2006年 08月 20日
記者の勉強不足
ペットだったオランウータンは自然環境へ適応できるか - インドネシア
【ジャカルタ/インドネシア 17日 AFP】ペットとして飼育しきれなくなった個人がジャカルタの動物公園に寄付したオランウータン3頭が、自然の生息環境へ戻されることとなった。
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(c)AFP/Adek BERRY
写真だと、このオラン・Bijayは虐待を受けていた模様。
(頭部のデコボコは、殴られた痕と推測される)
保護されて、何より。本当に。
とはいえ、13頭のうちの3頭のみ、という話。
残りの10頭の状態が心配でならない。
さて、タイトルの通り、事実に反する内容を含む説明が
写真に添えられている。
よって、訂正を入れておく。
◆ ◆ ◆
>これまでに例のない試み。
と、あるが、
飼育オランウータンの野性復帰・いわゆるリハビリといった
取り組みに関しては、
1970年代から、世界的に有名なビルーデ・ガルディカス博士が
研究と同等か、あるいはそれ以上に熱心に取り組んでいる。
もちろん、この記事にあるような、
ヒトのペットとして飼われていた、あるいは
サーカスで見世物にされていた、といったオランウータンを
数多く保護。
野性に戻すための訓練プログラムを、研究と同様、
頑張ってきている。※1
◆ ◆ ◆
また、もう一人、やはり70年代の終わりから
オランウータンの野性復帰のプログラムを行ってきた
モニカ・ボルナーも有名な例だろう。
『森へお帰り、オランウータン』(1987年 早川文庫、
現在は古書店などで探さないと入手できない模様)では、
せっかく保護したオランウータンの野性復帰の困難さ、
失敗例なども数多く紹介されている。
ボルナーさんは、WWFの支援で、この活動を行っている。
◆ ◆ ◆
さらに、ニホンのヒトが、
観光やらエコ・ツーリズムやらで
「オランウータンのリハビリテーション施設」を
現地で見学している。
(自分の友人や知り合いたちも、マレーシアやインドネシアで、
こうした施設に見学に行っている)
検索すれば、そうした経験談の類はすぐにひっかかる。
マレーシア国のコタキナバル総領事館(コタキナバルは州都の名)
の日本語による紹介も見つけることができる。
◆ ◆ ◆
もちろん、この取り組み自体は
非常に大切なこと、意義深いこと、力をこめて応援したい事柄
ではある。
とはいえ、紹介記事のトーンが、どうも
「初めての試み」だから大事、という流れで
記事を書こうとしている様子が見え見え。
基礎的な情報の欠如、調査・勉強の不足が
あまりにもはっきりしているのは、失笑を禁じえない。
こうした事実誤認を情報として盛り込んでいては、
記事全体、あるいは媒体そのものへの信用を落とすことに
ならないか。
これが珍しい取り組みであろうとなかろうと、
オランウータンをペットとして飼うことや
見世物にすること自体、
非常に問題が多い(つか、間違っている。
野生動物はペットにはなれない。
イヌはペットになるがオオカミは無理、というのと同じ。
いくら外見が可愛かろうと、野性生物は家畜やペットとは違うのだ)。
動物園での虐待はなかったのかどうか、
そして残る10頭のオランはどうなるのか。
できればこの10頭も、早く野性復帰のための手順を
整えてやるべきではないのか。
強調するとしたら、まずはその点だろう。
同時に、こうしたアホなことこの上ない
オランのペット的な飼育を止めさせるための努力や
救い出したオランたちをどうリハビリしていくかという世論の
合意形成のための機会として、
今回の写真記事をもうちょっと工夫できないものか。
※1:いい塩梅に、ガルディカス博士の紹介記事を発見。
昨年2005年の12月26日・読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/tabi/world/abroad/20051226tb11.htm
ちなみに博士の著書は、翻訳ものとしては
『オランウータンとともに』(新曜社 1999年)、上下巻別、のみ。
それとは別に、
『彼女たちの類人猿』(平凡社 1993年)などの紹介ルポがある。
ガルディカスの視点が、「アジア人として」共感できる、ことがはっきりと指摘されている意味でも非常に意義深い一冊。この本については、別に機会があれば取り上げたいところ。
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登録日:2006年 08月 20日 22:11:10
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