2007年 06月 26日

大手マスコミはちゃんと取材をしとるんか

ヤギも木に登る

【5月27日 AFP】モロッコ南西部の町タルーダント(Taroudant)ではこの時期、ヤギがアルガン(Argania spinosa)の木に登り、苦い実を食べる様子が見られる。アルガンはモロッコ南東部の半砂漠地帯に生育する樹木で、8メートルから10メートルの高さまで育ち、およそ200年の寿命を持つ。アルガンの森は80万ヘクタールの範囲に広がり、ユネスコ(UNESCO)により生物圏保護区に指定されている。(c)AFP

AFPBB News


黒ヤギさんたら、木の実を食べた~♪
アップで見ると、こいつ、かなりオモロイ顔をしとる。

ヤギが紙も食う、というのは、いまはもう昔の話。
実際、
今の紙は工業製品として化学薬品なんかをばんばん使って
作られているものだから、
昔の、みつまたやこうぞ、あるいは藁なんかを使っていた頃と
同じように食わせるわけにはいくまい。


で、間が飛んだけれども、
タスマニアの森の、ちょっとだけ続きのテーマから。


前回まで、
タスマニアの原生林を伐り払ってそれを紙の原料にしている、
(んで、そのお得意さんは日本製紙株式会社だという、)
という話を2回ばかりエントリとしてアップしたが、
その日本製紙がニュースソースとなっている新聞記事などが、
この春、何度か「ジャーナリズム」のかたちをとって
ネットなどにも流れている。

たとえば、こんな感じ。
4月24日 朝日
実は燃料大量消費、100%再生紙を廃止へ 日本製紙
http://www.asahi.com/life/update/0424/TKY200704240323.html

6月8日 R25(yahoo! 経由)
100%再生紙やゴミ分別の常識は、エコじゃなかったの?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070607-00000007-rec_r-soci

6月11日 日経BN
古紙100%配合でCO2は増加? 日本製紙が再生紙を見直し
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20070608/126867/


ええっとさ。
別に、タスマニアの原生林に関心がなかったとしても、
これ、
「日本製紙」以外のソースにどこまで取材、ちゃんとしとるのか、
というのがすぐに疑問として浮かんでくるんだが。

特に、日本製紙のニュースリリースと見比べてみたりすると。
4月24日 日本製紙(ニュースリリース)
再生紙ラインナップを再編、古紙100%配合製品を廃止
http://www.np-g.com/news/news07042401.html

裏を取る、というのがマスコミさんの仕事の一部、じゃないんか、
ふつー。


だってさ。
ニホンではいまや、古紙の値段がとても値上がりしていること、
そして古紙の多くが中国へと輸出されていて
ニホンでの古紙は品薄状態にあることなどは、
それなりに新聞を読んでいたら、幾らでも出ているわけだし。


主要な原料の入手が困難になってきている、
(高いから、また品薄だから、という理由で)
という背景がある中で、
こういう記事が出された、ということは、
原料を変えるしかない、その理由付けのひとつに
温暖化云々を使った、
というふうに見るのが妥当なところなんじゃないかな、と。


◆ ◆ ◆

ここまで斜に構えた見方をしていなかったとしても、
同じ疑問を抱いた人びとはいた。
しかも、古紙にずっと関心を寄せていた人びとだ。

古紙問題市民行動ネットワーク(以下「古紙ネット」と略)では、
http://homepage2.nifty.com/koshi-net/
この話の出た頃から
日本製紙の言い分に疑問を持っていたので、
日本製紙に取材に行ったそうだ。

その経過は、古紙ネットの会報(印刷物、ネットはなし)に
詳しくある。
そこから少しばかり紹介するが、
少なくとも、
民間のボランティア団体・NPOの人の取材の方が、
上にリンク張ったマスコミ3社の取材よりも
はるかに充実している、ということだけは強調しておこう。

ちなみに、古紙の値上がりや品薄云々についてのテータも、
この古紙ネットの過去記事に
幾らでも見つけることができる。
http://homepage2.nifty.com/koshi-net/trend/trend.htm


◆ ◆ ◆

取材日はわからないが会報の発行日は6月1日なので、
恐らく5月には話を聞きに行ったものと思われる。
取材とまとめは、同ネット代表の中村さんによる。

ちなみに古紙ネットによる古紙利用の提案、
その土台となる理念は次の6点である。

【環境保全型の紙とは】
・古紙の混入率が高い
・環境に配慮した森林からのパルプを原材料としている
・過度な漂白をしていない
・つや出しのための化粧が少ない
・リサイクルしにくい加工をしていない
・有害性の疑いのある薬品を使っていない

こう定義づけている。

で、古紙ネットは
日本製紙の環境部局の人と広報の人とに話を聞いたのだが、
日本製紙側の結論をすげー簡単にまとめてしまうと、
結局は
「古紙配合によって二酸化炭素の排出が増える」の一点張り
ということに理由が絞り込まれていく。
これ、ニュースリリースでも話はだいたいこの通り。
いいのか悪いのかわからんが、視点にぶれはない(笑。

古紙ネット、取材の中村さんのまとめによると、
>「木材チップだけからつくる紙に比べて、製造工程で黒液を使えない再生紙は石油由来の二酸化炭素排出量が多い」ということに尽きる
とある。

温暖化以外の環境配慮について、どの程度考えているのか
その話は全く出てこなかったようだ。

たとえばそのまとめの中で、
>日本製紙のコンセプトで抜けていると思うのは、環境負荷からの「紙の白色度は高くなくていい」という視点です。
というツッコミもかましている。
流石だ。


◆ ◆ ◆

もちろん、紙の用途によっては
古紙100%では対応の出来ない分野があることも
よく分かっているし、
何が何でも全てが古紙、というのは現実的ではないことも
事実。

でも。

要は、古紙を原料として使いづらくなったから
ちょっと別の原料を入れたいんだけどもー、
というストレートな話を、
温暖化云々と絡めて言っているところが、
おかしいだろ、と。

たとえこれが全部事実で
温暖化対策になっているんだとしても、
じゃあ、その原料はどこからきているのか。
まさかタスマニアの原生林じゃあねぇだろーな?
という疑問も当然あるわけだし。
(だから、驚いて
古紙ネットさんが6月5日に講座に来てくれたわけだ)

これがタスマニアの原生林や
他の地域の原生林などでなかったとしても、
遠くから製紙原料を持ってくるというだけで、その分の
エネルギーは消費しているわけだし、
(伐採や現地加工、運送のための石油エネルギーね)
そうした分の二酸化炭素排出量は
どの程度勘定にいれてるのか、
というのも謎だ。

日本製紙のニュースリリースの図表では、
そこんところ数に入れていないようにしかみえないし。
運送分だけを考えても、
国内の古紙を集めるよりも、海外のパルプ持ってくる方が
石油を多く使っていることは確実なわけだし。


◆ ◆ ◆

さて。

懐事情の厳しい日本のNPOですら、
このくらいの取材はきちんとしている。
一方の、朝日新聞なりR25なり日経BNなりは、
ニュースリリースの孫引き程度で、
裏どりをしている気配すらない。

恐らく、
再生紙100%が温暖化対策にならないかもしれないという
ネタのインパクト、面白さ、新しさに驚いて、
そのまんま飛びついてしまったんだろう、ということも
理由の一つにはあるんだと思う。

既存のありがちなエコネタに飽きているとしたら、
これは「記事としては」面白くなるはずだから。


◆ ◆ ◆

しかし、タスマニアの森の話は聴きにくることなく、
大手企業のニュースリリースから引っ張って書いておしまい、
って、どうよ?
それで銭取って儲けてるとは、楽な商売だよな、これ。
 
こんなニュースリリースからの孫引き記事よりも、
日本製紙に
「タスマニアからのパルプを輸入しているのか
(しているとしたらどのくらいしているのか)」
「現地での原生林破壊のことをどの程度知っているのか」
「取引先のガンズ社が
反対派の議員を告訴・恫喝していることについて、
取引企業としてどう考えるか」
「タスマニアでの種の絶滅の危機や地元の市民の反対に
どう思うのか」
ナドナドのことを一言でも聞けば、
(別の意味で)面白いニュースができるはずなのに。
「タスマニアで燃やしている原生林の二酸化炭素は、
貴社の事業のどの部門で吸収しているんですか」とかさ。


なんだか、ここ2、3年で、
 温暖化対策
と書いてあれば、なんでもエコ、と思考停止するヒトビトが、
マスコミをはじめ、多くなってきているような気がするのは
気のせいか。

このエントリを思い出す。
オランウータンが絶滅しても、わたしは二酸化炭素の排出量を減らしたいんです
http://www.actiblog.com/yamaneko/29404


ちなみに、この古紙ネットさんの記事、ウェブにはないので、
ご興味のある方は
古紙ネットの会員になるなり、カンパをするなりして
支援かたがた情報を入手されることを
オススメする。


※今回、マスコミのニュースについては、過去記事への収納はなし。リンク切れまではリンクを飛んで確認を。

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登録日:2007年 06月 26日 15:09:24

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