行えば結局、弱いところ・・従業員や取引先、一般投資家にしわ寄せがいく。規制は命や安全にかかわる場合以外は、弾力的な運用や運用スピードを良く考えるべきだろう。 
 だが弾力運用も疑惑を生む。日興コーディアル証券の例だ。上場廃止がいったん決まったあと撤回。そのあと、シティグループの資本参加の話がでてきた。そして総理の警告を無視するかのように、財務省から東証理事長への天下りも復活。一連の判断の根元の元東芝・西室氏に関し説明不足の批判がある。
 コンプライアンスが重大事になった。処分されるほうだけでなく、するほうにも(そして撤回する場合も)透明性と説明責任が要求される。誰にでも間違いはある。修正と謝罪を受け入れる寛容さも必要だ。魔女狩り的な早計な処分を世論が求めることも危険だ。
以下は毎日新聞。
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コムスン:連結子会社の日本シルバーサービスに譲渡
 訪問介護最大手「コムスン」の親会社のグッドウィル・グループ(東京都港区、GWG)は6日夜、コムスンの全介護サービス事業を、連結子会社の日本シルバーサービスに譲渡するとの基本方針を明らかにした。「お客様へのサービス継続と従業員の雇用の確保を最優先するため」としているが、厚生労働省がこの日に出した新規指定・更新禁止の通知を逃れる可能性もあり、同省で対応を検討している。同省は、コムスンが運営する介護サービス事業所の新規指定・更新禁止を都道府県などに通知し、同社の役員が別会社で介護サービス事業を行うこともできなくなった。しかし、コムスンとは役員が異なる日本シルバーサービス社が運営する形で事業を引き継げば、コムスンの事業継続は可能となる。日本シルバーサービス(東京都目黒区)は1964年6月に設立。資本金は8000万円。GWGの子会社が約93%の株式を取得している。今月15日にコムスン、日本シルバーサービスの株主総会での決議を経て、7月31日に事業譲渡する予定だという。厚生労働省の阿曽沼慎司老健局長は「6日にコムスン社長に通知内容を伝えた時は、別会社への譲渡の件は出なかった。詳細は聞いてみないと分からない」と話している。
◇解説 
全事業の更新と新規申請の禁止という厚労省の通知に、コムスンは関連会社への営業譲渡という手段で対抗した。同社側は「サービス継続が最優先」と主張するが、不正行為についての説明もないままの一方的な宣言では、制度の趣旨に反した脱法的な手法と非難されても仕方ない。そもそもコムスンが、全事業の不許可という事態に陥った原因は、全国の事業所で不正請求などが明らかになった際、処分を逃れるかのように廃止届を次々と出したことにある。そのまま取り消し処分を受けていれば、有料老人ホームなど訪問介護以外の事業は更新禁止を免れていた。傷口を広げたのは、コムスンにほかならない。関連会社への事業譲渡が、利用者保護の観点からも果たして妥当なのか、厚労省は慎重に見極める必要がある。「法律で禁じられていない」といった拙速な判断では、制度に対する国民の信頼も揺るがすことになる。

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登録日:2007年 06月 07日 08:00:42

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プロフィール
上山信一
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慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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