2007年 12月 04日

既にわたしたちの手は血に染まっている

水害に見舞われたベトナム南部でワニ養殖所が全壊 数百匹のワニが逃げる

【11月13日 AFP】ベトナム南部カインホア(Khanh Hoa)省で、鉄砲水により国営ワニ養殖所の一部が損壊し、数百匹のワニが近くの川に流された。
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(c)AFP

AFPBB News


ここがワニたちにとって移入地、外来地でないんなら、
生き延びてもええんじゃね? と思いつつ。

まあ、地元にしてみたらやっぱ怖いだろうから、
自分がこんなことを言えるのも部外者ゆえのいーかげんさなんだろう。
基本的にワニ、好きだし。


この件、ロイターやCNNでも取り上げられている。
11月12日 ロイター ベトナムのワニ飼育場、洪水により数百匹が脱走
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071112-00000441-reu-ent
11月13日 CNN ベトナムのワニ飼育場、洪水により数百匹が脱走
 http://www.cnn.co.jp/science/CNN200711130017.html


同じような事例の場合、たとえばミンクなんかだと
10月28日 AFPBB ドイツ軍、脱走した1万匹のミンクの回収に奔走
 http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2303903/2288959
見た目がかわいいってだけで
えらく同情を集めているっぽい。
もちろんワニのようにニンゲンに直接害を及ぼさない、危険ではない
というのも要素としてありそうだが。
そうはいってもまあ、要は
哺乳類ってだけで。
外見がかわいいとか、そういうのんが、
何気に気持ちの上で大きく作用している、と思う。


けれども。
ミンクの場合、
たとえ直接の人的被害がなかったとしても、
実はジンルイ以外にはどんなに迷惑なことになっているかを考えると
頭が痛くなるハナシなんだがな、これ。

基本的に、当ブログでの立ち居地は、
外来種・移入種に関しては、その手の逃亡や放置は認めないし、
回収が筋だと思う。
過去記事でも取り上げたように。
 2006年10月22日 愛なんかいらない
 http://www.actiblog.com/yamaneko/18268


◆ ◆ ◆

ワニが相手となると、やっぱ怖いというのもあるんだろうが、
にしても、哺乳類や美形の生きものとの比較の上で同情が減るというのは
納得がいかない。

たとえば、ワニの記事の前日のものだが、
11月12日 AFPBB 野生のウマを射殺処分、州政府の計画に動物愛護団体らが憤慨 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2310586/2340641
この事例に関しては、
個人的に、あるいは当ブログとしては、消極的だが賛成せざるを得ない。
当該地の本来の生態系の方が優先度が高い、という意味で。

もちろん、射殺以外の手法、
たとえば全部を捕獲して別の地域で囲って飼育し続ける(不妊手術つき)
というような対処方法の方がもちろん好ましいに決まっている。
けれども、予算がないとか、人的資源が割けないというような場合は、
駆除もやむをえないと、言うしかない。

これは、自分が直接手を下す立場ではないことによる、大甘の見方であるという、
その自覚はある。

>また、英国動物虐待防止協会(RSPCA)オーストラリア支部は野生のウマの処分計画を容認しながらも、銃で撃つより雌ウマに薬物を注射して不妊にする方法が好ましいとしている

これもわからなくはないのだが、
不妊にするだけで地元の生態系の攪乱を抑えられるとは思えない。
固有種への影響や土壌や水環境の悪化、
先住民族アボリジニの文化遺産を破壊しているという点を考えると、
増えこそしないものの
何年かはずっとそこでそのまま一生を全うさせて終わらせる
という選択肢は、
詰めが緩すぎるとしか言いようがない。


んでもって思うんだが、
こうしたことが話題になるというのも、
相手が馬という、「見栄えのいい」「哺乳類だから」、なんだろうか。

そんな思いが、鬱々と。

まあ、ワニが自分にとっての贔屓動物だというのももちろんあるが、
それにしても一般的な反応の差からしてみたら、
ほんまニンゲンの見栄え重視というか
身内に近いもの(爬虫類よりは哺乳類、のような)への温度差というか、
そういうのんに ほんまにげんなりしてくる。


◆ ◆ ◆

実は同じ日に、
この馬の場合と対照的な写真記事もあった。
ことが昆虫となると、同情論は一切聞こえてこなくなる。

11月12日 AFPBB 中国とオーストラリアで外来種の病害虫が異常繁殖、交尾の習性に要因   http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2310915/2342997
もちろん、「害虫」のレッテル貼りについても、何の躊躇いも無い。
(まあ、ここんところは自分もそう判断することになると思うが)


あるいはこちらの外来蜘蛛のハナシなどは、
即座に害虫という単語は用いられていないが、扱いが実に無機的。
好悪の印象そのものが抜け落ちている感じ。
11月16日 AFPBB 欧州で外来種のクモが年々増加 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2312402/2357031

どーでもいいが、このクモの写真はかなりかわいい。


ちなみに欧米だと
どうもクモにあまり良いイメージがない視点からの話が出ることが多いが、
(その意味では、この16日の写真記事は比較的マシ)
やはり毒グモのイメージが強いからだろうか。

ニホンでも外来種である「セアカゴケグモ」がいるが、
在来の日本のクモに関して言えば毒グモは皆無。
しかもほとんどのクモは、生活の中でも農業の上でも「益虫」としての働きが高い。
家に棲む不快害虫の天敵であったり、農作物の害虫にとっての天敵であったり。
ああ、素晴らしい。
ニホンで暮らすのであれば、基本的にはクモは大事にしたほうがいい、
ということだ。
(除く外来グモ)


◆ ◆ ◆

と、ハナシがだんだんと散漫になってきたが。
要は、その土地の本来の生態系に
どのようなインパクトを与えるか、あるいは与えないのか、
で判断することの必要性だ。

そうした視点を持つことなく、
見た目やら、哺乳類かは虫類か昆虫かというその種の属しているなかまによって
ニンゲンが恣意的に判断してしまうことが、
結果として外来生物による生態系の破壊をもたらしている、という。
そういうのん、もうちょいなんとかならんのか、ということなんだが。


◆ ◆ ◆

ニホン国内でここ最近報道された移入種・外来種のニュースのうちいくつかを
以下に紹介していく。
一部は見出しのみ。一部は<続きを読む>に収納。

9月7日 沖縄タイムス シロアゴガエル石垣定着/在来種へ影響懸念
 http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071700_06.html
9月20日 紀伊民報 ジャンボタニシの卵 上富田の水路に点在(和歌山)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070920-00000005-agara-l30
9月24日 紀伊民報 カミツキガメ捕獲 どう猛で危険な外来種(和歌山)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070924-00000006-agara-l30
10月7日 中國新聞 外来植物、25年で2倍超す
 http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200710070341.html
10月8日 紀伊民報 急速に生育域拡大、外来生物ナルトサワギク(和歌山)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071008-00000001-agara-l30
10月23日 南日本新聞 アフリカマイマイ 出水で新たに89匹
 http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=7252
11月5日 富山新聞 外来魚捕獲、生態系守ろう 氷見・塩田池、ブラックバスなど駆除
 http://www.toyama.hokkoku.co.jp/_today/T20071105203.htm
11月18日 新潟日報 外来魚駆除へ地引き網、上越
 http://news.goo.ne.jp/article/niigata/nation/2-54349-niigata.html
11月27日 毎日新聞 カエルツボカビ症:感染症防ごう 世界各地で被害対策、放流禁止呼びかけ /兵庫
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071127-00000178-mailo-l28
11月27日 信濃毎日新聞 外来魚のブルーギル ナマズに食べさせる駆除を実験
 http://www.shinmai.co.jp/news/20071127/KT071126GJI090009000022.htm
11月29日 毎日新聞 <アライグマ>九州でも繁殖中?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071129-00000053-mai-soci

これは別に外来種や移入種についての全部の事例ではないが、
最近の事例を知るだけでも実にいろいろなことに気づくことができる。

外来種や移入種といっても、
植物から始まり、カエルに貝、カメに魚、アライグマ
などなど、いろいろいる。
多種にわたることはもちろん、
その移入のいきさつも、駆除の為に必要とされる手法も、実にさまざまだ。

共通する点をひとつ挙げるとすれば、
一度その地に入ってしまうと後で「やっぱいらね」と思ったとしても
なかなか駆除ができない、という点。
実際に実施するとなると、とても困難、大変だ。
予算も人手も、というような部分はもちろん、技術的にも難しい。
で、
そうこうしているうちに、その地の本来の生態系は攪乱され、
その地域に暮らしていた種のうち、いくつかは絶滅へと追いやられていく。


こうした鬱々とした状態を少しでもなくすためには、
原則的に
その地にとっての移入種・外来種を
外に放したり逃がしたりしないのはもちろん、
相手が哺乳類だろうが美形だろうが可愛かろうが
腹をくくってその土地から排除するしかない。
それに対して軸がぶれることなく取り組むしかない、
ということだ。

これはもう、考えもなく自然の下に非自然の生きものを放した側の
罪だと、はっきり自覚するしかない。

先のオーストラリアの馬の話で言えば、
まさに自分の手を血に染める覚悟が求められている。
それを拒否している間に
他の生物の血が流され、
種によっては絶滅の憂き目に遭い
この地球からその存在が永遠に失われていく。

その地に移入種・外来種を放った瞬間から、
既にわたしたちの手は血で染まっている。

ただ単に、気がついていないだけのことで。

.
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登録日:2007年 12月 04日 23:07:52

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◆環境カウンセラー兼フリーランスのライター・編集業の「山猫通信社」については、上のHPをぽちっとどうぞ。ブログをみてのご連絡は、sorano_ki@yahoo.co.jpへ。
◆屋号の「山猫」は宮沢賢治から。大阪に長くいたので時々関西弁が混ざることあり。
◆07年3月、ブログタイトルを一部変更。今後も、カメだけでなく、ワニやラクダやトカゲからも いろいろと学べるもんだろうと思いつつ、のてのてと更新中。
◆トラックバック、どうも故障中の模様(早く直してくれAFP)。
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