●オーケストラの公共性②

 (続き) NHK交響楽団を除く全国の主要オーケストラは、何らかの形で公的支援を受ける。次はオーケストラの経営を支えている行政からの支援についてみていく。
・文化行政の変遷
行政からの文化支援は、大きく分けて国からと自治体からの2つある。日本の文化行政は1968年に国に文化庁が設置されて以降、70年代初頭から府県レベルでの文化事業や制度の整備が開始された。さらに1980年に入ると各地方自治体は文化施設の建設に積極的に取り組み、文化公共ホ-ルと呼ばれる建物が相次いで建設された。しかし建設ラッシュは、バブル崩壊後は「箱物批判」につながり、やがてハード中心からソフト重視のホール運営、文化振興ビジョンの策定、文化振興条例の必要性など、文化領域の様々な議論を生み出した。
・国レベル
2001年末に文化芸術振興基本法が制定され、07年2月には「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の第2弾が閣議決定された。オーケストラのような舞台芸術活動に対しては文化庁などが芸術創造活動推進施策として支援する。
・自治体の支援
一方、文化にはコミュニティを形成する力や、郷土への愛着や誇りを培う力もある。そこで「地域文化」の名の下に、自治体も役割を担っている。国の基本方針でも、「国民の生活に近い地方公共団体が高い専門性と知識を備え、主たる役割を担うことが期待される」とうたわれる。しかし地方公共団体の芸術文化関係経費の支出はバブル経済崩壊後の93年をピークに減少が続いている。ただし減少の主要因は文化施設建設費の減少であり、、オーケストラ支援のようなソフト部分は減少していない。芸術文化事業費は横ばいで推移している。
・大フィルのケース
以下では例として国・府・市のそれぞれから補助を受けている大阪フィルハーモニー交響楽団をモデルケースとして取り上げ、その推移をみる。90年代以後今日までを見ると補助はバブル経済崩壊後の92年に突出するものの、全体の水準としては比較的安定的に推移している。特に大阪市からの補助は95年(平成7年)から変化が無く、予算規模全体で見ると高水準を保っている。大阪府は99年に補助を減少させている。しかし同時期から国の補助金が増加し、減少を補っている。国の補助が97年から増加傾向にあるのは96年のアーツプラン21(ソフトの充実を目指して新しく開始された芸術支援事業)の開始によって、支援事業費が前年より大幅に増額されたからである。大阪フィルのケースでは行政からの支援はトータルとして見れば横ばい、むしろ増加傾向にあることがわかる。
・まとめ
 オーケストラの経営はもともと苦しいとよく言われる。だがデータを見る限り、特に近年苦しさが増しているとはいえない。またこれまで統合(東京フィルハーモニー交響楽団と新星日本交響楽団)や分裂(日本フィルハーモニー交響楽団と新日本フィルハーモニー交響楽団)の例はあるが経営不振による倒産・解散はない。(続く)

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登録日:2008年 05月 05日 07:39:06

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プロフィール
上山信一
(男)
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慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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