●オーケストラの公共性④

・オーケストラの持つポテンシャル
 大都市である条件としてプロ野球チーム、サッカーチーム、そしてオーケストラをもつことが挙げられることがある。いずれも都市や地域社会のシンボルになり得る。世界のトップオーケストラは実際に都市の重要な観光資源となっている。例えばウィーンフィルの本拠地であるウィーン国立歌劇場やベルリンフィルの本拠地であるフィルハーモニーホールは国を代表する一大観光地である。演奏のためにある地域を訪れれば地域全体に経済効果をもたらすこともある。オーケストラは芸術文化振興という機能のほかに、観光集客、都市再生・教育・福祉・情報発信・コミュニティ活性化など多くの分野で期待できる。
・具体イメージ
 イギリスのバーミンガム市交響楽団は中心市街地再開発の際に建設された国際コンベンションセンター内に良質のコンサートホールを確保した。団の評価が向上し、文化とは無縁の産業都市だったバーミンガムがヨーロッパの一大文化都市へと発展した。
 大阪センチュリー交響楽団の「タッチ・ジ・オーケストラ」のように子供たちが楽器に実際に触れたり指揮者体験をしたり、文字通りオーケストラに触れる企画も増えている。
 アメリカ・カリフォルニア州のバレーオ市では市当局が繁華街でクラシック音楽を流したところ、犯罪の発生率が大幅に減ったという実験データもある。広島交響楽団では「Music for Piece」をキャッチコピーとして、「ヒロシマ」から平和を発信するべくオーケストラ活動を行っている。、新日本フィルハーモニー交響楽団は東京都墨田区にあるすみだトリフォニーホールと全国のオーケストラで初めてフランチャイズ契約を結び、地域に根付いた活動を意識して行っている。音楽、とくに何百年もの歴史を持つクラシック音楽には何かしら人間を揺さぶる「力」がある
・意識改革
 オーケストラは自らの役割に対する認識を変える必要がある。オーケストラは自らが都市にもたらす芸術振興以外のさまざまな機能を再認識し、きちんと説明すべきである。自治体の財政危機に照らせば従来型の「心の豊かさ」論への固執は危険である。

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登録日:2008年 05月 05日 08:13:25

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プロフィール
上山信一
(男)
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慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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