●地域再生戦略を問い直す(3/5)

続きです
3. 「再生」で何をめざすのか?
(1)高卒職場、一人当たり所得
 再生で一番大事なのは、高校を卒業した人たちの職場があるかどうかです。職場がなく生活できなければ若者はいなくなります。若者がいなくなると、年寄りも面倒見てもらえなくなるので、引っ越してしまう。
 もう一つ重要なのは、一人当たりの所得が伸びていること。「ここにいると損、よそに行ったほうが得。」と思えばいなくなってしまう。この2つのことが地域再生の条件だと思います。
 これらの条件が揃っていれば、持続可能性はある程度確保できる。
地方は空気がいい。歴史と文化もある。なのになぜ東京にヒトは行くのか。やはり雇用とお金。資産家は例外ですが普通のヒトは暮らしの都合で場所を変える。農家で年収1,000万円というのは九州などに時々あります。親が年収1,000万円あると子供も農業を継ぎます。やはり、職場と所得という条件が非常に重要で、僻地だからだめというわけではない。どういうビジネスが成り立っているかによると思います。

(2)大型チェーン、大手工場の立地は植民地経済化のリスク
 でも職場とお金が揃えばいいというものではない。大手スーパーが来て、大手工場が来れば一応は生活は確立します。しかし、焼き畑農業みたいなもので地元に資本が蓄積されない。地元資本のスーパーとかも倒されたあげくに大型チェーンが数年後いなくなることもある。すると商店街もスーパーも何も残らない。アフリカに行くと米系高級ホテルに現地と隔絶した世界があります。それと同じです。うわべだけの繁栄でしかなく、彼らがいなくなると何もなくなる。そのような状況では、かえって地域力を落としてしまう。そういう意味では、大型スーパーや工場が来たらよいというものではない。

(3)マクロ定説(「少子高齢化」「衰退」)を覆す地域シナリオが欲しい
「少子高齢化と中心市街地の衰退が日本の大きな課題」というのが定説。確かに間違いではない。しかし政府が言ってまわるのは余計なお世話です。地方の若者をわざわざ不安な気持ちにさせる必要は無い。迷惑です。
 政府がたいへんだたいへんだというものだから地方はどこも「うちの地域は例外。未来にはばたくxx町」という嘘ばっかりのシナリオを作る。「うちの地域は東京からもアジアからも近くてすばらしい。真心なら日本一。山も川もきれいだし。万歳xx町」とか「大好きですxx町」といったわけのわからないスローガンを出さざるを得ない。戦略も何もあったものではない。
 おまけに最近は「再生計画」を書くと補助金がくる。それでいっそう無意味な絵を描く。このあほらしさ、そしてわかってそれをやらざるを得ない辛さや切実さは東京にいるとなかなか分からない。なかにはうまくやっている地域もあります。しかし地域再生は非常に難しい仕事です。再生計画以前に担い手問題があり、役場の財政破綻がある。そして再生計画を書いてもそうなるとは限らない。「補助金がもらえるからとにかく書く」という時代になってしまっている。(つづく)

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登録日:2008年 07月 07日 21:44:13

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プロフィール
上山信一
(男)
http://www.pm-forum.org/ueyama/
慶應義塾大学総合政策学部教授、改革コンサルタント。専門は大企業・行政・NPO等の経営刷新。近年は地域再生も手がける。大学では「経営戦略」「公共政策」等を教える。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。大阪市生まれ。50歳。中央省庁・自治体の各種委員、企業顧問等を兼務。京大法、米プリンストン大修士。趣味は登山、鉄道、料理。メール:ueyama@pm-forum.org
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