2007年 07月 03日
「温暖化対策だから」と思考停止してしまう前に。
【6月23日 AFP】絶滅の危機にあるアオウミガメ(学名、Chelonia mydas)4匹が23日、フィリピン西部のパラワン島(Palawan island)プエルト・プリンセサ(Puerto Princesa)市のホンダ湾(Honda Bay)で放たれ、沖に向かって泳ぎだした。
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(c)AFP
写真はアオウミガメのいい面構え。
毎度ごひいきのカメということで、タイトル写真に選んでみた。
カメを助けたフィリピン人たち、エライ! ということで。
さて。
これまで、当ブログでも何度か小技でツッコミを入れてきたが、
「これが温暖化対策になるんだよ」という説明に対して
思考停止してしまう人が多いように感じている。
そういう人には、「ライフサイクルアセスメント(LCR)」
といった単語と、その概念を覚えて欲しいと思う。
ので、今日はその話を簡単に展開してみる。
◆ ◆ ◆
「ライフサイクルアセスメント(LCR)」とは、
主に工業製品などについて、
その原料調達から廃棄までの間にどの程度
環境に対して負荷を与えたかを評価する手法のことを言う。
この根本的な発想方法をいろいろなものにあてはめてみると、
そのものごとの環境負荷がどのくらいになるのか
(あるいはどのような質の環境負荷が派生するのか)
といったものが明確化しやすい。
その意味では、
とても使い勝手のいい思考方法ともなり得る。
たとえば、以前のエントリにもあげた紙製品を例にしてみると、
どうなるか。
原料の調達段階
(古紙なのか、木材パルプなのか。木材パルプだとしたら
その森林資源はどういった質の森林だったのか。
持続可能な森林経営をなされている森林から来たのか否か。
遠方から原料を運ぶ場合は
その輸送エネルギーはどうなっているのか、等)
↓ ↓
製造段階
(漂白などに使う化学薬品は汚染を引き起こさないか、
水を汚染していないか、
製品の包装などはどうか、
また工場そのものの環境配慮はどの程度考慮されているか、等)
↓ ↓
輸送や販売といった段階
(工場から消費者の手元に届くまで、
無駄な輸送エネルギーを消費していないか、
流通機構が無駄に複雑になっていないか、
販売店そのものの環境配慮はどうか、等)
↓ ↓
消費段階
(ものによってだが、使用段階での毒性は大丈夫か、
といったことや
無駄に買って使わないでそのまま資源を浪費していないか、
といったことなど)
↓ ↓
廃棄段階
(廃棄時に環境汚染を引き起こさないか、
無駄にごみを増やしていないか、など)
といったように、その段階ごとに、
どの程度環境への負荷を与えているのかを振り返ることが、
この作業となる。
この段階は、通常だともっと細かくなるし、
チェックする項目も、上のものよりもはるかに多くなる。
このLCRの概念が普及していなかった頃は、
ほとんどの工業製品といえば
作ったら作りっぱなし、売ったら売りっぱなし、
というようなものだった。
ごみになった時に環境にどう影響するか、
考えるヒトは少なかったし、
原料の調達についても安ければなんでもいい、
という考えにもなる。
(後者については、結構今も甘い見通しが多く見受けられる)
で、それはやっぱりあかん!
ということで、
90年代くらいからは各分野に
このLCRの考え方や手法が随分と浸透した、と思う。
この手法は、工業製品だけではなく、
いろいろなものに対して広げていくことができる。
農作物についても、
化学肥料や農薬による毒性についていえば、
食べる人や作る人への人体に対する影響といった面だけではなく
土壌や水資源への環境負荷という点からも評価ができる。
また、原子力発電を評価してみると、
遠くのウラン鉱からウランを持ってくること、
その採掘時の土壌汚染や輸送エネルギー、
発電所建設にかかるコンクリートや機械を製造するエネルギー、
放射性物質を外に出さないための多大な物質的な分配、
さらには廃棄時の環境汚染の危険性などを考えると、
とてもではないが「エコ」と呼べる代物ではない。
既に手元に貯まっている核燃料から発電を、
というのも技術的な課題があり、
発電中の事故や取り扱い中の核汚染などの危険性と
その際の環境負荷を考えると、
あまり好ましい選択肢ではない。
◆ ◆ ◆
さて。
厳密なLCRによる評価方法とまではいかなくても、
その理念となる考え方、つまり
ゆりかごから墓場まで、可能な限り環境負荷を与えない
という手法を、
山積しているあれこれの環境破壊問題にそれぞれあてはめて
行動を決めていく
ということは、相応に筋が通っているだろう。
そこで、
「これが温暖化対策になっているんだよ」
というハナシが出てきた場合、だ。
差し出された内容を検証するのに、
この考え方を当てはめてみる、というのは
かなり大きな力となる。
たとえばこのところ話題のバイオエタノールにしても、
その原料がどこから来たのか、
原料を入手する輸送エネルギーはどうか、
といったところから考えていけば、
いいバイオマスもあれば
(間伐材などの木質バイオマス、
休耕田を活用したナタネ油、農業廃棄物など)
そうとは言い切れないバイオマスもある
(トウモロコシなど、いわゆる
食べられるもんを燃やすぜ、バイオマス)
ということがとてもよく分かると思う。
このように、LCRの考え方を用いて、
あるいは少し引いて地球を俯瞰する視点で見てみるだけで、
そこで言われている「温暖化対策」や「環境配慮」が
ほんまもんか、あるいはまがいもんかどうか、
意外と簡単に分かってくる。
このブログにお立ち寄りの皆さんには、
ぜひともこの方法論を用いて
ものごとを見たり判断したりしていただければ、ということで。
ぜひ。
.
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登録日:2007年 07月 03日 16:33:20
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◆屋号の「山猫」は宮沢賢治から。大阪に長くいたので時々関西弁が混ざることあり。
◆07年3月、ブログタイトルを一部変更。今後も、カメだけでなく、ワニやラクダやトカゲからも いろいろと学べるもんだろうと思いつつ、のてのてと更新中。
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