ネット企業のコンプライアンス

ライブドアの新社長に平松氏、代表権は熊谷氏に - 東京

【東京 24日 AFP】インターネットの若き起業家で、ライブドアの創業者、堀江貴文容疑者が23日に証券取引法違反容疑で逮捕されたのを受け、東京のホテルで24日記者会見が開かれた。写真は24日、記者会見で頭を下げる、新たに代表取締役となった熊谷史人氏(左)と、社長に就任した平松庚三氏。(c)AFP/YOSHIKAZU TSUNO

AFPBB News


「TBSサンデージャポンの者ですが」 「みのもんたの朝ズバという番組を制作している者ですが」最近、ライブドア絡みで、立て続けに電話が掛かってきた。

 
 
 

私が『ヒルズで働く社員の告白』(洋泉社ムック)のライブドアの部分や、『<A href=" http://www.mynewsjapan.com/kikaku.jsp?sn=10 " target="_blank">企業ミシュラン IT・サービス業編</A>』(幻冬舎)といった本を書いているので、何か知っているはずだと、ワラをも掴む思いなのだろう。
 「明後日の担当ディレクターをしておりまして…」「今話題になっている岡本容疑者が送ったメールについてですが…」などと唐突に尋ねてくる。彼らが焦る事情はよく分かるが、マスコミを内部から批判して新聞記者を辞め、<A href=" http://www.mynewsjapan.com/" target="_blank">独自メディア</A>まで立ち上げている私は、マスコミとは興味の対象が異なる。マスコミのやり方でOKだと思うなら、そもそも私自身、マスコミを辞めていない。

 検察が事件化したからといって、事後的に尾ヒレを付けて当局サイドの情報を一方的に流す行為は、犯罪的である。記者やディレクターらも、個人としては、やりたくてやっている訳ではないはずだ。それでもやらざるを得ない仕組みについては、私が昨年出版した『これが本当のマスコミだ』という本や<A href=" http://www.mynewsjapan.com/kikaku.jsp?sn=10 " target="_blank">サイト上</A>で、各社ごとに現場社員を取材して詳しく書いた。

 ひとつだけ言うなら、放送免許という規制に守られたなかで20代で年収1,400万円超という、異常な高賃金がモチベーションになっていることは疑いがない。堀江氏の言う「カネが全て」は、まさに本質なのである。


◇全く異なる各社の取り組み度
 ジャーナリズムは、事前監視に重点を置くべきだ。今回は、私が日常的に行っている取材から分かっている各社のコンプライアンス(法令順守)に向けた取り組みについて、再度、簡単に解説しよう。

 まず、いま問題とされている<A href=" http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=332 " target="_blank">ライブドア</A>は、一般的なイメージ通り、セキュリティーやコンプライアンスには、もともと甘い会社である。例えば、業務用のパソコンは、社員全員が自己所有のものを会社に持ち込んで仕事をすることになっており、そこで顧客データなど仕事上のデータを取り込み、自宅に持ち帰る途中でPCを盗まれるリスクがある。「まだ成長スピードに追いついていない感じで、守ることをしていない」(若手社員)。

 対照的なのが<A href=" http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=339 " target="_blank">楽天</A>で、業務用のPCは、鎖で机につながれている。退社する際には、鎖を外し、机の引き出しに収納して鍵をかける徹底ぶりだ。社内では監視カメラが社員を24時間、監視中。それでも2005年夏、3万件超の個人情報が流出する事件が起こったため、警備員を各階4人ずつに増強し、出入り口も各階2個に減らした(事件前は6個だった)。

 もとから手堅かったのが、<A href=" http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=318 " target="_blank">ヤフー</A>。トップ企業として守る立場なので、リスクを冒す必要もない。同社では、個人情報を扱う部門が利用する部屋には一般社員は入れず、警備員がいる地帯を通らねばならない。携帯電話の持込みも禁止、USBポートも利用禁止だという。楽天と同様、事件がきっかけとなって厳格化した経緯がある。「ソフトバンクBBの約450万件の顧客情報流出事件(1人500円の金券を配布)以降、ソフトバンクグループ全体のセキュリティー保持対策の冊子が回ってきて、情報管理が厳しくなった」(若手社員)。


◇スピードとコンプライアンスのトレードオフ
 スピードとコンプライアンスは、トレードオフの関係にある。コンプライアンスを徹底すればするほど、監視するプロセスやチェック機能を噛ませるために、どうしてもワンステップ遅れることになる。

 ヤフーでは、企画立案からサービスインまで、3ヶ月~半年もかかるという。おおまかな流れは、室長による企画書承認→「ブラックボックス」(広告本部、CS本部、サービス統括部、セキュリティー、法務など、関係者のチェック)→開発・制作→品質保証部門のチェック(2~3週間)→サービスイン。ネットの世界としては、リスクヘッジを徹底する分、動きはかなり遅い。それでも、トップ企業としての圧倒的なブランド力があるため、焦る必要はないのだ。

 楽天は、もともと「スピード!スピード!スピード!」を社是の1つとして成長してきた。一方で、規則の厳しさでも有名で、目黒にオフィスを構えていた時代は、名札を忘れた三木谷社長が入館できなかった、というエピソードもある。楽天のように、スピードとコンプライアンスを両立させようとすると、何が起きるか。確実に言えることは、社員の負担が重くなる、ということだ。「ノルマが厳しいので、毎日、終電が当り前。自腹でタクシー帰りもある」(若手社員)という。

 私は1年半ほど前までIBMのコンサルタントだったが、社内LANに入る上で2重のパスワードが必要だったり、それぞれの情報システム(、労務管理、給与管理、メール、イントラ)ごとにパスワードが異なったり、そのパスワードを3ヶ月ごとに変えないとログインできなくなったりと、マニアックなほどに厳しかった。仕事を始める前に疲れてしまうほどだ。こうした、仕事そのものの本質とは関係がないところで負荷が掛かることに、辟易としたものだ(独立した今は自己責任で伸び伸びと仕事ができるのが良い)。

 こうしてみると、コンプライアンスを犠牲にしたライブドアに、スピード感があったのは当然だった。社長自ら、on the edge(ギリギリのところ、最先端のところ)をいく、グレーゾーンを行く、と宣言していた会社だ。これまで、ヤフーや楽天のような、警鐘となるような小さな事件も表面化しなかったため、コンプライアンスについて考えるきっかけもなかった。それで今回の一発退場だ。これは結果的にみると、アンラッキーだったというほかない。


◇商社でいえば…
 コンプライアンスという点で、各社を商社にたとえると、ヤフーは「浮利(浮き銭)を追わず」を事業精神に掲げ「石橋を叩いても渡らない」と言われる住友商事に似ている。ライブドアは、カネ儲け圧力が強いあまりに、定期的に現役社員が逮捕(国後島のディーゼル発電施設を巡る談合、排ガスの微粒子除去装置を巡る詐欺)されてしまう<A href=" http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=348 " target="_blank">三井物産</A>にそっくりだ。楽天は、伊藤忠のスピード感と、「組織の三菱」で規律が厳しい<A href=" http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=152 " target="_blank">三菱商事</A>の要素がある。

 以上、簡単に触れたが、詳しくは<A href="http://www.mynewsjapan.com/kikaku.jsp?sn=10 " target="_blank">企業ミシュラン</A>の各社のページに、これでもか、というくらい(各社6千~1万字程度)書いている。

 さて、冒頭で「事後的に尾ヒレを付けて当局サイドの情報を一方的に流す行為は、犯罪的」と述べた。次回は、マスコミ報道の問題について、詳しく解説する。

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登録日:2006年 02月 04日 15:57:35

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プロフィール
渡邉 正裕
渡邉 正裕
(男)
1972年05月26日
MyNewsJapan
(株)MyNewsJapan代表取締役、編集長、ジャーナリスト。慶應義塾大学総合政策学部にて政治学、政策過程論を専攻。卒業後、日本経済新聞社にて1,000本超の記事を日経各媒体に執筆。外資系コンサルティング会社を経て2004年、起業。2006年、有料会員1千人超となり、採算ベースに乗せる。著書に『これが働きたい会社だ』『企業ミシュラン』『これが本当のマスコミだ』。
*URL:http://www.mynewsjapan.com/
*連絡先:info@mynewsjapan.com
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