●サンケイのインタビュー:大阪府・市改革の展望

以下はサンケイ。

上山信一慶大教授に聞く 大阪府市改革の現状と展望

 橋下徹知事に請われ、4月から府特別顧問となる上山信一慶応大教授(50)。大阪市の市政改革推進会議委員長を3月まで務め、徹底したデータ比較と、歯にきぬ着せぬ発言で市政改革をリードした。時には急進的ともとれる提言を、米国でも仕事をしていた経歴をもじって「アメリカ人」とも評された上山教授に、府市の改革の現状と展望を聞いた。

--知事はいきなり1100億円の経費削減を掲げたが

「府の財政規模で1100億円は驚くほどの額ではない。人件費の1割カットなどで出てくる数字。補助金もなくてもいいようなものがけっこうある。一気に目標を出して後は痛み分けというやり方以外にないと、私も思う。ただし補助金と人件費だけでなく建設費や貸付金も見直すべき。橋下知事が施設や人事制度の見直しなど色々な材料を出してくるタイミングはすごくいい。発言には『不発弾』もあるが、学習のプロセスと考えたらいい」

 --府の特別顧問としてはどのような仕事を

「不祥事の調査で民間を代表して入った大阪市とは状況が違う。知事を補佐する改革の顧問なので『この予算を削れ』とかいう権限も基準もない。(漫才で言えば)橋下さんはウルトラ・ツッコミ。私は大阪市ではツッコミ役だったが、府では『そんなに急いで大丈夫か』というボケ役にもならなくてはならない」

--市の改革について

「職員厚遇問題に始まって、市政改革、地下鉄民営化論にまで改革の風呂敷を広げていけたのはひとつの成果。当時の大平光代助役や関淳一市長と、やらなくてはならないと言っていたことが2年半でかなりできた。不祥事から出発したからこそ、外部の人間が入って、白黒をはっきりさせ、リアルタイムの劇場型改革ができた。“外の人第1号”として、大平さんがいたことが非常に大きい。大平さんに自由にさせた関さんもすごい。本質的な提言を出されていた本間正明阪大教授(当時)を、ご本人にとっては不本意な形で市がやめさせたことも大きい。おかげで市は私をやめさせにくくなった。本間先生には期せずして改革の人柱になっていただいた」

--改革の将来像は?

「市政改革推進会議では、公開の場で、身の丈改革を越えたところまで議論できた。得た結論は3つ。府市連携をしないと答えが出ない事業がいくつかあり、その典型が水道だということ。また都市の構造を変えていくためには、地下鉄の民営化が必須。そして、現在24ある区は、10区ぐらいでいいということだ」

--平松邦夫市長の就任で、大阪市営地下鉄の民営化は取り下げられた

「今は自活する能力がある息子(地下鉄)が、いつまでも何となく親(市)のすねかじりをしている状態。親が倒れたらどうするのか。鉄道にとって将来への投資は非常に大切だが、市営地下鉄は、余剰人員の雇用と高賃金を維持するため投資を絞り、安全を犠牲にしてまで利益を出す領域に入りつつある。東京なら当然の相互乗り入れも限定的だ。ニューヨークのように24時間運転をしてもいいのに、公営企業では労組との協議が必要で終電も遅くできない。余剰人員、過剰賃金の問題も民営化しないと解決は不可能だ」

--平松市長に望むことは

「バス事業の赤字を、地下鉄事業の黒字で補填(ほてん)するのは粉飾会計だ。平松政権の最大のミスといってもいい。バスは福祉という位置づけで赤字補填するなら、一般会計から入れるべき。地下鉄は帳簿上は黒字に見えるが巨額の借金を返すめどがたたない。借金への認識が甘すぎる。市長自身は情報公開や裏金問題などいろいろがんばっている。しかし経営感覚を発揮されているかどうかは疑問だ。市役所自体の経営感覚がにぶいので、民間から来た人はもっと鋭敏になっていい」

--府市連携について

「府市連携は、『大阪都構想』など長い歴史がある。一番難しいのは府市合併で、その次に難しいのが二重行政の解消。一番難しいところから議論したのが、府市連携の歴史の不幸なところ。企業がM&A(合併・買収)をやるときでも、いきなり合併なんて話から入らない。まずは業務の提携から始めるべきだ」

--水道事業の統合を巡る府市の議論について

「水道事業については今回、いきなり組織統合を持ち出した府の出し方がまずかった。まず、余った水を市が府に融通し、今後の設備更新の計画を見せ合って一緒にやる。そこから始めるべき。次の段階で、それぞれ水道部門を別法人にして外に出し、合併するということにしなければ話がまとまらない」

--大阪の行政の現状についてどう考える

 「東京がまだまともで大阪がダメな理由の1つは、府と市という役所が2つあるから。経済規模が3分の1で役所が2つでは、パワーは6分の1になる。地域が衰退するのは当たり前。私も大阪人の端くれで実に歯がゆい思いだ」

【うえやま・しんいち】 昭和32年大阪市生まれ。京都大法学部卒、米プリンストン大院修了(公共経営学修士)。運輸省(現国土交通省)、米コンサルタント会社、米ジョージタウン大学研究教授を経て平成15年から現職。18年3月~20年3月まで大阪市市政改革推進会議委員長。

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登録日:2008年 03月 28日 23:37:54

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プロフィール
上山信一
(男)
http://www.pm-forum.org/ueyama/
慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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