2007年 06月 21日
タスマニアの森の話(其の弐)
絶滅危機のタスマニアデビル、繁殖プロジェクトが進行中 - オーストラリア
【タラナ/オーストラリア 11日 AFP】「デビルがん」という悪性の顔面腫瘍性疾患により、絶滅の危機にひんしているタスマニア(Tasmania)島固有の種タスマニアデビル(Tasmanian Devil)の繁殖プロジェクトが、南部ホバート(Hobart)郊外タラナ(Taranna)の「タスマニアデビル保護公園(Tasmanian Devil Conservation Park)」で進められている。
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(c)AFP/Anoek DE GROOT
タスマニアの森の話(其の弐)
6月4日、5日に行われたタスマニアの森の話について、
先週のエントリ(其の壱)の続き。
6月14日
http://www.actiblog.com/yamaneko/37388
今回は、
タスマニア大学講師で生態システムが専門という、
農業科学博士のピーター・マクィランさんの講演録の
個人メモから。
ちなみにピーターさん、元々は昆虫が専門だったが、
もちろん生物全般に詳しく、且つとても話が面白かった。
本などが出たら売れそうだな、と思いながら聞き入った。
(ニホンにはタスマニアの動物本が少ないし)
写真のタスマニアデビルについての話も、もちろん
ガッツりと喰らいついた。
(なにせ相手は現地の専門家だぜ、べいべー)
◆ ◆ ◆
南半球にあるというだけではなく、
大陸のもともとの成り立ちなどもあって、
有名な有袋類をはじめ、
オーストラリアには固有種がたくさんいる。
タスマニアの場合、
オーストラリア大陸と離れた、「島」である。
そのため、タスマニア島だけの固有種もあれば、
オーストラリア本土で絶滅してしまった動植物が
ここでは生き残っているなど、
生物学的にも遺伝資源的にも非常に貴重な地域でもある。
それらの生きものの生息地とも言うべきタスマニアの原生林が
伐られちゃって、ええの? あかんやろ?
というのが前のエントリだったが、
じゃあ、どんな動植物がいるのか、というのが
ピーターさんの話になる。
◆ ◆ ◆
まずは、タスマニアの生物たちの基礎知識から。
タスマニアの島としての生態系の特長として、まず、
北海道よりも狭い島に、昆虫から哺乳類まで
およそ2万の固有種が数えられるという、
その生態的な豊かさがあげられる。
わけても昆虫は知られているだけでも7641種、
しかも、21世紀に入った今でも
まだまだ新種がざくざく発見されるというから、恐れ入る。
(ピーターさんとこの学生さんが、
あっさりと新種を見つけたりとかってことがあるそうだ)
未発見のものもいることを考えると、
この地がどれだけ豊かで細やかな生態系を保ってきたのか、
ということがよくわかる。
このほか、鳥類でも331種、哺乳類で86種というから、
かなりの数が狭い島にひしめいている、という感じなんだ……が。
ちなみに、古くからの生きものが生き延びていることも
タスマニアの特徴だったりする。
生きる化石と言われる生きものがいたり、ということもあるそうだ。
別の地域では5億年前の化石として発見されている生きものが、
ここではリアルの生きものとして生息している、というような例や
セミの先祖である鳴かないセミなども生息している。
とても古いタイプのクワガタもいる。
これらの貴重な生物が数々紹介されたのだが、
そこにも森林破壊の陰が忍び寄っている。
たとえば、
島の東北地方の森林にしか棲まない珍しいカタツムリなどは、
森林破壊の影響でその数が激減している。
また、大木の、木の朽ちかけたものを栄養とする
シムソンクワガタなども、
10年前にさらに新種が二種も見つかるなどという反面、
その生息地が狭められているものと心配されている。
◆ ◆ ◆
さて、写真にもあった、有袋類・タスマニアデビル。
かわいい顔をしているが、
その鳴き声が恐ろしいことから「デビル」とついたと
言われているのも、有名な話。
タスマニアデビルは、この10年で半減した。
しかも、写真の説明にある通り、
また各種の報道もなされているように、
今、タスマニアデビルには顔面のガンが流行していて、
それが原因で、
あるいは交通事故などで、
はたまた森林破壊を含めた生息地の喪失で、
5万頭ものタスマニアデビルが命を失ったのではないかと
推測されている。
いまや、レッド・データにも載ってしまっている。
この顔面のガンだが、主に接触によってうつる。
というのも、比較的知られている通り、
タスマニアデビルは大変アグレッシブな生きものである。
喧嘩などで接触し、病気がうつってしまう、というわけだ。
生息域が狭まった為、接触の機会が増えた、というのも、
問題を大きくしている。
んで、生息域が狭まったというのは、つまりは伐採なんかも
大きく影響している、というわけなんだが。
同じ病気は犬でもみられるそうだが、とても珍しいもので、
なおかつ犬の場合は命にかかわるものではないという。
他の種は罹患することはなく、
命にかかわるのもタスマニアデビルだけであるという。
これだけの激減ぶりから、
このまま放置していては20~30年で絶滅してしまうと
大きく心配されている。
この件について、
質疑の時間に、動物オタク全開で質問を繰り出した。
その内容は、以下の通り。
今、罹患していないタスマニアデビルだけを捕獲して
ノアの方舟よろしく、病気が収まるまで隔離しておき、
かつ繁殖をも試みる、という
タスマニアデビルの生き残り作戦が計画されている。
が、これに対しては、
その隔離した繁殖地の生態系に影響を与えるのではないか、
ということで反対する声も聴かれている。
この影響について、ピーターさんの個人的な見解でいいので、
どうするのが一番好ましいのかを教えて欲しい、と。
ピーターさんは、
移植地の環境配慮もあるが、やはりそれを言えないほど
タスマニアデビルの状況が悪いのだ、ということ、
そして「藁をも掴む」思いで、全ての手を尽くすべきである、
やれるだけのことはやるべきだ、と力説。
それだけ追い込まれている、ということを
憂鬱な思いで噛み締めた。
◆ ◆ ◆
同じく哺乳類として、
有袋類であるオオフクロネコも絶滅の危機にさらされている。
というのも、オオフクロネコは、
高い木、密林が好きな生きもの。
器用にも木に登り、鳥などを狩り、そして木の上に棲むという。
その木が、減ってきているのだから、
オオフクロネコにとって世の中は難しい。
また機敏な生きものだが、
それゆえなのか交通事故も多いという。
鳥類では、オトメインコとオナガイヌワシの話も興味深かった。
タスマニアのオトメインコは
世界のインコの中で一番長距離移動を行う。
(確か3000キロだったか、数字メモが見当たらない;汗)
オーストラリア大陸にもいる渡り鳥だ。
ユーカリの受粉に欠かせない媒介者でもあるが、
いまやその数は1000つがいほど。
エサが減っていることも大きく影響して、
繁殖数も減っているという。
また、早く飛ぶという特性があるのだが、そのためなのか
交通事故や建物への激突などによる死亡も多いという。
世界最大のワシの一つ、オナガイヌワシも、
絶滅が心配されている。
まあ、猛禽類は、
ほとんどどこの地域でも、生息地の汚染や破壊、
はたまた繁殖率などの関係で、
希少種になりやすい傾向が高い。
タスマニアのオナガイヌワシの場合、
森林伐採に伴う生息地の減少のほかに、
農家などによる狩猟が圧力となっている。
まあ、農家にしてみたら家畜を襲う害鳥といったところ
なんだろうか。
んでもって、他の地域の猛禽類と同じく、
営巣や繁殖に関してはとてもデリケートなので、
人影があると、もうそれだけで巣を放棄する。
そのため、オナガイヌワシの巣の周りの10ヘクタール以内は
ヒトが入ってはいけない、とされている。
が、問題は決してこのことが守られているわけではない、
といったあたり。
また、巣となる高木や営巣にいい環境が減っているため、
巣を巡る競争が凄まじいというのも、心配材料となっている。
もう一つ面白い生物が、世界最大の淡水ザリガニ。
これはタスマニアの北部にだけ棲む固有種で、
最大で6キロもの重さになるという。
水の冷たい所、なおかつ流木の陰がないと生息が難しく、
伐採の影響で川底に堆積物ができ、流域が減る
といったかたちでその生息域を狭められている。
写真で見てみたが、これ、ほんまに6キロあるんだろうか?
どうにも信じ難い……てか、本物を一度きちんと見てみたい。
(大きさの比較がない写真だったので、余計)
◆ ◆ ◆
さて。
どの地域における種の絶滅の懸念でも出てくる話だが、
ここタスマニアでも生息地の「分断」が
大きく影響を及ぼしている。
実際にタスマニアの中で実験研究をしてみたところ、
こうした「分断」した環境下の場合、
水生生物らはかなり数を減らしたという。
やはり水環境というものはそれだけデリケートなもの
ということだろう。
対照的に、サソリはあまり数を減らさなかったそうだ。
また、区画の形も問題を発生させる。
一定量の森林を残して周りを伐り払うという選択をした場合、
伐り払った場所から30メートル内部までは
外部の影響を受けるということが判明した。
つまり、60メートル幅の森林を残したとしても、
左右から30メートルずつ影響されるので、
とても「森林を保護した、残した」とはならないのだ。
◆ ◆ ◆
地域の古木も、その地の環境維持に大きく役立っている。
100年生の樹木と450年生の樹木とでは、
圧倒的に450年生の樹木の方が生態環境が豊かだ。
古木だから切り倒して幼樹を植えて更新を、というのは
お門違いというもの。
これは、古木の方が、
動物たちが暮らせるほどのくぼみがあったり、
といったことによる。
樹高も容積も、大きく差がある。
たとえば、
タスマニアにいるコウモリは古木に棲むので
(洞窟は寒すぎてタスマニアのコウモリたちは棲めない)
古木が無いと困る。
古木が棲み処ということでいえば、
オポッサムやフクロウなども同様である。
また、ジェフさんも話していた
外来のユーカリを植えている点についても、
在来ユーカリへの影響はもちろんのこと、
そうした在来ユーカリのもとで暮らしてきた
昆虫や動物にどういう影響が出るのか、ということが
とても心配されている。
◆ ◆ ◆
このほか、昆虫についてもいい話しがいっぱいあったのだが、
ともかく今回はタスマニアデビルの移住計画が心配というのが
管理人の一番の関心事であったので、
この話は割愛。
(タスマニアの森と紙の話、もうちょっとだけ続く)
※;タスマニアデビルの関係報道は、まとめて<続けて読む>に収納。
.
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登録日:2007年 06月 21日 01:28:46
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