●新任知事の冷徹な現実直視:大阪府
以下は毎日新聞
クローズアップ2008:大阪府収支見通し 9年6500億円の荒療治
◇増収策欠く“橋下流”
9年間で6500億円の収支改善を図る、財政収支の見通しを発表した大阪府の橋下徹知事。スタートの08年度は、6月に編成する本予算で1100億円を削減するとし、「府民にも覚悟を持ってもらいたい」と迫った。この姿勢を評価する声もある一方、削減項目や増収策を示さないまま、危機感をあおるばかりの橋下流ショック療法に、「極端過ぎる」と批判も強い。【坂口佳代、犬飼直幸、石川隆宣】
■公約と隔たり
橋下知事は、早期健全化団体への転落を回避するため、「収入の範囲内で予算を組む」方針にこだわる。しかし、「収入」の定義はあいまいなままだ。知事選の選挙期間中から「府債発行は原則認めない」としながら、試算では、建設事業に充てる府債(08年度980億円)や交付税が充当される府債を「歳入」に盛り込んだ。財政課幹部ですら「『収入』の定義が不明確で混乱している」と漏らす。
結局、発行を認めないのは職員の退職金に当てる府債など一部(07年度150億円)だけとなり、事実上の公約撤回となった。しかし、橋下知事は記者会見で「府債の抑制額が少ないのでは」と質問され、「少ないか多いかは個人の価値観の違いだ。建設費も基本は府債発行ゼロの方針で、ぎりぎりまで抑制している」と反論した。今回収支改善が必要とした金額についても、単に議論するためのものなのか、確固たる実現目標なのか疑問視する向きもある。
■大ナタに賛否
「禁じ手」と言われる減債基金からの借り入れなどで財源不足を補い、一定の府民サービスを維持するという太田房江前知事の路線からの180度転換を図る橋下知事。大阪市政改革をリードした上山信一・慶応大教授は「今までの無茶苦茶(むちゃくちゃ)な予算編成がおかしい。ある日突然破綻(はたん)する前に、誰かが是正しなければいけない。まずショックを与える戦術は正しい」と評価する。
これに対し、ジャーナリスト、大谷昭宏さんは「いつも危機感をあおって落としどころを考える拡大縮小型。コメンテーターならいいが、政治では通用しない。削減項目を示して府民の意見を聞くべきだ。知事自らが関係団体を説得するなど、泥をかぶりなさいと言いたい」と指摘した。
また、府は08年度暫定予算で市町村への補助金などの約3割を計上しなかった。本予算ではさらなる影響が予想される。ある市の幹部は「要求側の声も聞き、バランスを考えるのが知事の役割。事前に協議もせず、一方的に削減額を出すのはおかしい」と批判した。
■足元からも批判
試算に対しては、足元からも批判の声が上がった。27日夕の部局長らによる意見交換会では、改革の「ボリュームとスピード」がテーマになった。綛山(かせやま)哲男教育長は「教育予算の6300億円のうち6000億円が人件費。残りを削れば学校運営を止めかねない。借金を先送りしたくないのは理解するが、将来を担う子どもたちにも投資がいる」と主張した。
また、芝池幸夫・水道企業管理者は「道路や河川の維持管理や建設事業にもセーフティーネットの要素がある。こんなメスを入れて、果たしていいのか。生活の安定性にも影響しないか気になる」と指摘。福田昌弘・政策企画部長は「1100億円の削減がどういうものか、数字だけでは実感がない。メニューを作り、厳しい議論をしたい」と述べた。
■どう捻出?
今後の焦点は、08年度に1100億円、9年間で6500億円をどう捻出(ねんしゅつ)するのかだ。橋下知事が削減対象とするのは、私学助成や医療費助成など二千数百億円と人件費9266億円(いずれも07年度当初予算額)だ。
府財政課は「事業費を削ると府民生活への影響は大きく、人件費削減も限界がある」と話す。その場合、手数料や授業料、施設使用料などを引き上げて増収を図ることもある。
財界幹部は「地域経済への振興策で税収増を図ることが大切だと、橋下知事は理解していないのでは。具体的な増収策を示さないまま、約6500億円の改革が必要と言われても無理な話。何でもできると思っているのか」と懸念を示した。
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実質公債費比率は、自治体の収入に対する借金返済額の割合を示す。25%以上は危険水域の「早期健全化団体」、35%以上は破綻状態の「財政再生団体」に指定される。従来手法の実質公債費比率は、減債基金の借り入れと借り換え債の増発を続けた場合の見通し。収支改善した場合は、早期健全化基準に達しない。そのためには、9年間で6500億円の収支改善が必要となる。
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登録日:2008年 02月 29日 21:32:23
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- プロフィール
- 上山信一
- (男)
- http://www.pm-forum.org/ueyama/
- 慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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