2007年 07月 18日

食料を燃やす、ということ(写真なし)

(まだ、写真復活には至らず。原因は調査中とのこと。
あまり間を置き過ぎるのもなんなので、文章のみでアップする。
故障が回復したら、当該の写真と共に再アップ、ということで)

引用したかった写真はこちら。
「バイオ燃料による発展途上国の食糧価格上昇を懸念」FAO報告書
2007年07月05日 18:08 発信地:パリ/フランスhttp://www.afpbb.com/article/economy/2249110/1751715


◆ ◆ ◆

このハナシの元になったレポートには
既に日本語訳(仮訳)がある。

FAO(国連食糧農業機関)日本事務所
http://www.fao.or.jp/
の、こちら
→http://www.fao.or.jp/news/documents/2007.07.04.pdf
(pdfファイル、開けるとき重たいので注意)
なので、余裕のある方は元であるこちらに当たる方が懸命。

タイトルは「OECDーFAO農業アウトルック2007-2016」で、
サブタイトルとして
「バイオ燃料の需要増により、農業物価上昇の見込み」とある。

内容はだいたい報道の通りで、
バイオ燃料用に穀物が持っていかれることから
直接は穀物価格が上昇すると同時に、
間接的には家畜飼料分の価格上昇により
家畜生産品の価格上昇にもつながるというもの。


◆ ◆ ◆

また、このレポートの前段階として、
先月6月8日には
「食糧輸入総額が記録的な高騰」
というタイトルのプレスリリースがなされていた。
こちら
→http://www.fao.or.jp/Press%20Release/LOJAPR07-06-97_Food%20Outlook_.pdf
こちらは、サブタイトルに
「バイオ燃料への需要増が値段を急騰:貧しい国々がより一層の被害」
とあるように、
価格上昇による問題点を指摘したものとなっている。

その主な内容としては、
2007年には
世界的に食料総輸入額が5%を越すと見られていること、
わけてもバイオ燃料になる穀物や植物油にかかわる上昇は
前年比の13%にもなること、
途上国全体だけの数値でみれば
2007年の上昇率は9%にもなること、
さらに低所得途上国や最貧国では
その数値が10%にもなること、
等が予測されている。

前年ではなく2000年と比べてみると、
最貧国では9割増しになるのではないか、
(先進国は22%増)
という予測も述べられている。

米をはじめ、多くの穀物が生産増となっているが、
バイオ燃料の分もあわせると需要増も同じように進むことから
結果として消費量全体で見れば不足するものと見られている。
しかも米に関して言えば、
備蓄量減少の傾向にあるということも
不安材料となっている、という。


◆ ◆ ◆

これまで、どちらかというと薔薇色の夢的な報道の多かった
穀物由来のバイオ燃料だが、
かなり大きく否定論が出た格好となった。

7月4日にはロイター(yahoo! 経由)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070704-00000360-reu-int
5日には日経、
 http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070705AT2M0401X04072007.html
6日には毎日
 http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kaigai/news/20070706ddm002020034000c.html
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/europe/archive/news/2007/07/06/20070706ddm002020034000c.html
などがこの同じFAOのハナシを報道している。

時期を同じくして、
バイオに関する否定的な報道がドンと出回ったので、
それらを軽くピックアップ。

7月5日 日経(共同通信配信?)
バイオ燃料拡大で環境破壊の恐れ・欧州委員が指摘
 http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2M0500K%2005072007&g=G1&d=20070705
 つまりは、
バイオ燃料のために熱帯林消失が増えるというのであれば
意味がない、
実施の前に徹底した環境影響調査が必要、という
まあ当り前な話の提示。

その前の7月4日には、毎日で
日本ハムがハムやソーセージ等を平均10%程度値上げする
と発表していたが、
(リンクなし、すまん)
その遠因として公表されていたのが、
バイオエタノール用にトウモロコシが高騰し、
その影響で豚の価格が上昇したため、
という報道内容だった。

7月6日には読売が
はごろも食品のシーチキンの値上げを報道していたが
(リンク切れ)
これも、
シーチキン製造や輸送にかかる油の価格が
燃料用に持っていかれているため価格が上がった、
といった内容の説明がなされていた。

このほか、マヨネーズの値上げなども、
バイオ燃料がらみのハナシが原因として挙がっていたはず。

便乗、を疑ってもいいかどうか、そこまでの判断はないが、
少なくとも「口実として」堂々と言える程度には
認識が広まってきた、ということだろう。


さらに7月8日の日経では、
こうした背景を睨んだEUの動きを紹介している。
 EU、バイオ燃料の取引・生産で国際ルール作り
 http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2M0700V%2007072007&g=MH&d=20070708
 http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2M0700V%2007072007&g=G1&d=20070708


◆ ◆ ◆

この辺りの疑問は、
当ブログでも何度か取り上げてきた話題だが、
やっぱりな、ということで終わっていいものかどうか。

さらに。

もう少しよく考えなければいけないのは、
こうして「じゃあバイオはやめだ」となった場合、の話。

一体、誰がトクをするのか。

そして。

このところの急激なバイオ燃料の持ち上げ
(ブッシュだとか安倍サンだとか)によって
誰が一体トクをしたのか。

そろそろ「上げ止まりでもいいんでね? もう充分儲けたし」
みたいなさじ加減が動いていないかどうか、
どうにも心配なんだが。


◆ ◆ ◆

実際、バイオエタノール、バイオディーゼルにしても、
廃棄物由来(建築廃材、農業廃棄物、食品廃油など)
のものや、
ニホンであれば国産の木材(想定されるのは間伐材)
の活用など、
地域密着型で展開をすれば、
環境負荷・環境影響が比較的小さいままに、
化石燃料の代替品として充分行けるものはある。

たとえば、次のような感じ。

6月6日 日経
バイオディーゼル燃料をPRする路線バス導入・近江鉄道など
 http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20070605c6b0502t05.html
これは、食品廃油によるバイオディーゼル。
松下と立命館という、産学のコラボ、というのと
地域密着型というのが何気に成功しそうな予感。 


7月3日 CNN
英国のマクドナルド、調理油を燃料にリサイクル
 http://www.cnn.co.jp/science/CNN200707030017.html
タイトルのまんま。ファストフードにはいろいろと文句もあるが、
これはこれでアリか、ということで紹介。


7月8日 山形新聞
バイオマス利活用へ推進協 最上地方、7月18日に初会合
 http://yamagata-np.jp/newhp/kiji_2/200707/07/news20070707_0097.php
これは木質バイオマスを中心に、
食品廃油なども取り上げている。
地域の性格を良く見極めた展開というところ、
可能性の高さを秘めているものと予想。


7月15日 朝日新聞
「天ぷら油で走る」巡回バス 知床の玄関口で試験運行
 http://www.asahi.com/life/update/0714/TKY200707140388.html?ref=goo
これも、食品廃棄物の再活用と、
減量調達が地元、なおかつ消費も地元、
といった辺りがミソ。

このほかにもナタネ等幾つか記事もあったが、
リンク切れなので紹介は抜きにするとして。


ここで押さえておきたいのが、
原料が「生物由来(バイオマス)かどうか」
だけがポイントではなく、
原料調達から消費までの流れ・産業面での構造が
「グローバル・大規模に展開しているか」
 VS
「地域密着・こじんまりと回そうとしているか」
といったところの違いが
鍵を握るのではないのか、という点だ。
これは、大きく指摘しておきたい。

つまり、
バイオ燃料はええもんか悪もんか、といった
単純な二者択一で思考停止してしまって
ええのんかどうか? ということだ。

バイオだから、と一概に単純化してしまわないよう、
とにかく注意が必要だ、というのが今の状況とも言える。
下手するとこのまま、
やっぱバイオはダメなのね~、という一面の強調によって
流れができてしまう、とも限らない。
石油業界の巻き返しもあるだろうし。


◆ ◆ ◆

最後に。
やはり、世界的なバイオ燃料への懸念を示した、
秀逸なレポートを一つ紹介。

ル・モンド・ディプロマティーク誌
http://www.diplo.jp/index.html
の6月の記事で、
フード・ファースト/食糧・開発政策研究所(オークランド)
という組織の事務局長・
エリック・ホルト=ギメネス(Eric Holt-Gimenez)氏の
署名記事である。

「アグリ燃料にまつわる5つの幻想」
http://www.diplo.jp/articles07/0706-3.html

ここで指摘されているのは、
再生可能でクリーンな無尽蔵のエネルギー、云々といった
イメージに惑わされるな、
という非常にシンプルな、そして少し憂鬱になるものだ。

ブラジルのトウモロコシや
インドネシアやマレーシアのアブラヤシプランテーション等の
大規模な開発が進み、
投資もドカンと投下されているが、
果たして。

記事では、
>だがライフサイクル・アセスメント、つまり開墾から走行時の燃焼に至るまでの環境影響評価をしてみると、森林伐採や焼却、水はけの悪い土地からの排水措置、農作業、土壌炭素損失による温室効果ガスの排出量のほうがはるかに大きいため、わずかな削減分は増加分によって相殺されてしまうことが分かる。1トンのパーム油は、同量の石油と同等かそれ以上の排出をもたらす。熱帯雨林を開墾して育てたサトウキビから作ったエタノールは、同量のガソリンを生産・使用するより5割も多くのガスを排出する。

やっぱりな。


>燃料用作物を産業規模で生産するためには、石油から作った化学肥料の大量散布が必要になる
(中略)
近い将来にアグリ燃料の主要産地となるだろう熱帯地域での化学肥料の使用は、温帯地域に比べて10倍から100倍の温室効果を引き起こしている

石油を使わないための燃料生産のために
石油を使って肥料をまく、というのは
すっごくわかりやすく「矛盾」を文字通りで実践しているような。


>1リットルのエタノールを作る際には、3リットルから5リットルの灌漑用水が必要であり、13リットルもの廃水が放出される。

地球規模の水不足、水資源の枯渇が言われている状態で、
これはないだろ、という数字。
水を失ってもエタノールが欲しい、のか。我々は。


>世界最大のパーム油生産国である(略)マレーシアでは、熱帯林の87%がすでに失われ、現在も年間7%のペースで伐採が続いている

早い話、原生林を切り開いてアブラヤシ農場を作って、
そこでバイオ燃料の原料を生産している、というハナシ。
前にも言ったと思うが。
鬱、鬱、鬱。


このほか、種子ビジネスや遺伝子組み換え技術などに
食い物にされそうだな、というハナシが続くので、
興味のある方はこちらの本編へリンクして、
じっくりと読み込むことを
おすすめする。


※:当ブログの、関係する過去記事など
2006年8月2日 「エコ」的イメージに ご用心
 http://www.actiblog.com/yamaneko/12111
     9月25日 植物性なら問題なし?
 http://www.actiblog.com/yamaneko/16268
    11月13日 バイオ燃料だけでエコになれる、わけではない
 http://www.actiblog.com/yamaneko/20236
2007年2月13日 オランウータンが絶滅しても、わたしは二酸化炭素の排出量を減らしたいんです
 http://www.actiblog.com/yamaneko/29404
     2月25日 バイオといってもピンきりだ
 http://www.actiblog.com/yamaneko/30609
     4月28日 ビールだけで済む問題か?
 http://www.actiblog.com/yamaneko/34415


※2:上記報道のうち、必要そうなもののみピックアップして<続きを読む>に収納。

.
 ... 続きを読む

カテゴリー[ 資源・エネルギー ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2007年 07月 18日 22:47:26

カレンダー
< 2007年 07月 >
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31



プロフィール
山猫通信社 篠宮
山猫通信社
カメでも読める のてのて環境ニュースクリップ
このメモは猫のヒゲ
◆環境カウンセラー兼フリーランスのライター・編集業の「山猫通信社」については、上のHPをぽちっとどうぞ。ブログをみてのご連絡は、sorano_ki@yahoo.co.jpへ。
◆屋号の「山猫」は宮沢賢治から。大阪に長くいたので時々関西弁が混ざることあり。
◆07年3月、ブログタイトルを一部変更。今後も、カメだけでなく、ワニやラクダやトカゲからも いろいろと学べるもんだろうと思いつつ、のてのてと更新中。
◆トラックバック、どうも故障中の模様(早く直してくれAFP)。
最近のコメント
[06/30] 食うは一時の欲、食わぬは一生の快 管理人(山猫通信社)
[06/27] 食うは一時の欲、食わぬは一生の快 kkneko
[06/27] 食うは一時の欲、食わぬは一生の快 kkneko
[05/29] ホッキョクグマは野生のクマ 管理人(山猫通信社)
[05/28] ホッキョクグマは野生のクマ あるる
[04/07] オーストラリアのアジアゾウと森林 管理人(山猫通信社)
[04/05] オーストラリアのアジアゾウと森林 うえ
[02/12] これはいい記事。 管理人(山猫通信社)
[12/19] 発見、即、絶滅危惧指定、とならないように 管理人(山猫通信社)
[10/05] なんかちょっと本質からビミョ~にズレている(ような気がする) 管理人(山猫通信社)
最近のトラックバック
検索