●オーケストラの公共性を再考する①

 橋下改革を機に、関西のオーケストラについての議論が増えた。筆者はクラシック音楽ファンでコンサートにもよくいく。大阪の4つのオケの合併論にも賛成しかねる。しかし擁護論の多くはデータを欠いた情緒論、そして現状維持論が多い。オーケストラにも経営と改革が必要だ。それもせずに単に補助金を維持するのは市民の理解が得られないだろう。そこで昨年、大学院生と行った調査結果を議論の材料として提供したい。なお、分析は原則として日本オーケストラ連盟に正会員として加盟する23団体を対象とする。
1.オーケストラ経営の現状
ぴあ総合研究所『エンタテイメント白書2007』によれば、日本の音楽コンサートの市場規模(すなわちチケット単価にチケット流通枚数を掛けたもの=入場料売り上げ)は2006年で1518億円である。このうちクラシック音楽のコンサートはおよそ2割を占める。室内楽も含まれるためすべてがオーケストラのものではないが規模としては演劇(293億円)とほぼ同じ、歌舞伎(71億円)やジャズ(31億円)を上回っていると推測できる。
(1)運営形態
 オーケストラの運営形態はさまざまだが劇団やダンス集団などに比べると、組織化が進んでいる。多くは非営利組織で運営され、23団体中18団体が公益法人(財団法人もしくは社団法人)である。一方、市が100%直営で運営しているもの(京都市交響楽団)や任意団体で運営しているもの(大阪シンフォニカー交響楽団、セントラル愛知交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、以上3団体)、NPO法人化したもの(関西フィルハーモニー管弦楽団)も見られる。
(2)収入・費用構造
 財政規模が10億円を超えているオーケストラが7団体ある。一方、5億円に満たないものも7団体ある。平均像を語れば、収入面では事業収入は半分程度で残りの半分は行政の補助金や企業や個人の会費・寄付、さらには芸術振興基金による場合が多い。支出の大部分は、公演時のホール賃料、指揮者への謝金、移動時の交通費・運搬費などの事業費と人件費である。オーケストラは基本的に人の集まりであり、大きな資産は持たず、固定費の高い経営体である。
 さて在阪4オーケストラの収入構造はどうか。以下は2005年のデータである。
(在阪4オーケストラ2005年収支構造 単位:百万円)
  ①大阪フィルハーモニー交響楽団 ②関西フィルハーモニー管弦楽団 ③大阪シンフォニカー交響楽団 ④大阪センチュリー交響楽団

                 ①      ②       ③      ④
設立年        1947年  1982年   1980年   1989年
事業収入         ¥487   ¥315    ¥272     ¥160
補助金総額         ¥293 ¥60 ¥62 ¥465
・文化庁等         ¥115 ¥55 ¥59  ¥11
・大阪府         ¥68  ¥3  ¥2 ¥454
・大阪市         ¥110  ¥2  ¥1  ¥0
収入合計         ¥990   ¥417    ¥375    ¥757
公的助成率         30%    14%    17% 61%
事業収入率         49%    76%    73% 21%
団員平均年収     ¥517万円 ¥295万円 不明  ¥498万円
        (『季刊Orchestra』2006秋号をもとに加工)

いずれのオーケストラも公的助成を受けているが、その比率には差がある。大阪フィルは行政の広い範囲から支援を受けている。センチュリー交響楽団は大阪府の支援が色濃い。この両者は給与も高い。対照的なのが関西フィルハーモニー管弦楽団と大阪シンフォニカー交響楽団である。両者はいずれも、「私的」に設立された団体で公的助成率は2割以下と低く、必然的に事業収入に依存する。
 ここからオーケストラには、公的助成率の高い準公立型・行政依存型と団員給与を低く抑え、事業収入率を高めて収支バランスを図る民営・独立経営型の二つのタイプがあることがわかる。(つづく)

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登録日:2008年 05月 01日 23:54:02

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プロフィール
上山信一
(男)
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慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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