一生転勤族の会社
【東京 16日 AFP】日産自動車のカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)社長は16日、「業績不振」の打開策として、人事異動を発表した。
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(c)AFP/Toru YAMANAKA
異動につきものなのが、勤務地の移動、つまり地域間移動である。企業の場合、一生転勤族となってしまうパターンは、そのビジネスモデルによって多くが決まる。
社員の分際で勤務地の希望を言うなんて100年早い、と本気で思っている会社群は、いまだに多い。全国各地に拠点を持っており、そのビジネスモデルで古くからやってきた成功体験があるため、いまさら転換するわけにもいかず、ずっと引きずっている。
職種でいうと、営業や調達の機能を担っている人たちが多い。業種では、新聞社、通信社、ブロック(関東、東北、関西…)の枠内に収まらない広域の営業エリアを持つNTT各社や、JR各社などだ。JR東海なら、東京(品川)と名古屋の両方の本社を行ったり来たりとなる可能性が高い。JR東日本でも、支社が仙台、盛岡、新潟…と広域にわたっている。シティバンクは北海道から九州までの支店間で転勤が発生する。
◇希望を通せば、残っても居づらくなる
私と、ほぼ同年に社会人になった人たち(96、97年入社)をみていると、ここ数年で、やっと東京に戻ってきた人は多い(キリンビール、共同通信、NHK)。また、戻れずまだ地方に残っている人(毎日新聞)、異動希望が通らず、東京に戻れずに辞めて、結局、地元に再就職した人(旭化成)もいる。聞いてみると、マスコミはある程度、覚悟の上だった人が多いが、それ以外では、想定外だった人のほうが多数派だ。
90年代後半のある年、富士通の新卒入社組は、最初の赴任地が、地方と東京で半々だった。「東京の有名大学卒だと東京に配属される傾向が強く、最初に東京に配属になると約10年は東京のままです。その後は、主に部長との人間関係で決まりますが、地方に転勤になると出世コースから外れるケースが多い」(若手営業系社員)。
理系院卒で、同社を2年半で辞めた20代の元社員が言う。「地元の大阪で働きたかったのですが、初任地は、出向先の会社があった静岡。1年後に名古屋。1年ごとに転転とさせられるのが嫌で、退職の意向を伝えたら、人事も探してはくれました。でも、わがままを通すと社内的に伝わって、残っても居づらくなる。今は大阪地場の会社に転職しました」
「同期で、親子2人暮らしだから東京で働きたい、と強く希望していた人も、結局、大阪になっていました。みんな、東京で働きたいのに、地方に配属になる人が多い。1人の希望を聞いてしまうと収集がつかなくなるから、人事としては前例がないことはやりたくないんでしょう」(同)
◇一生、転勤族の新聞記者
新聞社(全国紙)は、若干、地域やサイクルが異なるものの、一生、転勤族の生活をまぬがれない。朝日新聞社では、まず初任地が地方支局で、最初の10年で、記者1人の通信局や、4つの本社(東京、名古屋、大阪、福岡)も含め、4~5箇所を移動するのが一般的だ。「自分は10年で5箇所でした。典型的なパターンは、2つの支局→九州経済部(西部本社)→東京本社→若手教育係として支局」(中堅社員)
朝日では、中堅社員以降になると、会社のローン支援を受けて住宅を購入する社員が多い。なぜかというと、住宅購入者に対して、3千万円を上限に1%の金利で融資して貰えるからだ。3千万円を超えた分についても、利子補てん型のローン制度があり、「朝日信用組合」が融資してくれる。担保は退職金だ。「ローンを組んで都内近郊に家を買うと、地方に飛ばされることが多い。人事部に社内ローン利用者のリストがまわっていて、そういう人はもう会社を辞められないから、安心して転勤させることができます」(元社員)
朝日に限らず、大企業の人事部は個人情報を利用して、イタいところを突いてくる。結婚したり、マイホームを購入したりすると、あまり人気のない地域に異動となることは多い。これは、確率的に、会社を辞めづらくなったことを意味するからであり、会社側にとっては合理的な判断といえる。
読売新聞社の場合、東京本社で採用されると、東京本社管内(関東より北)にある県庁所在地の支局、つまり仙台支局や札幌支局など(1~2年)、県庁所在地以外にある支局や通信部(1~2年)、県庁所在地の支局に戻って勤務(1~2年)を経て、6年目に本社に帰るというコースがほぼ決まっている。通信部とは、住居一体型の小さな拠点で、そこにいる間は、たった1人で住み込み、公私混同の日常を送ることになる。
毎日新聞の場合は、転勤のルールがほとんどなく、入社後10年経っても地方を転転としていることも多い。日経の場合も転勤族には違いないが、スタートが東京本社か大阪本社からとなる場合が多く、3~4年ごとに、地方支局との、地域間移動を伴う転勤を繰り返す。サイクルは「地方支局は3年」が多い。
結局、仕事があるところに人を送り込まざるを得ず、社員の生活など考える優しさは企業にはない。勤務地限定制度や、2箇所限定制度をつくってしまうと、人事はますます人員配置で苦労するので、やりたくない。それならば最初から、勤務地情報について情報公開をすればよいのだが、一切しない。地方滞在は最大何年か?定期異動は何年サイクルであるのか?東京勤務比率は何%か?…。人事としてはフリーハンドを持っていたいので、余計なルールは作りたくないのだ。権限を手離せば、社内的な地位も下がる。地方分権が叫ばれつつも権限を手離さないで粘る中央官僚と同じ、部分最適の発想である。
◇行ったり来たりの商社マン
大手新聞の記者は東京以外での勤務を明らかにネガティブにとらえているが、大手商社は東京以外での仕事、つまり、そのほとんどを占める海外勤務を望んでいる。これは待遇も休日も、圧倒的によいからだ。三井物産では、俗に社内では、「海外に行けば、給与2倍、休み5倍」などと言われているという。
確かに、1986年にフィリピン・マニラで起きた同社支店長誘拐事件のような危険も伴うものの、「危険地域手当」「ハードシップ手当」などの加算が大きい。地方に行けば「みなし」の残業時間が減って待遇が下がるのが当り前の新聞社とは、大違いだ。通常、入社10年目までに、多くの社員が1回は海外勤務を経験し、その後も、行ったり来たりを繰り返す。
「モチベーション維持のため、短期間でグルグル回していく方針。だから、海外にずっと駐在していることはない。通常、1箇所に4~5年もいれば長く、7~8年いると警告が出て、10年超える人はいない」(中堅社員)。この点では、むしろメーカーの海外駐在員のほうが一回の海外駐在期間は長い傾向がある。メーカーは海外駐在する一部の社員と、一生国内にいる大多数の社員に極端に分かれるが、商社はほとんどの人が一定期間、海外駐在員を経験するのが違いだ。
◇大都市か田舎か
同じ転勤族でも、転勤先となる都市は、会社によって異なる。たとえばシティバンクは、確かに転勤する可能性はあるが、支店が大都市にしかなく、地方に転勤しても田舎に行くリスクはない。ここは、日系の金融機関と大きく異なる。
日系の大手金融機関(都銀、生保、損保)は、全国に支店網が張り巡らされているため、田舎勤務のリスクが高い。しかも、出身大学の偏差値によって、一流大学卒は東京や大阪など大都市勤務比率が高い傾向が顕著にみられ、そうでない人は、よほど成果を出さない限り、一生、支店勤務でノルマ漬けから抜け出せない生活が続くこともある。
◇意外に広い営業地域
地域分社制(@)の広域版であるJRやNTTは、意外に転勤先となり得る地域が、広域にわたっており、@とは区別して考えるべきだ。
JR東日本では、事務系で入社すると、確実に5年間は、最初に配属された支社がある地域に住むことになる。北海道にはJR北海道があるが、東北はJR東日本に含まれるため、盛岡、秋田、大宮、仙台、新潟、水戸などの支社に配属される可能性があり、たとえば最初の配属が盛岡だったら、その地域の駅で1年間、駅業務を経験し、その地域で車掌を1年、運転士を1~2年、そして盛岡支社でオフィスワーク。
「だいたい7~8年間、30才前後までは、異動がありません。最初の地域の配属は、おおむね希望に沿うように考慮されますが、だいたい関東が半分、東北など残りが半分。30代前半に、違う支社や本社へ異動するのが一般的で、本社に一度も行かない人もいます」(若手社員)。JR東海も、名古屋から東京まで、営業地域が広く本社機能も名古屋と東京に分散しているため、総合職だからといって1箇所の本社勤務が続くわけではない。
インフラ系では、航空(JAL,ANA)では、総合職ならば、全国の空港がある場所や営業支社がある場所への異動が、かなりの確率で発生する。
勤務地は、公私の人的ネットワークの広がりや維持との関係が深い。特に地方勤務が長いと、その地域での人脈は、その地域に骨を埋める覚悟があるならば役に立つかもしれないが、いずれ東京近郊に戻りたいと考えている人にとっては、ほとんどが無駄な人脈になりがちだ。本来、都会にいた場合に築けるはずの人間関係が築けなくなる、という機会ロス(オポチュニティー・コスト)を考えると、想像以上にロスが大きい。
■参考:勤務地を選びやすい会社、一生「転勤族」の会社
http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=619
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登録日:2007年 03月 26日 17:01:48
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- プロフィール

- 渡邉 正裕
- (男)
- 1972年05月26日
- MyNewsJapan
- (株)MyNewsJapan代表取締役、編集長、ジャーナリスト。慶應義塾大学総合政策学部にて政治学、政策過程論を専攻。卒業後、日本経済新聞社にて1,000本超の記事を日経各媒体に執筆。外資系コンサルティング会社を経て2004年、起業。2006年、有料会員1千人超となり、採算ベースに乗せる。著書に『これが働きたい会社だ』『企業ミシュラン』『これが本当のマスコミだ』。
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*連絡先:info@mynewsjapan.com
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