●エッセー:「壊す改革」と「創る改革」

■これまでの「壊す改革」
わが国はこの20年、「官から民へ」と「小さな政府」をキャッチフレーズに「壊す
改革」に取り組んできた。壊す対象は非効率な巨大官僚機構だ。嚆矢は20年前の国鉄改革。その後、国と自治体の多くの事業・組織が廃止、民営化、独立法人化された。集大成が昨秋の郵政事業の民営化だ。さらに2006年の公益法人制度改革で政府系公益法人が特権的地位を失うことになった。「壊す改革」は以上のような外科的手法だけでない。内科的手法も充実してきた。官僚組織の透明性や内外からの統制・けん制をきかせる方法、たとえば情報公開、政策評価、規制緩和などが整備され、効果を発揮しつつある。
■「壊す」から「創る」へ
だが改革には「壊す」ことと同時に「創る」ことが必要だ。理由は多々ある。第1
に公共分野の中心課題はかつての公共事業や産業振興から年金、教育、福祉分野に移りつつある。こうした分野の課題は官業の廃止や民営化といった経営改革手法だけでは解決できない。第2に官業の受け皿としての民間企業への信頼が揺らいでいる。数々の偽装や不祥事が典型である。第3に「創る改革」を同時に見せれば「壊す改革」への抵抗は柔らぐ。たとえば再就職の道が見えれば人員の整理も進む。さて「創る改革」とは何か。創るべきは第1に新しい「公共」の担い手だ。これま
で官が独占してきた仕事を担う企業、NPO、市民団体などを育てる。そのための制度も揃いつつある。NPOへの法人格賦与、PFI、指定管理者制度など民間が公務に参入する制度が充実しつつある。第2には改革への住民、あるいは受益者の参加である。たとえば郡部の自治体病院や公営バス。弱者の生活基盤であり非効率でも維持すべきだろう。だが行政には人材・資金がない。だとすれば住民が自ら出資、運営をする。地元企業やNPOもできる分野で手伝う。要は官と民、住民が話し合って共同で“公共”を分担する。財政危機が進行する一方で住民はよりきめの細かいサービスを求めている。官僚機構にはもはや対処不可能だ。真の課題は行政の仕事の多くを民間に移すと同時にサービスの質をいかに確保、向上させるかである。「創る改革」とはこの問題を解く作業であり、そこにおいてはこれまでの行政に代わる民の担い手の育成と住民、受益者の参画が鍵となる。
■公共の再構成
これからの行政改革は従来の民営化のような大雑把な上からの改革だけでは立ちゆかない。地域や分野の具体課題に即した行政の解体(壊すこと)と民間の担い手へのバトンタッチ、そして新たな意味での官民の連携と分担の再構築(創ること)が必要である。「創る改革」の過程で官と民、そして住民は本当の意味で対話し対等になり、そして成長する。そしてともに公共を再構築するのである。

カテゴリー[ 改革術 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 02月 13日 09:59:09

Trackback

この記事に対するトラックバックURL:

プロフィール
上山信一
(男)
http://www.pm-forum.org/ueyama/
慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
検索