額面と手取りと人件費の本当の話

付加価値税導入に抗議デモ - 香港

【香港 20日 AFP】20日、付加価値税の導入に反対する抗議デモが行われた。政府は7月18日、物品やサービスに課税する付加価値税の導入を発表し、高齢化社会に向けた懸案事項だった税収基盤拡大の第一歩を踏み出した。香港は市民の税負担の低さで有名であるが、付加価値税の導入により、300億香港ドル(約4470億円)の歳入の増加が見込まれている。政府案は、低所得層に対する所得税率を削減し、商業活動に関する課税を強化、住宅ローン減税の拡大を提案している。写真は、横断幕を掲げデモを行う人々。(c)AFP/TED ALJIBE

AFPBB News


 税金を上げると、どの国の国民も反対する。それを煙にまくのに、もっともよい方法は、税金を天引きすることだ。

 来年から定率減税が廃止となり中間層の負担は重くなる。当局は、額面で650~850万という層の厚い部分を逃さず、たくさん負担させる考えだ。そもそも日本では、第二次大戦中のどさくさのなかで戦費調達を目的として導入された「天引き」制度が未だ続いており、額面と手取りの違いを認識しずらい。さらに1人あたり人件費について理解している人はもっと少ない。雑誌の年収ランキングも、実態を表しているとは言いがたい。まずはそのあたりの疑問をすべて解消しよう。

 俗に、「衣食足りて礼節を知る」「胃袋があって道徳がある」などと言われるように、そもそも金銭面の不安が大きいと、仕事上の自己実現や、「やりがい」も何も、あったものではない。自分1人が食えないのだから、自分のことで精一杯で、ましてや家族のことや社会のことなど考える余裕は生まれないものだ。「人は資産が1億円を超えると篤志家になる」などと半ば冗談で言われるのも同じこと。人間には、何をするにも、まずは経済的余裕が必要なのである。

 それでは、どの程度のカネが必要なのか。それはなぜか、あまり深く議論しないこととされてきた。実際、「マネー教育」の類は、日本の義務教育はおろか、高校・大学でもほとんど皆無に近いのが実態だ。その一因は、「士農工商」の一番上に位置しながらも、「武士は食わねど高楊枝」といわれた武士道の精神など、日本固有のカルチャーに根付く面があると思われる。

 この「カネ儲けは汚らわしい」とでも言いたげな道徳と、経済の実態との狭間で、逡巡しているのが今の日本である。その結果、おカネに関することが「皆が思っていることだが、道徳的な見地から、暗黙の了解で言わないことになっている」ことになった。「それを言っちゃあオシマイよ」「身も蓋もないよね」といった類の話だ。だから、「カネで買えないものはない」などと書いたホリエモンは、世間から非難を浴びた。

◇20代、30代はタテマエに騙されるな
 だが今や、多くの若い人が心の奥底では、ホリエモンと似たり寄ったりのことを思っている。若い世代が考えねばならないのは、ホリエモンを非難した「世間」の中心は、「団塊の世代」を中心とした、我々(20~30代)の親の世代の人たちであることだ。一方の団塊ジュニア以降の若い世代を中心に、ホリエモンに喝采を浴びせる人は多い。

 非難した「世間」の正体は、親の世代が持つ、すでにタテマエと化した道徳である。たとえば、「真面目に努力していれば必ず報われる」という道徳。戦後の高度成長期に働き盛りだった親の世代は、経済全体のパイが増えていたので、パイの取り分が多いか少ないかはあっても、経済的な「負け組」は生まれにくかった。リストラもなく、退職金も年金も十分にもらえて、真面目に会社勤めをしていれば、必ず報われる方程式があった。だから、このタテマエも機能していたのだ。

 こうした、「コツコツと努力した者が報われる」「カネ儲けは汚らわしい」という価値観で生きてきた親の世代にとっては、会社を売買して莫大な富を築き、カネで買えないものはないと言い切るような輩は、とんでもない、という話になる。東京地検特捜部の道徳観は、まさにこうした親の世代を露骨に代弁したものだった。

 しかし、バブル崩壊後の15年で、時代は完全に変わった。日本の人口が減少に転じ、経済がゼロまたは低成長時代に入り、限られたパイを奪い合う「ゼロサムゲーム」時代に突入。いくら真面目に頑張っていても、頑張る方向が間違っていればリストラされ職を失う。そうかといって、若い世代は親の世代の失政による国の財政逼迫から、消費税をはじめとする税金は上がるのが確実で、少子化で年金はいくら払っても満足に受け取れない。もはやタテマエが機能する前提条件は、完全に崩れている。

 そのなかで育った若者世代にとっては、一見道徳的に見えるタテマエは空虚な言葉に過ぎず、ホリエモン式の経済の実態に即したホンネのほうが、ずっと共感を持たれる。それは私も同じ世代として、よく分かる。団塊ジュニア以降の若い世代は、もう国を頼りにできないし、タテマエに振り回されていたら、将来、不幸になると薄々分かっているからだ。そのような時代を生きのびるには、親の世代よりもカネについて真剣に考えることは、喫緊の課題になったのである。


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登録日:2006年 12月 31日 14:48:44

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プロフィール
渡邉 正裕
渡邉 正裕
(男)
1972年05月26日
MyNewsJapan
(株)MyNewsJapan代表取締役、編集長、ジャーナリスト。慶應義塾大学総合政策学部にて政治学、政策過程論を専攻。卒業後、日本経済新聞社にて1,000本超の記事を日経各媒体に執筆。外資系コンサルティング会社を経て2004年、起業。2006年、有料会員1千人超となり、採算ベースに乗せる。著書に『これが働きたい会社だ』『企業ミシュラン』『これが本当のマスコミだ』。
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