●大阪地下鉄「株式会社化」、市長選の焦点に
以下は朝日新聞
地下鉄民営化は是か非か――。11月18日投開票の大阪市長選で市営地下鉄の将来像が争点に浮上してきた。続投を目指す関淳一市長(72)が「株式会社化」をマニフェストに盛り込み、関西経済界が後押ししたことで一気に議論が熱を帯びた。一方、他の立候補予定者は慎重論を唱え、大阪市議会も反対論が大勢だ。開業から70年あまり。全国初の公営地下鉄が岐路に立っている。
「大阪市が最大株主の株式会社化というのが、一番求められている姿かと思う。それが私の政策として今とるべき道だ」 9月3日の立候補表明会見。関氏は地下鉄民営化に大きく踏み込んだ。 大阪市営地下鉄は1933(昭和8)年開業の全国最初の公営地下鉄だ。そんな歴史のある地下鉄の民営化に関氏がカジを切った理由は、赤字続きの市営地下鉄が急速に業績を回復していることにある。
市営地下鉄は90年から連続して経常赤字を続けてきた。だが、03年度決算で黒字になり、06年度の経常利益は198億円で過去最高に。営業以外の要素も加えた当期利益も211億円で、運営にかかわる補助金89億円を差し引いても100億円を超える黒字となった。減り続けてきた乗客数も05年度から反転し、06年度は前年度比0.6%増の1日あたり約236万3千人。今年度も前年を少し上回る見通しだ。
関市政のブレーン的存在の上山信一・慶応大教授は「民間の出資も呼び込める経営状況になった。民営化にとっては好機だ。大阪市財政の赤字削減にもつながる」と指摘する。
関西経済界にも待望論が強い。関西経済同友会の小嶋淳司代表幹事は「私鉄と地下鉄の連絡がよくなり、関西の広域交通網の確立で地域活性化につながる」と語る。さらに「地下鉄駅構内の余剰スペースの活用やダイヤの拡充など、民間に任せればサービス向上を実感できる」。JR西日本も「ネットワークとしてみた場合、乗り継ぎ時間や料金の割引などで地下鉄の生産性は上げられる」(幹部)と見る。 巨額の財政赤字を抱える市財政にとってもプラスだ。市交通局の試算によると、民営化後10年間の市の負担は敬老パス代などのための743億円にとどまる見通し。これは公営維持の場合の4分の1の計算だ。さらに株式上場で売却益を得ることも可能だ。
◇
ただ、民営化のハードルは決して低くない。一つは市議会の存在だ。
市は公営維持か民営化かについて、今年度末までに市議会との議論を踏まえて結論を出すことになっていた。そこに突然の民営化発言。与党の自民、公明を含め、市議会は反発を強めている。 1日約4億円の運賃収入のある地下鉄は重要な稼ぎ手だ。市議会からは「黒字の地下鉄をなぜ手放すんだ」「公共交通は市民に提供する福祉事業の面もある」などの批判が噴出。多くの職員も同調する。関氏もこうした反発を意識し、マニフェストに「市議会と相談」との文言を入れ、配慮を見せた。 課題はまだある。約7400人いる市交通局職員の処遇だ。同局の1月の試算では、地下鉄・バス一体で民営化した場合で約1430人、地下鉄だけの場合も約850人の余剰人員が生まれる。新会社が駅構内で展開する「駅ナカ」ビジネスや不動産事業にどの程度、職員を活用できるかははっきりしない。 市役所本体での受け入れも難しい。市は10年度までに職員約7千人の削減を目指して新規採用などを抑えている最中。関氏も9月下旬の市議会で「受け入れは極めて困難」と答弁した。 それでも配置転換を拒否する職員は市で受け入れざるを得ない。さらに、新会社に移る職員には退職金を払う必要がある。市の試算では退職金は最大約730億円。約8千億円の「借金」を抱える市交通局には厳しい現実が突きつけられる。 だが、関氏は「次の任期4年が大事だ。ここで株式会社に移行できる体質につくりかえる」と、民営化に意欲を見せる。
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登録日:2007年 10月 09日 22:55:17
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- プロフィール
- 上山信一
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- http://www.pm-forum.org/ueyama/
- 慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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