●商店街再生の鍵を探る――“改革屋“の視点から 5/8 update
5月4日午後にNHKラジオの「商店街再生」の特集番組にゲスト出演した.石黒彩さん(モー娘一期生)と3時間にわたり全国10箇所の再生事例を紹介しながら再生策を探る企画だ。全国の先端事例と問題の本質がかなりカバーできた。そこで改めて僕の意見をまとめてみたい。
1.全国各地で再生に取り組む事例が増えている。共通するのは「何もせずにお客が来る時代は終わった」という時代認識と危機感。いずれも「とにかく何でもいいから、まず人に来てもらう」という原則を徹底。中には年間200日ものイベントを行う例(佐世保)、NPOと連携して住宅街からミニバスを走らせる例(土浦)、子供の遊び場を作る例(岡山)なども。 2.商店街の衰退もさることながら、大手スーパー・百貨店など中核大規模店が撤退し跡地開発が課題となる地区も多い。大崎(宮城県)や諫早(長崎)などでは商店街自らが跡地問題に取り組み、核店舗の誘致や再開発プロジェクトに乗り出し行政が資金援助している。
3.全体としては大規模店舗や不況のせいにし特段の努力をしない商店街が圧倒的多数。空き店舗がどんどん広がり寂れつつある。最大の理由は人為的なもので例えば、
・そもそもビジネスと捉えない高齢店主が多い。業種転換も投資も工夫もしない。
・商店街組織が合議制を死守し、何も決まらない。一部店主がイベントや空き店舗対策に賛成せず、時間だけが経つ
・やる気のある店主はロードサイドやショッピングセンターに流出
4.自分の代限りで廃業という店主の多くが投資をしない。あるいは閉店し、シャッターを下す。隣は迷惑するがこれを規制・抑止する仕組みもない。シャッターを下ろすなら安く人に貸すべきだし、単なる住居にするなら移転すべき。何らかの形での私権制限をすべきではないか。狸小路(札幌)では学生に店舗を貸して後継者育成をしている。丸亀町商店街(高松)では土日にシャッターが下りる銀行の前にワゴンでの出店を促しそれで成功した人に店舗をもたせる仕組みを支援している。
5.小売全体の売り上げが減っている。しかも大規模店が面積でも売り上げでも3~4割を占める。そしてその大規模店ですら過当競争で閉店が相次ぐ。日用品を普通の値段で売っていたのでは絶対に集客できない。業種転換や店主入れ替えなどの本格的な「テナントマネジメント」が必要。例えば、金沢の竪町商店街。20年かけてファッションの街に転換し、周辺他県からも集客に成功。年間1割程度の店が新陳代謝で入れ替わる。
6.大型店・スーパーのせいでだめになったという言い訳から脱却すべき。確かに大規模店同士の戦いにまきこまれ、さらには核店舗の撤退のあおりをうけ、運命を翻弄された商店街もある。しかし、集客の工夫や業種転換、核店舗の誘致などの基本動作をやっていないまま衰退しつつある例も多い。
7.まちづくり3法の見直しはコンパクトシティの構築につながる。だが法改正で商店街が再生する保障はない。大規模店は資本主義の権化、怪獣のようなものでありかつて「コンビニ」に転換して街中に入ってきたようにあの手この手で工夫してくる。法改正は、やる気のある商店街にとってはプラスだがやる気のないところにとってはあまり助けにならないだろう。
8.そもそも「商店街」単位での問題解決だけでは無理がある。個店が魅力的であれば立地・経済環境とは関係ない。逆に個店がつまらないと商店街の繁栄はない。やはり店主の新陳代謝や業種・業態の転換が必要。それには「健全な競争」と「退出促進」が大事。政府の振興策とシャッターを下ろした店主に退出を迫らない今の税制の手直しが必須。
9.インターネット販売などの“サイレント・コマース”の到来で、かえってコストの安い中小商店が競争力を持つ場合もある。年商数億を誇りながら、店舗は昔ながらで生の消費者の情報収集を主眼にというのはひとつの理想系ではないか。 10.商店街の価値はビジネスモデルだけでは捉えにくい。公園・広場などの公共施設に似た役割も果たしている。単に日用品を安く売る場ではない。だからといって補助金を払ってまで維持したり、過剰に保護するのもおかしい。要するに人々に、また店主側にも”MY商店街”という自覚が必要ではないか。その上に各種制度や補助金などが生きてくる。
カテゴリー[ 地域再生 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2006年 05月 08日 07:13:16
Trackback
この記事に対するトラックバックURL:
- プロフィール
- 上山信一
- (男)
- 慶應大学総合政策学部教授。大阪市生まれ54歳。専門は企業・行政機関の経営戦略と組織改革。都市・地域再生も手がける。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。国交省政策評価会(座長)、大阪府と大阪市の特別顧問、新潟市都市政策研究所長、日本公共政策学会理事、各種企業・行政機関の顧問や委員等を兼務。府立豊中高、京大法、米プリンストン大学修士。著作等 ツイッター@ShinichiUeyama
- 最近のエントリー
- [05/19] 大阪府と大阪市の特別顧問の仕事について
- [05/10] どうなる大阪の府市統合 ---(2)統合本部は4つの機能で構成
- [05/04] 5月15日小倉で講演します
- [04/29] 「にいがたバス研究室」はおもしろい
- [04/27] マンガ大阪維新がでました。
- [04/26] 現地現場を見ずして語れない橋下改革
- [04/15] 成長から幸福度(ハピネス)への転換 ---新潟市にみる21世紀型都市戦略
- [03/31] ノンバーバル劇場@京都、NY、ソウル
- [03/24] 大阪市営地下鉄の終電延長を検討 府市統合本部、民間並みに
- [03/24] 労使関係の正しい距離感は難しい
- 月別アーカイブ
- 2012年 05月 [3]
- 2012年 04月 [4]
- 2012年 03月 [9]
- 2012年 02月 [8]
- 2012年 01月 [11]
- 2011年 12月 [21]
- 2011年 11月 [14]
- 2011年 10月 [9]
- 2011年 09月 [6]
- 2011年 08月 [6]
- 2011年 07月 [5]
- 2011年 06月 [6]
- 2011年 05月 [11]
- 2011年 04月 [22]
- 2011年 03月 [20]
- 2011年 02月 [18]
- 2011年 01月 [15]
- 2010年 12月 [9]
- 2010年 11月 [5]
- 2010年 10月 [7]
- 2010年 09月 [11]
- 2010年 08月 [10]
- 2010年 07月 [19]
- 2010年 06月 [6]
- 2010年 05月 [3]
- 2010年 04月 [4]
- 2010年 03月 [12]
- 2010年 02月 [4]
- 2010年 01月 [7]
- 2009年 12月 [10]
- 2009年 11月 [9]
- 2009年 10月 [14]
- 2009年 09月 [7]
- 2009年 08月 [7]
- 2009年 07月 [8]
- 2009年 06月 [7]
- 2009年 05月 [5]
- 2009年 04月 [5]
- 2009年 03月 [1]
- 2009年 02月 [7]
- 2009年 01月 [7]
- 2008年 12月 [8]
- 2008年 11月 [9]
- 2008年 10月 [14]
- 2008年 09月 [6]
- 2008年 08月 [15]
- 2008年 07月 [8]
- 2008年 06月 [12]
- 2008年 05月 [15]
- 2008年 04月 [15]
- 2008年 03月 [18]
- 2008年 02月 [21]
- 2008年 01月 [5]
- 2007年 12月 [13]
- 2007年 11月 [9]
- 2007年 10月 [11]
- 2007年 09月 [5]
- 2007年 08月 [5]
- 2007年 07月 [14]
- 2007年 06月 [24]
- 2007年 05月 [28]
- 2007年 04月 [18]
- 2007年 03月 [25]
- 2007年 02月 [22]
- 2007年 01月 [25]
- 2006年 12月 [19]
- 2006年 11月 [31]
- 2006年 10月 [27]
- 2006年 09月 [24]
- 2006年 08月 [22]
- 2006年 07月 [25]
- 2006年 06月 [19]
- 2006年 05月 [11]
- 2006年 04月 [11]
- 2006年 03月 [10]
- お気に入りリンク
- 行政経営フォーラム
- 検索