●サンケイ記事 【検証・平松市政1年】

【検証・平松市政1年】(上) 知事との"風通し"合格点
 「きょうは橋下知事に来ていただきました」。11月23日、大阪市役所で開かれた市長と市民との対話集会「元気アップ会議」で、平松邦夫市長がにこやかにあいさつした。隣に大阪府の橋下徹知事がいた。市民との対話は、平松市長が就任以来最も力を注いできた。この日は、100回目の市民との懇談で、サプライズゲストとして選ばれたのが橋下知事。集会は2人の首長の蜜月ぶりを見せつけるかたちになった。
終了後には、市の三セク「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC)への府庁の移転構想をめぐり、府も市も公式には明らかにしていないビルの価格を尋ねられた橋下知事が「市長からはだいたいのゾーンはもう…」と言いかけると、平松市長がさえぎり、2人の間ではすでに価格の水面下での打診が行われているようにうかがわせる場面もあった。
昨年12月に市長に就任した元アナウンサーの平松市長と、今年2月に知事に就任したテレビタレントとして活躍した弁護士の橋下知事。2人の新しいリーダーが、「府と市と合わせて『ふしあわせ』」と揶揄(やゆ)された府と市の関係を変えたのは事実だ。「首長同士の風通しのよさはかつてなかったこと」とある市幹部は評価する。
テレビタレント時代からどちらかといえばヒール(悪役)の橋下知事と、MBSの看板アナウンサーを長年務め、「日本一司会のうまい市長」と、表舞台での配慮を得意とする平松市長。性格も、首長としての立ち振る舞いも対照的だ。当初、平松市長は「(橋下知事とは)民主主義のとらえ方が違う」と思想信条の違いをにじませることも多かったが、最近は、橋下知事との個人的な信頼関係を強調することが少なくない
 こうした平松市長の言動を、政治戦略として避けられない選択と見ることもできる。民主推薦で市長選を戦い、自民、公明推薦で現職の関淳一氏を破って当選した平松市長だが、市議会で多数派の自民、公明の壁に度々ぶつかってきた。そんな市長にとって、自民、公明の支持を受けて当選した橋下知事とタッグを組むことは、政治判断の選択肢を広げる武器として使えるからだ。しかし、現実には、WTCへの府庁移転は、府議会の3分の2以上の同意が必要で、厳しい局面を迎えている。府市の水道統合議論でも市側の「市にとって水道は優良事業で、無理して府と統合する必要はない」(市水道局幹部)との姿勢は変わっておらず、府市ともに水道事業を統合すれば2000億円以上の経費削減効果があると試算しながら、議論は進んでいない。府市協調の象徴ともいえるこの2事業とも、交渉はいずれも年末年始が山場だ。難局のなかで、2人の“蜜月”はいつまで続くか。平松市長は「どこかでものすごくぶつかることがあるかもしれません。ぶつかったとしても、お互い府や市をどうかしたいと思っている部分では信用している。ぶつかってもあとを引かないのではないか」という。首長として選択した橋下知事への「信用」は、まもなく真価を問われることになる。

カテゴリー[ 大阪市改革 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2008年 12月 17日 01:23:22

Trackback

この記事に対するトラックバックURL:

プロフィール
上山信一
(男)
慶應大学総合政策学部教授。大阪市生まれ54歳。専門は企業・行政機関の経営戦略と組織改革。都市・地域再生も手がける。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。国交省政策評価会(座長)、大阪府と大阪市の特別顧問、新潟市都市政策研究所長、日本公共政策学会理事、各種企業・行政機関の顧問や委員等を兼務。府立豊中高、京大法、米プリンストン大学修士。著作等 ツイッター@ShinichiUeyama
お気に入りリンク
行政経営フォーラム
検索