なんのために焼いているのか

スマトラ、ボルネオの煙害、周辺国からも鎮火要請 - インドネシア

【ジャカルタ/インドネシア 28日 AFP】スマトラ(Sumatra)島およびボルネオ(Borneo)島の森林火災などによる煙害がマレーシアやシンガポールにまで及び、両政府はインドネシア政府に対し、煙の発生源すべての消火を要請した。写真は28日、煙霧に包まれる首都ジャカルタ(Jakarta)の高層ビル街。(c)AFP/Jewel SAMAD


AFPBB News


取り上げた写真は、煙害で困っているジャカルタの都市風景。

表向きで言われているところの原因は
森林火災、それも焼畑によるものだという。

さらに、
大統領は焼畑をした農民を起訴するかも、などという話もある
模様。

この大統領の話を取り上げた写真の現場・リアウ州は、
インドネシアの大手の製紙会社が、
かなりの広さの原生林をプランテーションに換えていっている
場所としても有名。
そこで植えられるのは、製紙原料となる樹種だけだ。
採れたパルプ原料は、
ニホンでも紙となり、大量に使われている。
過去記事参照)

その森林を、本当に焼いているのは「誰」なのか。
そして、「誰のために」焼いているのか。

しかし、未だに
熱帯林が減っているのは焼畑のせい、という論調もあるようなので
(コスモ石油のコマーシャルなどに見られるように、
マスコミは何かとその論調で通したがっていた、それは何故?)
その、(ニホンジンにとって)都合のいい話を、検証してみる。
.
.

◆ ◆ ◆

さて。
結論からさっさと言ってしまうと、
インドネシアの森林が焼かれているのは、
別に自作農が焼畑をつくるために焼いているわけではない。※1

もちろん、それが全く無であるわけではないが、
それよりもはるかに多くの森が
産業植林・プランテーション造りのために焼かれている。

火入れの後、更地となった元々の森林に植えられるのは、
油を採るためのアブラヤシであり、
紙原料となるパルプを採るためのユーカリ等である。
森林火災の跡地は、プランテーションに変わる。

これらはいずれも輸出品目。
地元民が生きていくための食べ物ではない。

もちろん、プランテーションが営まれることで
雇用が派生することの意味はあるのかもしれないが、
それよりも被雇用者になることで
自律した生活を営めなくなる弊害の方がはるかに大きい。

今回は、そうした労働や人権と言った話は、端折る。


輸出して儲けるのは誰か。
輸出先は、どこか。

ニホンなど先進国といわれる国のヒトビトが、
安い製品が買えると喜んでいる背景には、
そうしたかたちで矛盾が押し付けられている場がある、という
現実。

そのことに目をつぶることでトクをするのは、
どんな立場のニンゲンなのか。

本来きちんと報道されるべきは、そこなんだが。

なぜか、この作業をやっているのは、
ほとんどの場合環境NGOだったりする。※2

まあ、ともかく。


◆ ◆ ◆

加えて言えば、
プランテーション用として森林を伐り拓く前に、
そこの森をちゃっかり木材として売り払うということも、やっている。
つまり、貴重な原生林を伐り払って木材として売る、ということだ。


◆ ◆ ◆

さて、その昔(だいたい80年代から90年代の初め頃)、
森林火災の「加害者」というレッテルは
地元の先住民族が負わされていた。
主に焼畑農業をするのが彼らだ、というハナシから
そう言われていたのだが、
遡ること5000年の歴史を持つと言われるほどはるか昔から
ずっと焼畑農業を行ってきた先住民族が、
20世紀の終わりになって
いきなり急激な森林破壊を引き起こすほどの
変化を遂げたりするようなことは、特に何も起こっていない。

実際には、インドネシア政府が取った「移住政策」により、
元々の焼畑農業のやり方を知らない移住民たちによって、
無秩序な火入れが行われるようになり始めたこと、
それが原因(のひとつ。全部ではない)としてあったのだが、
そうした移住政策の問題点について触れるメディアは
ほとんどなかった。

また、そうした分かりやすい構図を隠れ蓑にして、
もっとぶっちゃけて言えば
「悪いのは先住民族たち、あるいは地元民たち」ということに
しておいて、
木材伐採会社などは原生林を切り払い、お金に換えていた。
その方が、何かと都合がいいもんだから。


◆ ◆ ◆

今、そうやって荒れてしまった熱帯の森林を、
ダメ押しするかのように更地にして植林し、
プランテーション化している。

木材を目的とする商業伐採であれば、
確かに森林環境は破壊され生態系も傷つけられるが、
少なくとも皆伐にまで至ることはない。
4割から、運がよければ6割くらいは、その地に緑は残る。

しかし、プランテーションは木の畑づくりゆえ、皆伐は必須。
全てが伐られ、焼き払われる。

90年代にはアブラヤシ、
そして今はユーカリなど製紙原料となる木が
バンバンと植えられている。

もちろん、アブラヤシの植林もまだまだ盛んだ。
アブラヤシは、石鹸や洗剤、シャンプーの原料としてはもちろん、
揚げ油やお菓子の材料など食品としても、幅広く使われている。
代替品がない上に消費の伸びている分野でもあることから、
単純な不買運動などでは構造を止められないという難しさもある。※3

製紙業界についても、似たような構造が続く。
紙の消費量は世界的に伸びており、
需要あるところ供給あり、の構図ががっちりとのしかかり、
この国の森林を皆伐し続けている。


◆ ◆ ◆

しかも今、取り上げられているのは、そればかりではない。

もっとトンデモなハナシすら、耳にするようになった。

アブラヤシを「エコ燃料のバイオマスに」というハナシ。
最近、とみに大きく言われるようになってきている。
たとえばこちら
(報道がいわゆる「エコ媒体」であるところが泣ける)
また、こちらも。

これは、
二酸化炭素の排出を削減するエコ燃料を生産するためには、
原生林を全て破壊しても構わない、
そこの生態系を二度と失わせてしまっても構わない、
そこで暮らす、そこでしか生きられない生物種を
絶滅させてしまっても構わない、
というような、ブラックユーモアだろうか
(というか、ユーモアなんぞゼロのハナシだが)

視野狭窄というか、木を見て森を見ずと言おうか。※4


◆ ◆ ◆

多くの場合、森林破壊には、それを行うことで
(主に金銭的に)得をする層がいる。

それは大抵、地元の庶民というよりも、
大手企業であったり、現地の政治家たちであったり、
先進国といわれる国に暮らすヒトビトであったり、という。

そうした、自分にとって耳の痛いハナシを、
一旦脇に置いといていいような気にさせてくれる、
「あいつが悪い」というシナリオ。
ここに飛びつきたいという自分の心理に
疑いの目を向けることから、まず、始めてみないことには、
森の減少はいつまで経っても止まらないだろう。


※1:この件について、簡潔にまとまっているのはコチラの説明
jatan熱帯林行動ネットワークの「熱帯林Q&A」

※2:とりあえずこの件については、フェアウッドキャンペーンを紹介しておく。
この記事で解説しているようなことは、「エコ」好きの報道関係者には基本的に理解しておいて欲しいところ。
http://www.fairwood.jp/printdoc/prdc_mel18_01.shtml

※3:過去記事を参照
http://www.actiblog.com/yamaneko/4125

http://www.actiblog.com/yamaneko/4292

※4:コチラも過去記事参照のほど
http://www.actiblog.com/yamaneko/12111

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登録日:2006年 09月 07日 23:20:58

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