2007年 01月 14日
数さえ増えればそれでいいのか
【ハルビン/中国 10日 AFP】中国北部やロシアに生息しているシベリアトラ(Siberian tiger)の個体数は400頭を下回るとみられ、絶滅の危機に瀕している。哈爾浜(ハルビン、Harbin)市の東北虎林園(Siberian Tiger Park)では300頭以上を保護しており、積極的な繁殖活動が行われている。写真は7日、同施設で保護されているシベリアトラ。(c)AFP/Peter PARKS
このところこのAFPの写真で増えている、
中国政府による絶滅危惧種の人工繁殖関連の記事。
たとえば、
1月4日のパンダの件や
1月9日の危機の話、
そしてパンダを香港にプレゼントする(?)という1月11日の話、
さらに新しい、1月14日付のシベリアトラ。
いずれも「困ったことは科学技術でちょちょいと解決」的なノリで、
決定的に重要なことが抜けている。
と、思う。
少なくとも、このAFPの伝え方というか報道のノリは、
一面性が過ぎるので、メディアとしてはちとバランスが悪い
と思う。
ので、今回この件を取り上げてみる。
とはいえ、多忙に押されて
これもしっかり調べて裏を取ったワケではないので、
別方面からの「いい」情報が入るようであれば、
以下に述べる自分の思い込みを(喜んで)訂正したい。
◆ ◆ ◆
さて。
多くの場合、何か過ちなり不手際なりが生じたら、
原状回復の努力はもちろんのこと、
どうしてそうしたことが起きたのか、
同じことを二度と繰り返さないための防止の努力を払うのが
本来取るべき行動の筋だろう。
例が適切でないかもしれないが、
その不手際の内容がいわゆる「犯罪」であった場合、
その罪を加害者が本心から悔い改めることはもちろん、
被害の回復
(もちろんそうできない場合の方が多いが、にしても)
と同時に、
類似犯罪の予防措置も、
併せて考えないといけない。
ジンルイがかかわる種の絶滅を考えた場合にも、
ある意味 同じ考え方を当てはめる必要があるだろう。
どうしてその環境破壊(種の絶滅の危機)が
引き起こされたのか。
どうやって原状回復を図るべきなのか。
今後の予防措置はどうやって取ればいいのか。
これら3つの点は、いずれも
必ずセットで取り組みをしていく必要があるし、
それに穴があると場合によっては元の木阿弥
にもなりかねない。
◆ ◆ ◆
パンダの繁殖にしても、シベリアトラの話にしても、
いずれも
取り上げられているのはこの3つのポイントのうち
真ん中、原状回復についてのみの話だけである。
それ以外の要素、つまり、
理由の解明や今後の措置といった話は、
果たしてこの計画の中にどこまで盛り込まれているのか。
特に、今後の生息域の保全についての話が
全く聞こえてこないのは、
将来の大きな不安要因にもなりかねない。
しかも中国政府としてみたら、
1月11日のパンダプレゼントの例にあるように、
パンダは立派な外交戦略の道具でもある。
それを考えると、パンダの繁殖計画については、
環境配慮の観点から「のみ」の繁殖だとは限らない
(かもしれない)。
もちろん、それが100%の悪だとは思わないが。※
とりわけ、シベリアトラの減少の理由を考えた場合、
元の生息域である森林破壊が極めて著しいことも、
この種の数を減らしてしまった大きな要因である。
この点の対策をどうしているのか。
トラもまた、新たな外交資源として使い尽くされるのか。
まるで、
ヨウスコウワニを食らうかのように。
◆ ◆ ◆
困ったことは科学で解決、というのは、
科学者個人にとってはなかなか魅力的なテーマであるし、
また加害の当事者(別に中国政府だけが悪いわけではない
と思う。むしろそれ以外の要因もまたいっぱいあるのだから)
にとっては、
過去の己を反省するという心の痛手と向き合う機会を減らして
自尊心を高めてくれる、なかなか素敵なアイテムだ。
けれども、バケツに空いた穴を塞ぐことなく、
科学の力でバケツに水を注いだところで、
数的には過不足がトントンであったとしても、
それは本来の問題の解決になる、わけではない。
とりわけ、そのために殺されていく命があるのだとしたら、
たとえ新しい命が生まれることをもってしても
軽々しく埋め合わせなどと言えるような事柄ではない。
どうして、何故にパンダやトラが減ったのか、
その要因はどことどことどこにあるのか、
その要因を止める手立てには何があるのか
(複数の手法の可能性も含めて)、
さらに、それを改善したとして、今後その状態を維持するには
どういった手法が必要となってくるのか。
そうしたトータルな計画の中での繁殖計画であれば、
こうしてぐだぐだブログで茶々を入れることをせずに、
ただの動物好きとして大いに賞賛したいところなのだが。
本来の生息域の中で、数を徐々に戻していく
パンダやシベリアトラの回復プログラム、といった方向性は
どこまで配慮されているのか。
そうした話が一向に入ってこないのが、どうにもこうにも
不安をかきたててかきたてて
仕方がないのだ。
※:こうした場合、山猫通信社としては「動機の純・不純」は一切問わない。たとえ売名行為であろうと、対外的に見栄を張るためであろうと、そのおかげで当の絶滅危惧種が助かったり環境汚染が食い止められたりといった実利があるのであれば、その点を優先して評価することの方がはるかに大切であると考える。だいたい、本気の動機だなんて、他者からは窺い知れるものではない場合も多々あるものだし。
カテゴリー[ 絶滅危惧種 ], コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2007年 01月 14日 21:15:13
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◆屋号の「山猫」は宮沢賢治から。大阪に長くいたので時々関西弁が混ざることあり。
◆07年3月、ブログタイトルを一部変更。今後も、カメだけでなく、ワニやラクダやトカゲからも いろいろと学べるもんだろうと思いつつ、のてのてと更新中。
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