●大阪府の施設の見直し④:3事例の総括
①②③では大阪府が傘下の財団法人を経由して民間事業者に施設の管理委託を任せた事例を三つ見てきた。三つの事例はいずれもコストの削減効果が大きい上に、施設の稼働率の向上と利用者の拡大ができている。三つの事例を合わせた収支改善効果は年間一・五億円にものぼる。後に制度化される指定管理者制度を早々と先取りした成功事例といえる。だが、先行事例であるがゆえに、施設の維持管理面などでの課題も見えている。必ずしもこの手法が万能ではない。
・本質的な改革には至らず
第一には、施設の保守や修繕を誰がやるかという問題がある。三つのケースはいずれも行政、財団、受託事業者のどこが負担するのか未知の要素があった。受託事業者としては、薄い利益の中で設備の補修コストを出す余裕はない。建物の大きな建て替えや改修であれば、所有者の行政がその費用を出す。だが、中間のグレーゾーンの分野、例えば厨房機器や家具などの補修はどうか。十分な摺り合わせが必要だろう。
また民間施設の場合、通常は、将来、巨額な修繕や更新の費用が発生しないよう、毎年少しずつ施設の補修や手直しをしていく。あるいは市場環境の変化を見越して先行投資を少しずつやっていく。例えば団体利用者向けの多目的部屋を壊して個人客向けのカフェに改造するといった造作である。ところが行政機関にはこの種の先を見る発想がない。その上さらに民間事業者に施設の日常の管理運営を任せてしまうと、ますます目が届かなくなる。その結果、目に見えない大きなコストが将来まとまって発生するリスクがある。あるいは施設を早めに他の用途に転用すれば良いと気付いたとする。しかし行政の場合、業者との契約期間が残っていれば動きは鈍いだろう。そのまま何年も推移といったことにもなりやすい。
第二に、そもそもこれらの施設を大阪府が所有し続ける必要があるのかという根本的な疑問がある。例えばリゾートホテルなどは民間委託どころか民間のリゾート業者に売却するべきではないか。設立当時はともかく、もし今造るなら税金を投入せずに民間企業に当初から建設や運営を任せたはずだ。だとすれば今から売却しても決しておかしくはない。
第三に、果たして個々の施設ごとの民間委託が正しいかどうか疑問がある。例えば青少年海洋センターの場合、この施設の潜在価値をフルに生かそうと考えるのならばリゾートホテルだけの民間委託では不十分だ。その道のプロの民間企業に近くのヨットハーバーや青少年向けの海洋センターとセットで任せるべきだ。例えば、地中海クラブのような民間のデベロッパーにエリア一帯の運営をすべて任せる。域内の施設のコンセプトを統一し、また宿泊とアクティビティをセットにしたパック商品を作る。利用料金なども全体をセットで設定し直す。あるいは、施設も含めた地区全体をまるごと企業に売却という考え方もありうる。
もともとの青少年育成という行政目的を残すということと、民間への委託は全く矛盾しない。大阪府は、一部の事業、例えば子どもたちの海洋教室などに補助金を出せば良い。
こうした発想でものごとを大きくとらえていけば、地区全体をリゾート地として地域再生する可能性も見えてくるのではないか。このセンターはもともと青少年育成のための施設という発想で造られた。だが、ひょっとするとそのこと自体を見直すべき時機にきているのかもしれない。
こうしてみると、今回のケースは実は単に府立のリゾートホテルを大阪府が所有したまま民間に委託した、あるいは指定管理者にまかせたというだけのことでしかない。この三つのケースは、いずれも指定管理者制度の本格導入に先駆けて民間委託に取り組んだ。そして一定の経済効果を出した。大阪府の努力は賞賛に値すると。だが、一つの制度が試行され、数年が経つと次のレベルの課題が見えてくる。全国的に指定者管理制が整備された今、大阪府には以上に述べたような抜本改革を次には目指してほしいものだ。(おわり)
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登録日:2008年 02月 26日 23:58:30
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- 上山信一
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- 慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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