JALの遅すぎるリストラ「本体は管理職比率6割」
【東京 6日 AFP】日本航空(Japan Airlines)は6日、今後3年間で従業員4300人を削減すると発表した。
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(c)AFP/Yoshikazu TSUNO
JALのリストラは遅すぎるくらいだ。社内の人口ピラミッドが極めていびつな逆ピラミッド形になっており、年寄りが多すぎるから、若手は居場所がなくて関係会社に出向してしのいでいる、といった状況なのだ。
◇キノコ雲の人員構成
背景には、無計画な採用と年功序列型賃金、そして終身雇用を強引に維持してきたツケで人件費が高騰しているのに、必要なリストラをしてこなかった体質がある。そのツケが今、消費者に回ろうとしているのだ。昨今、多発する安全上のトラブルも、無関係とはいえない。
「JAL本体で仕事をしている社員の少なくとも6割以上は、管理職クラスでしょう。典型的なキノコ雲の人員構成なんですよ」。ある社員は人件費高騰の理由を説明する。
JALはジャンボ機就航(72年)、そして成田空港開港(78年)に備える要員として、70年~74年まで採用を拡大した。多い年で230人もの総合職を採用していた。2006年度予定(70人)の3倍以上にもなる。しかし、第一次オイルショック(74年)で原油価格が高騰し、75年は100人未満に激減、76、77年は採用ゼロとした。78年に再開したものの、数十人規模にとどめた。
キノコ雲の傘の部分が、この「成田要員世代」だ。現在、だいたい52~57歳。終身雇用の同社では、ほとんど退職者もおらず、年功序列で昇進・昇格が決まるため、ほぼ全員が次長・副部長・担当部長・部長といった上級管理職になっている。これら上級管理職は平均年収1,500万円程度で、会社負担の法定福利費を含めた人件費は2,000万円にもなる。
競争が激しいソニーや松下といったメーカーでは、こうした人件費はリストラの対象となり、既に50代でラインから外れた社員の多くは、希望退職に募集する形で会社を去っている。価格に転嫁すると会社が潰れるからである。
一方、航空業界では、米国と異なり、日本は規制緩和がまったく進まない。国別の航空市場では米国が世界1位、日本もそれに続く2位と十分な規模があるにもかかわらず、国内市場が寡占状態のため、高い人件費コストは運賃に転嫁され、消費者が負担することになっている。
◇上が詰まって、若手に権限がない
若手社員にとって問題なのは、こうした50代社員がポストを独占することによって、なかなかポストに就けず、権限を持って仕事にあたることができない点にある。適度な人材の流動性は組織の活性化に不可欠であるが、「身につくスキルは、潰しがきかない」(社員)ため、転職していく者もほとんどいない。
組織も、成田要員世代に合わせて作り替えられた歴史がある。かつては、部の下に課がある一般的な構造で、3級職が課長、2級職が次長、1級職が部長、とシンプルであった。だが、社員の高齢化により、課長の上の次長クラスが増加。そこで、80年代に、次長であっても課のライン長を務められるように、課の名称を「グループ」に変更。課長と次長をひとまとめにしてグループのライン長を「マネージャー」と呼ぶことにした。
一方、パイロット職が所属する「運行本部」において、JAL経営サイドはスト回避のために1970年に機長管理職制度を導入、機長は全員が管理職扱いとなった。だが、実際にはパイロットとして飛ばなければならないので、不在がちのパイロットのライン部長を補佐・代行する地上職という位置づけで、事務系の総合職が「副部長」というポストで送り込まれていた。
「管理職である機長を管理する以上、部長クラスである1級職の人間でないと務まらない。結局、2級職である次長クラスが、1級職の副部長として送り込まれた。こういう形にするしかなかった」(社員)。
しかし、この副部長というポストは、社員の年齢が上がるとともに、運行本部以外でも、どんどん増殖した。それまでは、1級職は原則として部長であり、部長への昇格はハードルが高かったが、副部長職ができたことでタガが外れたのだ。1級職の副部長が増えるに連れ、副部長がグループ長を務めるようになった。
その結果、組織の最小単位であるグループのラインマネージャーは副部長クラスとなり、2級職の次長や、3級職の課長は、ヒラ社員同様の役割となってしまい、権限を持てなくなった。
しかも、1級職になると定年を過ぎて、62歳まで在籍できる規程があり、担当部長的な役割で、組織に残ってしまう。ますます、若手世代が入り込む余地がなくなった。今では、グループは、せいぜい10人弱であることが多いが、そのうち8人が課長以上の管理職というグループも珍しくない。管理職とは名ばかりで、管理する社員は誰もいない。
◇若手は現業部門に出向
本社には、若手がほとんどいない。それでは、どこにいるのかというと、新入社員をはじめとする若手社員は、空港の現場やセールス部門に出向している。これらは、既に別会社化され、関係会社が運営している。
事務系では、グラウンドスタッフ関連は各空港ごとに作られ、たとえば羽田には「JALスカイ東京」、伊丹なら「JALスカイ大阪」で、接客やチケット管理など空港での地上業務を行う。貨物運送部門では「ジャルカーゴセールス」。セールス部門は「ジャルセールス」で、海外旅行の「ジャルパック」、国内旅行の「ジャルツアーズ」などと一緒に、座席販売(代理店への営業が主)を行う。
技術系は、ドッグ整備でエンジンや油圧、無線などの点検・整備をする。その後、ライン整備(運行前点検)を担当する。朝から晩まで点検をするが、シフト勤務が基本である。
JALは、こうした現場業務を本体から切り離し、グループ会社のほうで採用することで給与水準を抑えている。そして、本体の社員は、修行の一環として、これらグループ会社に最初の6年程度は出向して、グラウンドスタッフとともに働き、その後は本体の各部に戻ってゼネラリストとしてのキャリアを歩む。一方、分社側で採用された社員は、ずっと現場業務を続ける。
昨年まで職種別で募集していた客室係の総合職は、接客だけでなく機内サービスの企画なども行う「ステュワード」だ。要するに客室の幹部候補生で少数を分けて採用していたが、2006年度からは事務系の枠内で一括して採用することになった。
■日本航空インターナショナル http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=338
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登録日:2007年 02月 25日 13:29:07
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- プロフィール

- 渡邉 正裕
- (男)
- 1972年05月26日
- MyNewsJapan
- (株)MyNewsJapan代表取締役、編集長、ジャーナリスト。慶應義塾大学総合政策学部にて政治学、政策過程論を専攻。卒業後、日本経済新聞社にて1,000本超の記事を日経各媒体に執筆。外資系コンサルティング会社を経て2004年、起業。2006年、有料会員1千人超となり、採算ベースに乗せる。著書に『これが働きたい会社だ』『企業ミシュラン』『これが本当のマスコミだ』。
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