2008年 04月 20日
問題は、「バイオ」よりも「グローバリズム」、つづき
バイオ燃料の排斥こそ「人道に対する罪」、ブラジル大統領が反論
【4月17日 AFP】国連(UN)の特別報告官がバイオ燃料の大量生産は「人道に対する罪」だと発言した問題で、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領は16日、開発を促進する原動力と成り得るバイオ燃料を「排斥することこそが本当の意味での人道に対する罪」だと反論した。
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(c)AFP
ここで言う人道とは、たぶん自国の大規模農家たちのことを指しているのだと思う。
それはさておき。
先日拾ったロイターの記事(原文:Terry Wade)に、
ちょっと面白い指摘があったので、
その一部を引用・紹介する。
記事そのものに全部賛同、というわけではないし、また
記事はバイオ燃料について取り上げているものでもない。 ※
けれども、これはバイオ燃料(エタノール)を考える際の、ヒントのひとつになる
と思う。
◆ ◆ ◆
04月18日 ロイター
世界各地で食糧価格が高騰、見直される「ジャガイモ」の魅力
http://news.goo.ne.jp/article/reuters/world/JAPAN-313843.html
このロイターの記事では、ジャガイモの利点がいくつもあげられている。
たとえば、安価で栽培できること、
栄養価が高いこと、
水分をあまり必要としないこと(水資源確保の心配が減ること)、
最短で50日と短い時間で生長すること、
収量が大きいこと(記事では麦や米の2-4倍としている)、などなど。
そうして、食糧不足問題に対する解決策のひとつとして、
ジャガイモの見直しをすすめてる。
また、バイオエタノールの原料としての可能性も含めて語られている。
◆ ◆ ◆
少し話がずれるが、
ニホンでも、米によるバイオエタノールの研究は開始されている。
実際、ニホンには休耕田がいっぱいあり、
また減反による農業者のモチベーションの低下など、
農業は大きな問題をいくつも抱えている。
米によるバイオ、というとまた
「食べものを燃やして……」という抵抗感を持つ向きもあるだろうが、
少なくとも荒れるに任せた休耕田の有効利用や
農業者の事業性という観点も含めて見た場合、
感覚的な理由で頭ごなしに全否定するのは時期尚早だと思う。
さらに、休耕田を利用した他の作物、菜種によるバイオディーゼルならば、
既に実用には何ら問題がないところにまできている。
と、まあ、バイオ燃料の原料生産については、
その地その地に合わせたそれ相応のやり方がある、ということを
もう少し見て、ということなのだが。
◆ ◆ ◆
話を元に戻して、ジャガイモの記事から。
>ジャガイモ消費量が拡大すれば、その多くを栽培する発展途上国の農家の収入増加にもつながる。前述のアンダーソン氏は「(発展途上国は)ジャガイモを食糧安全保障と収入創出の両面で選択肢の1つと見ている」と語った。
アンダーソン氏とは、ペルーのリマにある
「国際ジャガイモセンター(CIP)」の所長さんである。
そのアンダーソン氏が、ジャガイモを単なる農作物としてだけではなく、
地域の経済発展や、さらには国家の安全保障という観点から提示しているのは
とても興味深い。
さらに個人的に興味深かったのが、記者自身の記述部分となる以下の点。
> <投機マネーに縁薄いジャガイモ>(←記事の小見出し;引用者注)
ジャガイモの価格が高騰していない理由の1つに、小麦などと違って国際的に取引されてないため、投機マネーを引き付けていない点が挙げられる。
(中略)
>これにはマイナス面もある。一部の国では、ジャガイモの価格が農家にとって魅力的ではなく、作付けの動機になりにくいことがある。
この記者個人の意見、あるいはロイターの記事のトーンとして打ち出しているのは、
だから科学の進歩で長期の流通に耐えうるジャガイモの開発が待たれる、
ジャガイモも国際市場に、
という流れで、実際の記事はそうした視点で締めくくられる。
だが、この欠点と思われている部分は、逆に利点に取れなくもない。
それは、グローバリズムへのアンチテーゼともなり得る。
もちろん、投機に縁の薄い作物だからこその問題点もあることは理解している。
儲けが薄い、作付けの動機付けがなされにくい、という指摘は、
販売だけを考えれば確かに強いマイナス要因でもある。
けれども、半ば自給、そして地域の食糧として、
さらには国家(あるいはより小さく地域だけでもいい)の安全保障として
位置づけた場合、
必要最低限の収穫さえ維持できれば、いわゆる「食糧問題」に対して
これはとても大きな力を持つものになり得る。
逆に、投機に煽られるような作物というのものは、
経済的価値だけに重きが置かれる分、
暴落による経済危機などの危険性にもさらされる。
リターンも大きいが、より大きなリスクもつきまとう。
地域で、投機筋から縁遠い作物としてあるだけならば、
こうした大きなリスクからもまた逃れられる。
まさに、安全保障、だろう。
トウモロコシやサトウキビといったグローバリズムに則った農作物は、
思いっきり投機に左右され、それゆえに暴落などの不安にもさらされている。
そして今、その投機行動を動機付ける要因のひとつとして、
バイオエタノールが相応の位置づけにある。
温暖化が語られ、さらにはその被害が大きく言われることで、
または新たなエネルギー源としての期待が囁かれることで、
そうした投機はまたさらにどんどんと大きく動く。
そりゃ、大統領も必死になるでしょう、といったように。
ジャガイモの例に限らず、
ニホンでも米や菜種、さらに木質バイオマスといったように、
投機からは縁遠いけれども
その分政府のフォローなりコントロールがあること、
そしてそれがきちんと立ちゆくものであれば、
食糧との競合を避けられるバイオ燃料の原料は
いくつもある。
バイオ燃料問題と食糧問題を単純に結びつけて
コインの裏表として捉えるだけでは、その全体像が見えてこない。
そうではなく、世界経済と社会構造の流れも丁寧に見ていくことで、
道はきっと拓ける。
だいたい、温暖化対策、そして石油等地下資源の枯渇ということで言えば、
省エネやエネルギー効率の向上といったすぐにできるようなことこそ、
まず先に考えなければいけないことのはずだし。
※:特に、記事の結論で、ジャガイモの病気の防止策として遺伝子組み換えを例に出すのは、単なる信仰としての科学を妄信しているだけだと思う。
.
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登録日:2008年 04月 20日 23:55:42
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